第18話 パンドラ
――――翌朝。
アルは窓から差し込む光で目を覚ますと、隣で裸のクリスが寝息を立てていた。
クリスの顔が目の前にあり、思わず心臓の鼓動が跳ね上がる。
(びっ!?……くりしたぁ…。)
アルは、バクバクと高鳴る心臓を落ち着ける様に、
深呼吸をしていると、クリスが目を覚ます。
「ん…、おはよう…、アル…。」
「あぁ…、おはよう…クリス…。」
そんな挨拶を交わした後、昨日の事を思い出し、
お互い嬉しくも恥ずかしく余所余所しい時間が流れる。
「………、き…着替えようか…。」
「………、ぁ…、うん…、手伝うわよ。」
そう言って立ち上がるアルを追いかける様に、
クリスもベッドを下りてアルの着替えを手伝うがズボンを脱がせた所で、
アルのが勃起してる事に気付くとそっと手を添える。
「ク、クリス……。」
「アル……、昨日あんなにしたのに…、起つ様になったらもうこれなの?
朝からこんなに元気になって……。」
クリスは呆れた様にそう言いながらも、嬉しそうに微笑むと優しく握る。
何時もより時間の掛かった着替えになり、少し遅れて食堂に向かうのだった。
(はぁ…、毎回こうならない様に気を付けないとな…。
クリスは受け入れてくれるかもしれないが、このままじゃダメになりそうだ。)
自分の想いをぶちまけた事、泣いた事、クリスの前世の事、
昨日や今朝のの情事、色んな事を考えながら食堂に入ると、
エレナ母さんとマリーさんに挨拶をされる。
「おはようアル、クリス。
今日は少し遅かったわね…、昨日の冒険で疲れてたのかしら?」
「エレナ様、おはようございます。
申し訳ありません、直ぐに支度を手伝います。」
「母様、マリーさん、おはようございます。
大丈夫ですよ、少し遅くまで夜更かしをしてしまいました。」
クリスは挨拶をした後、直ぐに朝の支度を手伝いに部屋を出ていき、
アルは笑顔を見せてそう挨拶を返し、席に着こうとすると、
マリーさんが眼だけで笑いながら、ススっと音を立てずに近寄って来た。
「ウフフ、おはようございます、……昨夜はお楽しみ…でしたね?」
「ぐ…っ!?」
(ちょっ!? 何でもう知ってるのよっ!?)
ウフフと笑いながら挨拶して来る、最後に耳元でコソッと余計な一言を添えて。
そんなアルの動揺を他所に、
マリーさんは機嫌良さそうにクスクスと笑いながら朝食の準備で退室して行った。
(はぁ…、まぁ毎日一緒に寝てる娘が戻ってこなかったらそう勘ぐるか…。)
内心でげんなりしながら席に着くと、
朝食の配膳を持ってきたクリスが近寄ってきて、心配そうな顔で聞いてくる。
「アル…、どうしたの…?大丈夫…? おっぱい揉む?」
(マリーさんの弄りとこのセクハラは今日も通常稼働だな…。)
そんな考えが頭を過ったが、なんとか堪えて微笑み答える。
「あぁ…、大丈夫だよ。」
「そう、良かったわ。」
そう返してくれたクリスの微笑みで簡単に癒されるのであった。
(俺ってチョロい男だな…。)
――――
朝食を食べ終え、クリスと自室に戻ると、
昨日の宿題のパーティー名について相談する。
部屋にある、テーブルを挟んで椅子に座る。
「さて…、保留にしてたパーティー名だけど…、どうしようかな。」
「んー…、そうねぇ…。」
クリスは、持ってきたティーセットで、紅茶を淹れながら返事をする。
「お互いに…、転生者だって事が判った訳だが…。」
「えぇ…、そうね…。」
アルの前に淹れた紅茶を置くと、自分の分も淹れて、アルの前に座る。
クリスの淹れた紅茶を一口飲み、アルは話を続ける。
「でさ…、俺はこの世界に来るときに…、自称、創造神の神様に会ったんだ。」
「創造神…、その神様って…何て言う御名前なのかしら?」
そう問い掛けたクリスも、自分の紅茶を一口飲もうと口を付ける。
「……創造神の名前は、”パン・ドゥーラ”って名乗ってたんだ、
