第9話 Un Lock


アルは10歳になり、クリスは13歳になった。


アルとクリスが部屋で一緒に、魔法書を読んでいた時、母のエレナが入ってきた。


「少し良いかしら?

まだ先の話ではあるけれど…、……アルは12歳になったら、

王都にある学園に通って貰う事になるわ。


貴族の子は全員、平民の子は、希望者のみになるけれど、

この国では学園に通う義務があるのよ…。

ここから通うのは不可能だから…、宿舎生活になるわね。」


エレナは不安気にしてるクリスを見ると、安心させる様に笑い掛ける。


「クリスは安心しなさい。…付き人は1名のみ同行出来るわ。」


その言葉にクリスは見てわかる程に安堵する。


「…それで学園に通う迄の、約2年間…、……好きにして良いわよ。


……冒険者をするのも良いし…、

ジョシュアに頼めば、領地運営の仕事の手伝いも、させて貰えると思うわよ。」


その言葉に、アルは素直に驚いて問い返す。


「え? ……冒険者になって良いんですか?」


「えぇ、……ジョシュアも私も、まだ暫くは引退は考えてないしね。

学園に3年は通って貰うけど、……余程の問題が起きない限りは、

卒業後も暫くは、貴方のやりたい様にして良いわ。

これは、ジョシュアも賛成してくれているわよ。」


既に話は通してあるのだと、エレナは言うと話を続ける。


「この領地にも冒険者ギルドがあってね。

冒険者登録自体は、何歳からでも出来るのだけれど…、

……大体は10歳前後が多いのかしら…。


私が登録したのも、10歳だったわ。」


エレナのその話を聞いて、冒険者の生活を想像して想いを馳せる。


「良いな…、……冒険者…。」


独り言のように呟いたアルに、エレナは微笑みながら続ける。


「まぁ、まだ時間はあるし、急がなくていいから、ゆっくり考えてみなさい。」


そう言い、頷くアルを見て、微笑みながら部屋を出て行った。

エレナが出て行った後、すぐ近くに控えていたクリスに宣言する。


「クリス、俺は…、 ……冒険者になりたい。」


クリスは、数年前に突然、伸ばしていた黒髪を切り、

ボブカットにするようになった。


理由を訊いても教えてくれないが、その辺りから、

アルに対して、遠慮をしなくなったようで、自分の意見を述べるようになった。


その甲斐もあってか、お互いの距離も縮まった様に思う。

 うん…、……勘違いじゃ無い…、……はず…。


(ある日突然、ボブカットにしていたから、あれは驚いたな…。

似合ってるから良いけど。)


口調もきっちりした、前世で言う優等生タイプ?のような、

ハキハキとした喋り方になっている気がする。 


(そう言えば、いつの間にか、俺の呼び方も呼び捨てになってるな…。)


「……? アルが冒険者になるなら、私も冒険者になるわよ?」


当然の事の様な態度に、ちょっとビックリしつつも、

嬉しさをごまかしつつ返事をする。


「お、……おぉ、……そうか。

じゃあ明日…、……母様に言って冒険者に登録しに行こうか」


(正直、クリスが一緒に来てくれるなら、心強いな。)


そう考えながら、冒険者について想いを馳せていた。



アルはステータスを見ようと心の中で呟く。


(ステータスオープン)


―――――――

名前:アルヴィス・アイゼンブルグ (10歳)

種族:人族 (男)

職業:なし

HP:174/174

MP:1182/1182


★スキル


技能スキル

剣術Lv2 棒術Lv3 体術Lv2 操糸術Lv2


魔法スキル

水魔法Lv8 土魔法Lv6 風魔法Lv7 光魔法Lv4 身体強化Lv3


特殊スキル

魔力視Lv1 魔力察知Lv2 魔力注入Lv1


(Lock)

アイテムストレージ 鑑定 


補助スキル

器用さUP 体力UP 魔力UP(大) 精力UP(大) 魔力操作 魔力回復向上


打撃耐性(弱)


ステータス隠蔽 異世界言語理解


固有スキル


(Lock)

??召喚


★称号

創造神パン・ドゥーラの加護(隠蔽済み) ??神の加護(隠蔽済み)


アルは自分のステータスを見て、溜息を吐く。


(はぁ…、……やっぱ戦闘技能が壊滅的だなぁ…。

……魔法技能は順調に育っていってる気がする…。

クリスにボコボコにされ過ぎたせいか、

打撃耐性(弱)なんて物も生えて来てるし…。)


