21話 黒い退魔師
「待たせたな」
死の淵または、今際の際に現れる
漆黒の退魔師
腕に十字、黒いマント
「いったい…だれ…?」
アイカが純粋な疑問をつぶやく
「忘れたのかよ…。ショックだなぁ」
金属と金属がぶつかるような音がする
十字架とチロテラの爪がぶつかった音だ
「俺はギル。本名はギデル・ソーマ。数年前まで探索者をやっていた。だから……」
ギルの名乗りと台詞に呼応するように漆黒の|退魔師<<アルミュール>>が爪を弾き返す
「ここは俺に任せろ!」
弾き返され、よろけたチロテラにハイキックを繰り出すAR
「ギデル……ギデル……。まさかあの!?」
「「すまないが俺たちは知らない説明してくれないか?」」
何かを仕組んでいたかのようにハモってアイカに説明を求めるカイレとハルト
「数年前にこのマリウスと同じくらいの規模のあるマリウスをひとりで討伐した有名人だよ。何より、魔法技術が凄いらしい」
「あの時は……な。今は多分衰えてる」
アイカの説明に補足を入れるギル
「そのために、このエクストを少しづつ改造してはいたんだがな」
チロテラが体勢を立て直し、漆黒のAR─エクストと睨み合う形となる
「さて、ここから少し、本気を出すか」
コクピットに座るその探偵は、眼光を光らせ、操縦桿に力を込める
そして、跳んだ
同じようにしてチロテラも空へ舞う
だが、両者とも飛ぶではなく跳ぶ
滞空時間はそう長くない
大きな翼をしならせ風を起こすチロテラ、しかし、エクストの腕に装備した巨大な十字架で、それは防がれる
落下が始まる
エクストはスラスターを使い、チロテラに接近、かかと落としを命中させた
落下速度とかかと落としの衝撃が合わさり、かなりの速さで落ちていくチロテラ
エクストは素早くチロテラの上空へ移動し、十字架を下へ構える
バン、バンと2発の弾丸が十字架より発射される
それは紛いも無い実弾
その実弾も重力を受け、銀の閃光になりチロテラへ迫る
その銀の閃光は、2発ともチロテラへ命中
チロテラは一瞬悶えたが、すぐに建て直し、今度は顔をエクストの方に向け、咆哮した
「──────ッ!」
音にできない音が森に響く
だが、それでもエクストは止まらない
十字架を下へ構えたまま、漆黒は蝙蝠へと接近する
「バンカァッ!」
チロテラへと肉薄した時、そこは既に地上近く、十字架を思いっきりチロテラへ突き刺し、叩きつけるようにトリガーを引く
パイルバンカー。貫くための近接装備が敵を貫くために作動する
「───ッ!─────ッ!」
言語化できない叫びを上げ、抵抗するチロテラ
しかし、それも刹那にも満たない一瞬の間
すぐに静かになった
だが、これで一件落着とはならない
空気がそう告げていた
「なんか嫌な予感が…」
「それは言わないお約束」
生身組が、そんな会話をしている
「とりあえず、後にも先にも軍部への連絡だね。ここならすぐに駆けつけられるはず」
そう言って、
チロテラはびくりと動きはしたが、その後動くことはなかった
しかし、彼らはまだ警戒を解いていない
ここに流れる異様な空気が、解かせないのだ
瞬き一つ、チロテラが首に何かが注入されたように、びくりと動き、首が跳ね上がる
その首が、もう一度地面につくことはなかった
そう、再行動を始めたのだ
「やはりか…!」
再起したのも束の間、チロテラは大空を飛ぶ。跳ぶではなく、飛ぶ
空を地面のように駆け回っている
「飛んでる!?」
「本来飛べないはずだが…。この短期で進化したとでも言うのか…!?」
「なら、引き摺り落とす…!」
ギルの掛け声と共に、エクストがもう一度跳ぶ
チロテラの高度には届かないがそれでも十分過ぎるほどの高度
十字架から弾丸が発射され、チロテラへと向かう
だが、その弾丸は圧倒的な速度を手に入れたチロテラにより避けられる
「くそっ!」
漆黒は落ちていく
獲物を追うようにして、その漆黒に迫る蝙蝠。両者とも、スピードは音速に近かった
「いまかっ」
肉薄したチロテラに十字架を突き刺す
有効打にはならない
そしてそのまま両者が地面に激突する
チロテラを蹴り飛ばし、距離を取るエクスト
またもやその2人は睨み合う
チロテラは翼をしならせる。暴風警報
「やらせないっ!」
十字架から光線を発射するエクスト
どうやら、十字架から出せるのは実弾だけじゃないらしい
光線は三弾中一弾しかヒットしなかったが、それでもチロテラを止めるのには十分な刺激だったらしい
その刺激が、今度はチロテラの本能を刺激して、チロテラは突進してくる」
「受けてたつ!」
衝突に合わせて拳を繰り出す
木々がしなるほどの衝撃が生まれる
だが、力はチロテラの方が若干上だったようで、野生の力を解き放ったチロテラの力に負け、エクストが後ろに少し跳ぶ
魔力残量とギルの体力との一瞬の逡巡
「これ以上は……」
これ以上の戦闘続行は、難しい
だからこそ、ここで全力を出し切り討伐することにした
「本気を…出す!」
ギルは高らかに宣言し、自らの持つ体力を全てエクストに注ぐ
あくまで、
エクストは青く輝き始め、青い冷気に包まれる
それは、青いオーラのようにも見える
ー蒼きエクソシズム
青い冷気はエクストの右腕に集約しはじめる
それは、巨大な十字架を形成する
青い光が一層強さを増し、凝縮される
そしてその光は、解放され、形成されたものが姿を現した
それは、巨大な氷のグローブと共に装着された十字架
退魔専用の魔道具
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