第2話 ありがちトラブル2:パワハラ:どんな正義も振り翳せば圧になる

僕たち副施設のスタッフ、支援者は、「こういう生き方が正解だ」と利用者さんに押し付けたりしない。


「ほんとはこうした方が上手く行くのにな」と思っても、それを口にするときは、慎重になる。


今話題のドラマ「理不尽にも程がある」の中で歌われている。

「どんな正義も振りかざせば圧になる」


どんなに正しいことでも、振りかざしてはいけない。

無理やりではダメなのだ。


物語の北風と太陽のように、押し付けて、それで、利用者さんがその通りに動くことはまずない。押し付ければ、利用者さんとの信頼関係が損なわれ、こちらのいうことに全く耳を貸さなくなってしまう。


大事なのは《信頼関係》だ。



このドラマの中で、もう一つ重要なキーワードがある。

「話し合いましょう」だ。


「話し合っても仕方ない」

確かに、そういう思いに駆られる時もある。


ありがちトラブル1でも述べたが、これは、障害がある、病気がある人にだけ起こることではない。一般の職場で直面する問題は、福祉の現場でも直面する問題なのだ。


話し合っても無駄派 VS 話し合った方がいい派


80年代のように、拳と拳で語り合うわけにもいかない。

80年代の福祉ではセーフだった正解の押し付け派、現代では、アウトだ。

無理やり押し付けたら、それはパワハラだ。

じゃぁ、どうすればいいか。


残された選択肢は、「話し合い」だ。

現代は、80年代に比べれば、モラルのある、非暴力的な社会だ。

その分、我々は忍耐強くなければならない。


忍耐強い、話し合いこそ、よい支援だ。


忍耐強く話し合わなければならないのは、病気や障害のせいではない。


現代社会は、そういう社会なのだ。


ちなみに、そのいちで登場したストーカー化した利用者さんは、僕と話したのが良かったのかどうかは、わからないが、後をつけるのは、結果的にやめた。


その後、女性の利用者さんから相談を受けた。

自分では、友人というより知人くらいだと思っていたある男性がいた。しかし、その男性は、結婚を前提に交際していると思っていて、LINEなどをブロックしても、共通の友人を通じて連絡を取ろうとしてくるらしい。警察に被害届を出すほどでもないような気もするが、気が滅入るという。


友人だと思っていた男性は、精神の病気でもないし、障がい者でもない。女性からすれば「ただの勘違い野郎」である。


福祉の人間は、何かトラブルが起こった時、それを病気のせい、障害のせいにしてしまいがちである。変な人、ズレた人は、一般社会にもいる。恋愛で勘違いするのは、病気や障害が原因とは限らない。恋愛経験の少なさが、勘違いを生むこうともある。


その利用者さんが主治医に相談したところ

「恋愛経験の少ない男性は、一般的な親切に対して『僕のことが好きだから親切なんだ』と勘違いしやすい」とコメントしたそうだ。


僕もそう思う。

正直にいうと、僕は臆病で嫌われてもいないのに「あの人、僕を嫌っているのでは?」と気にするので、逆のタイプ、好かれてもいないのに「あの人僕のことが好きなのでは?」と気にする人がいたとしても不思議ではないと思う。


僕みたいなのは、「気にしぃ」と言われるし、後者のタイプは「おめでたいやつ」と言われる。いろんな人間がいる。

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