俺は『おっさん』って呼んでたけど。」
「ぶふっ!」
創造神(仮)をおっさん呼ばわりする言葉に、
思わず紅茶を噴き出してしまったクリスが、ゲホゲホとむせている。
「だ…大丈夫か……?」
心配するアルがハンカチを渡し、
それを受け取ったクリスが、涙を滲ませたジト目で返事をする。
「ご…ごめんなさい…。
創造神様を…、そんな風に呼んで大丈夫なの…?」
「あ…あぁ…。 ………、仕方ないだろう…、
最後の最後まで名前を聞いてなかったし…。」
クリスはハンカチで口周りを拭き、テーブルも拭きながら言う。
「一応この世界で…、教会で教えられてる神様は、三神が居て、
光の神『ユピテル』 闇の神『プルトン』 地の神『セレス』の三神で、
その三神がこの世界を造ったとされてるわ。」
「あぁ…、教会が広めている話では、そう言う話になってたな。
でも…、創造神のおっさんが言うには、
創造神パン・ドゥーラの下に着く神が居ると言ってたんだ。
何人いるか迄は聞いてなかったけどな。」
そう言って、アルはステータス画面を呼び出すと、クリスに見えるように表示する。
―――
名前:アルヴィス・アイゼンブルグ(10歳)
種族:人族 (男)
★スキル
技能スキル
剣術Lv2 棒術Lv3 体術Lv2 操糸術Lv2
魔法スキル
水魔法Lv8 土魔法Lv6 風魔法Lv7 光魔法Lv4 身体強化Lv3
特殊スキル
魔力視Lv1 魔力察知Lv2 魔力注入Lv1
(Lock)
アイテムストレージ 鑑定
補助スキル
器用さUP 体力UP 魔力UP(大) 精力UP(大) 魔力操作 魔力回復向上
打撃耐性(弱)
ステータス隠蔽
異世界言語理解
固有スキル
(Lock)
??召喚
★称号
創造神パン・ドゥーラの加護 ??神の加護
―――
「これは何度か紙に書いて、
クリスにも見せたことがあるステータスなんだけど。
このステータス画面の下の方に書いてあるの見えるか?
一応全部見れるようにしてるつもりだけど…。」
クリスはアルのステータスを見て、Lockされた??召喚も気になりつつ、
最後の称号で目が止まる。
「………、創造神パン・ドゥーラの加護…。あと…、??神の加護…。」
「そう…。
一応、これで創造神パン・ドゥーラの存在は証明になるか判らないけど…、
まぁ居るんだ…。
??神の加護については、
会った事も無いから、誰なのかさっぱりわからないけど……、
加護はくれてるみたいなんだよな…。」
そう言って、ステータス画面を閉じて、紅茶を口に含む。
「ちなみに…、どちらの加護もどんな効果があるのかは、さっぱり分かってない。
もしかしたら…、能力が向上されてるのかもしれないけど…、
産まれたときから加護があるっぽくて、
比較できないから、認識できないんだよな…。」
「なるほど…。
じゃあ次は、私のも見て欲しいの…。」
そう言ってクリスもステータスウィンドウを開くとアルに見える様にする。
――――――
名前:クリスティア(13歳)
種族:人族 (女)
★スキル
技能スキル
剣術Lv6 体術Lv4 料理Lv5
魔法スキル
火魔法Lv2 風魔法Lv1 闇魔法Lv4 身体強化魔法Lv5
特殊スキル
鑑定Lv2 魔力察知Lv1 気配察知Lv3
特殊補助スキル
器用さUP 体力UP 筋力UP 魔力操作 直感
ステータス隠蔽
異世界言語理解
固有スキル
闇神の祝福
★称号
星神の加護 闇神の加護
―――――
「相変わらず…クリスのスキルは凄いな…、
………、闇神の祝福…、闇神の加護…、星神の加護…。」
「そう…、昨日にも少し話したと思うけど、
私は、転生する時に、星神様と、闇神様と会ったの。」
そう言ってクリスは、闇神と星神との関わりの事を話していく。
この世界で知られている、地の神セレスは、実は星神セレスな事。
3神同位ではなく、星神の下に光神と闇神が居る事。
