第3話 よくあるトラブル3:モラハラ:できない、わからないのが当たり前?

よくあるトラブル第3位は、利用者さんを半人前の人間として扱うことだ。


できないのが当たり前。

わからないのが当たり前。

なぜなら、障害があるから、病気だから。


そういう態度は、モラハラだ。


例えば、運転や料理。

女性だから、男性だから、若者だから、高齢者だから。

どうせできないだろう。どうせわからないだろう。


そういう態度で接するのは、相手を馬鹿にしている。

モラハラだ。


簡単なことなのに、それが、障害者だから、病気だからになると、簡単に崩れてしまう。


僕は、有名な事業所の講演を聞きに行ったことがある。

そこは、よい支援をしていることで有名だったけど、僕はよい支援だと思わなかった。なんだか、利用者さんを幼稚園児のように扱っていたからだ。


もちろん利用者さんは、大事なお客さんだ。

大事にしなくてはならない。

僕は、常にカスタマーファーストを心がけている。


利用者さんは、当たり前のことをわかっていない5歳児として扱われることを望んでいるだろうか。僕はそう思わない。


僕は、いつも「もし僕が利用者さんだったら・・」と考えるようにしている。

僕は、今ありがたいことに健康だが、この先、鬱にならないとも限らない。そうなった時、どう接して貰いたいだろうか。そう考える。


会社員として、10数年、経営者として6年やってきたアラフォーの僕。

もし5歳児のように扱われたら、すごく腹が立つし、病気になったからこんな扱いを受けるんだと憤るだろう。


だからと言って、できて当然、わかって当然という態度もダメだ。

〜〜だから、できて当然。〜〜だから、できなくて当然。

よくわからない相手に対して、勝手なレッテルを貼ってはいけない。


「難しい・・」という声も聞こえてくると思う。


新入社員にできて当然、わかって当然という態度で接したら問題になるのはわかるだろう。

その難しいことを、一般社会では、当たり前にやっているのだ。

福祉のスタッフだけが、一般社会でやっていることを免除されていいわけがない。



僕は、福祉の世界では、当たり前のことが当たり前になっていないと僕は感じる。

僕が、会社員をしていた時、当たり前だったことを当たり前にすると、それは福祉の世界では「新しい」「ニュースタンダード」なのだ。


そろそろ、福祉の人間も気づくべきなのだ。


一般社会も、福祉の世界も同じ人間の集まりだと。


近代は、人間を機械のように同じに考えてきたけど、僕たちは、工場で作られた製品のように同じではない。生まれつき体が丈夫な人もいれば、生まれつき体が弱い人もいる。今まで健康でも、何かのきっかけで不調になる人もいる。


私たち人間は、多様だ。

多様でありながら、共通の部分が多くある。


「もし自分が具合が悪くなったらどう扱って欲しいか」


大事なのは、想像力だ。


それは、福祉のスタッフだけに必要なことじゃない。

他の仕事だって、クライアントが、顧客が何を求めているか考えるのは、当たり前のことだ。


福祉でも、それが基本ってだけだ。



映画「翔んで埼玉」の作中で東京都民は、

「埼玉県人には、そこらへんの草でも食わせておけ!」

と埼玉県人を虐げていた。


そんな感じで、事業所の経営者が

「障害者には、低賃金で健常者がやりたがらない単純労働でもやらせておけ!」

という時代は、もう終わった。


福祉の世界も競争が激化し、市場が正常化した。

障害者を虐げていた福祉施設には終わりが来て、時代は「カスタマーファースト」「顧客至上主義」だ。


僕は、「現場至上主義」だ。と同時に「自分ファースト」でもある。

僕は、自分の気分が悪くなるような現場は嫌なのだ。

カスタマーファーストで、利用者さんが気持ちいい事業所、スタッフにとって働きやすくて気持ちいい職場、それが僕にとって気持ちのいい現場だ。


誰も犠牲にならない、福祉施設が僕の事業所なのだ。

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