22話 氷の十字架/2人は不審者

 青い光は解き放たれ、凄まじい勢いの冷気となった

 そして、そこに形成されたものが姿を現す

 大きな氷のグローブとともに装着された十字架

 退魔専用の魔道具

「久しぶりにやったが……。割といけるもんだな」

 右腕からは冷気が今でも発せられており、それを警戒したチロテラは近づこうとしない

「これは…。まさかあれを今魔法で形成したのか…!?」

 その刹那、冷気を打ち消すように放たれる暴風

 その暴風は木々を薙ぎ倒す

「一発くらっとけ…!」

 暴風の中を突き進むエクスト

 暴風の中とは思えないほどの速さで対象へと辿り着いたエクストは、チロテラを蹴り上げる

 だが、その蹴り上げも虚しく、空中で受け身を取られ、すぐに風の刃を向かわせ、攻撃してくる

 見えにくいにも関わらず、魔力痕跡だけでなんとか全10弾中6弾を避け切る

「狙う…!」

 右腕をチロテラに合わせる

 そして、冷気の閃光が発射される

 華麗な身のこなしでで避けられるが、それすらも囮だと言わんばかりに空へ向かって跳ぶエクスト

 左腕にはレイドソード、ARの標準的装備が握られている

 鱗にレイドソードを突き立て蹴り飛ばすエクスト

 そのまま二体同時に落ちていく

 落下地点、二体がいる場所は直線

「決着をつけよう」

 より一層、右腕に魔力が入る

 

 刹那の速さでチロテラに肉薄し、拳を打ちつける

「バンカァァァァ!」

 拳に装着されていた十字架の先端部が稼働する

 冷気と共に杭が打ち込まれた

 

 そして、チロテラは四方爆散

 爆発に巻き込まれたエクストは傷つくことなく立っている

 これで、災害級マリウスチロテラは討伐された

______________________________________

「うーん…どうするかな」

 アイカが頭を悩ませている

 目の先には、先程のチロテラの襲撃により倒壊したアパートの姿があった

 そして頭浮かぶのはもちろん弁償と、不審者2人ハルトとカイレの住む場所もちらついていた

「これ持って帰ってもいいかな?」

「いいんじゃないか?。いらないだろうし」

 後ろではギルとハルトがARの残骸をどうするかについての議論をしている

 持って帰るようだ

「………」

 そして、カイレはただ1人、考え事をしていた

「とりあえず、うち来る?」

 そして、ギルが家に招待し、その場は解散となった


 数時間後

 鍋をした

 鶏ガラをベースにした旨味の効いたスープが美味しかった

 後にハルトはそう語った


「ほんとに…どうしよう……」

 まだアイカの悩みは尽きないようで、いまだにどこか住める場所がないかと鍋を突きながら先ほどまで考えていた

「大丈夫?」

「…いや…全然…」

「あー。そうか、おまえさんたち、住む場所無くなったのか」

 アイカの萎れた姿を見たギルが口を開ける

「その通り。今はただの不審者2人」

「俺が不審者ブラックで」

「俺が不審者ホワイト」

 交互にハルトとカイレが適当に名乗る

 名前的にyes不審者5もあるのだろうか

「そうか。ちょっと待ってろ」

 そう言って、ギルは部屋の外へ出ていった

 そしてまた数分後

 ギルが部屋へ戻ってくる

「よし、喜べ。ハルトとカイレ。おまえらここの空き部屋に住めるぞ。特別温情で家賃もいらないらしい」

「え!?ほんとに!?」

 何よりも喜んだのはアイカだった

 大きな悩みの一つがなくなったのは大きいのだろう

 アイカの顔に可愛らしい笑顔が戻った

 真っ暗な闇から、冷たい風が吹き込んでくる

 もう深夜」である事を知らせる

「もうそろそろ、お開きかな」

「そうだな…」

「おまえらは、この部屋の下の階の奥の部屋だ」

「荷物は…」

「ないね」

 そんなこんなで鍋の時間も終わった


 真っ暗闇の中、赤い柱が奇妙な動きをする

 嫌いなものを食べさせられたかのように

 あるいは、嫌いなものを注入されたかのように 

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