更に、星神の上に上位存在が居る事を仄めかしていた事も話す。
クリスの話を聞いたアルは、自分の話と照らし合わせていく。
「その星神や闇神の言う御方?は、恐らく創造神で間違いなさそうだな。
しかし、闇神……、碌なことしねぇなぁ…。
………、いや…、でも…闇神が干渉しなければ、星神に呼ばれる事も無く、
転生も無かった可能性も…、いや…闇神が転生してくれてるのか…?」
「正直…、測り知れないけれど、
闇神様が単独でも、人間を転生させることは問題ないとは思う。
でも、これを見て欲しいの。」
そう言って、闇神の加護と闇神の祝福の鑑定結果のメモを見せる。
――――
【闇神の加護】:闇神が見守る。
『加護を受けた者の、空の見えない場所での能力が僅かに向上する。』
『加護を受けた者の、空の見えない場所での心の枷が外れやすくなる。』
――――
【闇神の祝福】:闇神の祝福を得る。
『想い人の近くに居ると能力が僅かに向上する。』
『想い人を直感で解り、近くに居ると心の枷が外れやすくなる。』
『想い人と繋がると効果が変わる。』
『想い人以外と繋がると祝福が呪いに変わる。』
『15歳までに想い人と繋がらないと、祝福は呪いに変わる。』
――――
鑑定結果メモを見せて貰ったアルは、無言のまま考える。
「………、これは…、なるほど…、能力向上は良いな…。
だけど…、心の枷が外れる…か…、良い事に働くこともあるだろうけど…、
多くの場合はマイナス方面にイメージしてしまうな。」
「えぇ…、欲しいと思った物を奪ってでも欲しくなる…、
嫌いと思った人を殺したくなる…。
そう言った普通はそう思ってもやらない様な事を、気付かずにやってしまう…、
そして…、それをなかなか不思議に思わない…。」
アルの考察を拾い、クリスが例えを口に出していく。
そんなクリスを見つめアルは躊躇いつつも口を開く。
「クリス…、お前のセクハラ過多もこれが原因…なんだな…?」
「お願いだから……、察しないで……。
でも…、たぶん…、まぁ…、そう言う事よ…。」
「よくもまぁ…、神の加護、祝福で重ね掛け状態になって居て、
セクハラ程度に自制出来たもんだ…。」
顔を赤らめたクリスの肯定に、アルは感嘆の言葉を漏らす。
「それはたぶん…、これが理由だと思うわ…、こっちを見て。」
そう言って星神の加護の鑑定結果を見せる。
――――
【星神の加護】:星神が見守る。
『加護を受けた者の、空の下での能力が僅かに向上する。』
『加護を受けた者の、状態異常効果を軽減する。』
――――
「はぁ…、なるほどなぁ…、闇神の効果も星神の加護で軽減されてるのか…、
これは星神セレスに感謝しかないな…。」
「闇神プルトン様も、私の願いを聞いて下さっただけで、
悪意は……たぶん…ない…と思う…。」
クリスは自分の言葉に確証が持てなくなり、声が尻すぼみになっていく。
「まぁ……、そうだな……。
そもそも相手は神様だ、悪意を持つというより気紛れに近いのかもしれないな。」
「そう……、ね……。
それで昨日アルとしてから祝福に変化があったのよ…、これを見て。」
そう言ってクリスは今の鑑定結果を開示する。
――――
【闇神の祝福】:闇神の祝福を得る。
『想い人の近くに居ると能力が向上する。』
『想い人を直感で解り、近くに居ると心の枷が外れやすくなる。』
『想い人を裏切ると祝福は呪いになる。』
――――
「………、能力向上に“僅かに”ってのが無くなったって事は、上昇値が増えたって事かな…。」
「多分その解釈でいいと思うわ。
ただ枷が外れ易いのは変わらないみたいね…。」
「だな…そこは2人で一緒に気を付けよう。
それで…、最後の“裏切ると呪いになる”ってのが、
何をもって裏切りの判定になるのかが判らないな。」
「それは私もハッキリと判らないけれど…、別に良いわ。」
