異世界に迷い込んだ俺、意外と簡単に元の世界に戻れたと思ったらケモミミの女の子が着いてきてしまった。

めんたい粉

第1話

「母さん!自転車の鍵知らない?見つかんないんだけど。」



「あんたが変なとこ置くからでしょ!無いんだったら歩いて行きなさい!」



「ちぇ…行ってきます。」








◆◆◆








まぁ、たまには歩いて登校するのも悪くないか。




…来年には受験か。来年の今頃の俺、何してるんだろ。




そろそろ勉強始めた方がいいのかな…





あぁ、余計な事ばっか考えちゃうな…!早く学校行こ。





「…ってあれ、どこだここ。」











-あの日、俺が自転車の鍵を無くしたのは



あの日、歩いて登校する選択をしたのは



あの日、考え事をしていて道に迷ったのは



偶然なのかなんなのか分からない。


ただ、あの日は、俺の人生の大きな分岐点だった。それだけは言える。







-なんだこの道…ここら辺にこんな道あったか…?

帰り道も分からなくなっちゃったし。

なんか獣道っぽいし…熊とか出ないよな…?







◆◆◆







やばい…完全に迷った。


どこ見渡しても木しかない…


さっきまで鳴いてた鳥の声も聞こえなくなったし。



パキ…



「うわぁ!!」



びっくりした…枝踏んだだけか…。



俺ビビりすぎ、落ち着け落ち着け…



一旦来た道を戻ろう…






-冷や汗をかきながら振り返ると、そこには



熊のような



いや、熊よりも恐ろしい化け物が立っていた。








◆◆◆










悲鳴をあげようにも、声が出なかった。



でも、何故か体は動いた。






-逃げろ逃げろ!!



このままじゃ死ぬ…!



ドスドス付いてきてるのが聞こえる…!



どこかに…逃げ道は…!!



あれは…光…!森を抜けられる!




-この時、安心し切った脳みそに俺の体は抵抗した。


森を抜けようとする脳みそを無視して、体が勝手に動いたんだ。


そして暗く、ジメジメとした重い森に引き返した。


あの時、自分でも何をしているのか分からなかった。


だが、今なら俺の体が何を考えていたのか分かる。


あの時、脳みそに従って森を抜けていたら化け物に追いつかれて死んでいた。


俺の体は、図体がでかい化け物と距離を取ろうと、障害物の多い森へと引き返したんだ。



それを何故体が先に思いついたのかは分からないけど、この判断が無ければ俺はここで死んでいた。




-化け物と少し距離が空いた!


けどどうする…?このまま逃げてても追いつかれる!


どうすれば…!




-その時、俺の横をものすごい勢いで何かが通った。



と同時に、化け物の悲鳴が森に響いた。



「グオオオオオオ!!!!」



俺の横を通ったのは、人間の男だった。



と言っても、その人間は腰に日本刀を持ち、腕は四本あり、そのうち一本は肘より上の部分が無かった。

身長は二メートル程だったろうか。


理性を持つ人間であることは分かったが、身なりは追いかけてきた化け物と然程変わらなかった。





-「*****、**?」



この人…な、何言ってるんだ…?



「あ、ありがとうございます…?」



「***…?**!」



-男は何かに気づいたような仕草をした後、ポケットから本を取り出し、それを見ながらこう言った。



「この特徴は…日本人、かな?」








◆◆◆







「その反応は…日本人で良さそうだね。街に案内するからおいで!」



「あ、はい…」




-街に着くまでの間、彼に色々なことを教えてもらった。

まず、彼の名前はシロギス。

そして、ここは異世界らしい。


異世界人の口から『異世界』という単語が出て驚いたが、この世界では昔から現代から迷い込んでくる人間が多かったらしい。


だが、50年に一度くらい迷い込んできていた現代人も年々減ってきて、シロギスは

「現代人なんて2000年ぶりに見たな!」

なんて言っていた。










◆◆◆







…俺が知ってる異世界とは違ったが、異世界であることには変わりはない!!

どうせならこの世界楽しんでやる!




「色々話している間に街に着いたな!うーんと…じゃあまず教会で現代人登録してきてくれ!」



言われた通り教会に行くと、書類に名前や出身などを書かされた。


確か『身元調査書』的なことが書かれていたと思う。



「終わったよ!シロギス、早速街の案内を-



「よし、帰る準備はできたか?忘れ物とかないよな!」



「うん!大丈夫!…って、帰る準備?」



-シロギスは教会の倉庫からメカメカしい椅子を持ってきた。



「おう、この装置に座ってくれ。これで帰れるからな。じゃあ、現代でも頑張ってな!」




無理やり俺を装置に座らせると、装置はギュインギュインと音を立て始めた。




「えぇええ!?ちょっと待って!!そんなすぐ帰れるの!?もうちょっと楽しみないんだけど!」




「ああ…詳しいことはこの紙に書いてあるから、帰ったら読んでな。じゃあな!」




「ちょっとま-


突然視界が光に包まれ、まるで全身麻酔を打たれたみたいに、意識が遠のいていった。







◆◆◆










そして次に目が覚めたのは、ベッドの上だった。

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