アルの視線が下に降りていく。


(ついこの前、……精力UPと魔力注入がとうとう解禁されていた。

解禁されて気付いたが、精力UPだけ、最初から(大)となって居る…。

魔力UPは(大)が付くの時間かかったのに…。)


俺はドMじゃないと、自分に言い聞かせつつ、頭をポリポリと掻く。


「クリス、…ちょっとクリスのステータス見せて貰って良い?」


そう、最近気づいたのだが、本人の許可があれば、

他人のステータスを見れるようになったのだ。


「……アルになら、いつなにを見られても良いわよ。」


(この、……誤解を招きそうな言い回しも、最近増えてきたな…。)

「うん、ありがとー」


そう言って、クリスのステータスを開き、紙に書き写していく。


――――――

名前:クリスティア (13歳)

種族:人族 (女)

職業:アルヴィスの専属メイド


HP:188/188

MP:164/164



★スキル


技能スキル

剣術Lv6 体術Lv4 料理Lv5 


魔法スキル

火魔法Lv2 風魔法Lv1 闇魔法Lv3 身体強化魔法Lv5


特殊スキル

鑑定Lv2 魔力察知Lv1 気配察知Lv3


特殊補助スキル

器用さUP 体力UP 筋力UP 魔力操作


「おっけー、写し終わったよ。」


そう言って、ステータスを写した紙をクリスと一緒に見ていく。


「クリスは相変わらず…、……優秀だよなぁ…。」


「アルも、魔法系のスキルの、数とレベルが凄いわ。」


「まぁ、……2人で前衛と後衛でバランスは良いのかな…?」


そんな会話をしていたら、クリスの視線が一点を見つめて固まった。


「アル…、 ……精力UP、……魔力注入…?」


「え?」


クリスが呆然とした顔で、何か呟いたと思うと、俺の方に向き直り、眼のハイライトが消えた表情で言う。


「アル…、……大丈夫?溜まってない? 精力UPしてるなら、苦しいでしょ!?

出した方が良いわよね? ぜぇったい出した方が良いわよっ!!

私が手伝うわ。 いいえ手伝わせてっ! 一緒に乗り越えましょう!」


「…え?、ちょっ!?、クリスっ!?」


そう言って、俺の手を掴み、押し倒してくる。


「ちょ、ちょーっと、待ってっ!!、俺まだっ! まだ精通してないっ!

確かに精力UPは解放されたけどまだだからっ!」


押し倒してきたクリスを、何とか手で制止しながら叫んだその言葉に、

クリスは一瞬で目に光が戻り、呆然として呟く。


「…そう…、……だったの。……ごめんなさい、私……てっきり…。」


なんとも言えない、気不味い雰囲気が漂う。


「…その、 …あれだ、……もうすぐだと思うから、…もう少し…待ってね…?」


クリスの顔色を窺いつつ言う、アルのフォローにもなってない言葉。

聞いたクリスは効果抜群だったようで、花が咲くかのような笑顔になる。


「うふふ、大丈夫。……アルの事をいつまでも、待っているからね。」


(クリスが怖い…!)


「そうだっ! クリス。 鑑定で、俺のスキルを、鑑定して見てくれないか?」


「良いわよ、見て欲しい事は、精力UPと魔力注入ね?」


「あ…、はい、……オネガイシマス。」


精力UP(大):性行為時に精力を大きく増やす。持久力、連戦回数大幅にUP。

定期的に発散しないと暴発する。


「……えー…。」

「アル…、定期的に発散しないと…、……暴発するみたいよ?」


魔力注入:任意で発動可能。

性行為時に精液を魔力に変換して、対象の魔力を限界を超えて、増大させる。

精液を魔力に変換させるため、発動時に妊娠は不可能。

付与された魔力は時間経過とともに減少するが、僅かな量は対象に定着する。

また、注入時には催淫効果が僅かにあり、注入者の精力が強いほど、

注入量やその効果も増える。Lvが上がると変換効率、魔力の定着効率UP。


鑑定結果を見たアルは膝から崩れ落ちた。


「そのまんまやんけ…、……なんなの、この凶悪コンボ…。」


(つまり、確実な避妊で、気持ちいい、精力増大でその効果を補強と…。

…更に、注入された側は、保有魔力を増強出来ると…。 …どこのエロゲ主人公。)


鑑定を見て、妙に機嫌が良くなったクリスは、崩れ落ちたアルに言う。


「頑張って、私に注入してね?」


「…………。」


機嫌のいいクリスと、白目を剥いたアルは、微妙な空気のまま勉強を再開した。


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