「……、良いのか…?」
割とアッサリと受け入れた様に思えるクリスの態度に、疑問の声を上げる。
「えぇ、私の予想ではあるけれど、この“裏切り”には、結果は関係ないのだと思うわ。
私がアルを裏切ったと思った時点で呪いになる。」
「い、いやそれって…、かなり厳しいと思えるんだが…。」
バレて無い、迷惑を掛けてない、結果的に裏切ってない事になるとか、
そんな事は判定に関係無いという事になる。
「だから別に良いのよ。
私がアルを裏切るのはあり得ない…それに…、
アルを裏切る様な私なんて死ねば良いのよ。」
「お…おぃ…、心の枷が外れてないか…?」
真顔でアッサリと言って退けるクリスを見て心配していると眼を合わせて妖しく笑う。
「さぁ…、どうかしら?」
(あぁ…そうか…心の枷が外れるって事は、
そう言う思いを…、その枷を元々持ってるって事か…。)
クリス様子にそう納得して頷くと、
アルは話を切り替える様に少し声を大きく言う。
「そうだ、クリス、俺の創造神の加護と??の加護を鑑定して見てくれないか?」
「……ぇ? えぇ…そうね、創造神の加護からやってみるわね。」
唐突に話を振られたクリスは驚きながらも笑みを浮かべ快諾すると、
鑑定結果を見せる。
――――
【創造神の加護】:創造神が見守る。
『加護を受けた者の、能力が僅かに向上する。』
初回限定『加護を受けた者が、創造神の加護を初鑑定時に創造神がサイコロを振り、
出た目のスキルを獲得する。』
――――
「能力向上は順当で良いとして…、
何だこれ…サイコロ…?獲得…?まさか…。」
ここまで項目を見た直後、ステータスのような画面が、
ポップアップの様に浮かび上がり文字が表示される。
――――
[サイコロの出目により、スキル『神の指先』獲得しました。]
――――
表示されて10秒ほど経つと、メッセージウィンドウは勝手に霧散してしまった。
「………、なんか…スキルが増えた…、嫌な予感しかしないんだけど…。」
(おっさん神がサイコロを振ったとしても、
振られたサイコロも見れてないし、景品一覧表も無いし、コレだとただスキルを押し付けられただけじゃねぇかっ!)
創造神(笑)の独創的なイベントに内心でダメ出しをする。
「すまん、クリス…、この神の指先ってスキルを鑑定してくれないか?」
「え…?、そんなスキル在ったかし…ら…、増えてるわね…、判ったわ。」
――――
【神の指先】:その神の如き指使いに、抗える者は皆無だろう。
器用さに補正。習熟度に補正、異性に追加補正。
――――
「………、何だこの説明文は…。」
(器用さと習熟度に補正が付くのは凄く有難いが、
絶対コレ…、エロいやつだ…、なんだよ異性に追加補正って…。)
「神の如き指使い…やらしい響きね…。
威勢に追加補正…、どうするの? ……試して…みるの?」
白目を剥いたアルが呆然と呟く一方で、
その字面に期待と興奮を募らせ両手を合わせて太股で挟んでモジモジするクリスがチラチラと視線を送る。
「そんな期待した目でチラチラ見るんじゃないよっ!あとモジモジしないっ!」
「えー、効果を確かめる検証作業は、必要だと思うのだけれど…。」
「その考えには同意するが…、
これの検証を今やるのはダメだと、俺の直感が言って居る。」
「アルに直感のスキルは無いじゃないっ!」
「まぁそうなんだけどっ! でも、今はダメ! また今度な!」
「えー、仕方ないわね……、それじゃまた今度、試しましょう。
それと…、??の加護に付いては、やっぱり何もわからないわね…。
文脈は他のと似た感じだけど、殆どが??になって居るわ。」
そう言って、鑑定結果をアルに見せた後、さっと消してしまう。
「そうか……、判った。ありがとクリス。」
そう言ってアルは一息吐き、紅茶を一口飲む。
「でも…、Lockされてるとは言え…、
スキルとかも一杯あるのは…、加護のお陰…なのかしら?」
クリスは、自分の気持ちを落ち着け様と、震える手で紅茶を一口、口に含む。
「いや…、スキルについては…、パン・ドゥーラのおっさんが、
サイコロ振って決めるって言ってたから、加護とはあんまり関係ないと思う…。」
「ぶふっ!」
クリスはアルの言葉に、咽て紅茶を吹き出し掛けるが、
今度はテーブルまで飛ばさずに、咄嗟に手で押さえたようだ。
アルは、ハンカチを取り出して、クリスに手渡しつつ、落ち着くのを待つ。
「げほっ!げほっ…。 ご…ごめんなさい…。」
「あぁ、気にしないでくれ…。………ちょっと間が悪かったな。」
少しして落ち着いたクリスは、気を取り直す様にアルのスキル群を見て考える。
「そ…それで…、アルのスキルは…、変わったスキルが多いのね…、
操糸術とか、魔力注入、精力UP、打撃耐性とか…。
私の方も、星神様がササっとスキルを決めて与えてくれたみたいで、
選択肢も拒否権もなかったけれど。」
「いや…、打撃耐性は……、その…クリスとの模擬戦で…、生えた……。」
「…………。」
言葉の意味を理解したクリスがジト目でアルを見る。
「ちょ…ちょっとまてっ!? そんな目で俺を見るなっ!
俺だって望んで得たスキルじゃないぞっ!」
慌てて弁解するアルの姿を見て、クスクスと笑いながらクリスが言う。
「フフ…、冗談よ…。
精力UPして糸で縛られて打撃耐性で魔力注入…なんて…、
まーったく想像なんてしてないわ。」
「それ…、絶対想像してるやつやん…。」
「でも…凄いわね…。
糸で縛られて神の指先で弄られて精力アップしたアルの棒術で魔力注入される…考えただけで…。」
「だからやめなさいって…、顔が残念な事になってるぞ…。
あと棒術の棒はそっちじゃ無い。」
妄想で興奮してるクリスをジト目で見返し、少し見つめ合うと2人で笑い出す。
そんな和やかな雰囲気の中、アルはふと話が脱線していた事を思い出す。
「あぁ…、そうだ…話が脱線してたな…。
さて…、話を戻して、パーティー名なんだけど、
教会で、パン・ドゥーラの事は伝わってないのはクリスも知ってる通りだが…。」
「えぇ…、創造神って神様の存在を…、そもそも知らないのだと思うわ。」
「うん、だからって教会を否定するつもりは、全くないんだが…。」
「えぇ…、教会が間違っていると言った所で、
教会に睨まれたり…、………、混乱を招くだけね…。
下手をしたら邪教徒認定されて、討伐対象にされてしまうわね。」
アルは頷き、続きを話す。
「前世で、パンドラの箱の神話って聞いた覚えが無いか?」
「パンドラ? あの…、全ての厄災と希望が詰まってる箱…だったかしら?
それを、パーティー名に付けるって事なの?」
「うん、そのパンドラとパンドゥーラが似てるって思ってたのと、
クリスの夢の話を聞いて、思い至った。
『厄災や絶望が世界に溢れても、パンドラの箱にはまだ希望が残っている。』
ってな…、………、ちょっと臭いかな…。」
勢いで語った羞恥心をごまかす様に言うアルを見て、
微笑みながらクリスは言う。
「ふふ…、素敵な考えだと思うわ…。アルって、ロマンチストだったのね?
それとも英雄願望かしら? 俺が最後の希望だっ!…みたいな?」
「う…うるさいな! クリスとの未来に…ロマンを見たって良いだろ?
因みに英雄症候群みたいな気は全くないぞ…多分。」
(私にとっての、最後に残った希望は貴方よ…、アル。)
クリスの揶揄いに、恥ずかしそうにしつつ開き直るアルを見て、
クリスは、口には出さない代わりに微笑む。
「フフ…、そうね…、じゃあ…私達のパーティー名は…。」
2人の視線が交差して、声が重なる。
「パンドラだ(ね)。」
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