19話 探偵と軍人と新居
太陽の光が部屋に差し込む昼下がり、ハルトたちは、自称探偵業のギルの住処兼事務所であるビルの2階にいた
ハルト、アイカ、ギル、そして死体というメンバーだ
そう、死体。厳密に言えばただぶっ倒れた人なのだが、まあほぼ死んでるような状況かつ目を覚まさないのでほぼ死んでいると仮定していいだろう
この際倫理は問わない
その死体の名は、カイレ
世間知らずの軍人で、この間王宮でハルトとアイカは遊んだ中でもある
だからといって悲しんでいるかといえば……
「どうする?身元証明する?俺は知ってる人だから証明人になってもいいんだけど……」
「うーん。まあそうするべきかもね」
全然そんなことは無かった
そもまだ死んでると確定しないのだが…
「あのお二人さん?この人まだ生きてる……」
「え?あらそうなの」
「あらそうなのって……。知り合いじゃないのか?」
「いやまあ一応知り合いではあるけど…」
「……」
ギルはガラッと窓を開け、黄昏始めた
午後3時の穏やかな日差しが眩しい
「おーい、起きろー」
ギルがそんなことし始めたので、ハルトもカイレを起こそうと努力する
具体的には顔をぺちぺちし始めた
「…ん…。ここは…どこだ…?」
目を覚ましむくりと身体を起こすカイレ
「お、起きた」
「起きたか…」
「あ、お前は…あの時の…」
「まさか俺の事を!?」
1日中一緒に遊んだ人の事をそう簡単に忘れるわけは無いと思うのだが……
「…街のガイドか」
「惜しい!」
「いや惜しくない」
「む?違うのか?」
「俺はハルト。自宅がないのでただのニートをやっている」
「頼むから君はそんな自己紹介しないでくれよ……」
「なるほどニートか…」
アイカのツッコミ虚しくカイレとギルにはニートと伝わったようだ
「で、お前はここで何してたんだ?」
「実は、次の依頼を受けるまで金が無くてな……行倒れてたんだ」
「で、それを俺が拾ったわけか。なんでこんなことに巻き込まれたんだ… 」
「おお、お前が俺を拾ったのか。感謝する」
「お、おう」
「次の依頼って、あの赤い
「そう…だった気がする」
「それまで金がないって…どんな生活を…」
アイカが困惑した顔でそう聞く
「まさか仕事をクビに?」
「まあ、そんなところだ。実際は、仕事が嫌になって逃げ出してきたってのが正しいけどな」
「どんだけブラックだったんだよ……」
「まあ、死にすぎたんだよ。仲間も敵も含めて」
「なるほどな…」
(ブラックすぎて過労死が、出過ぎたということだろう。…そういうことにしたい)
ハルトは"そういうこと"にしないと耐えられない気がして、"そういうこと"にした
「けど…。討伐作戦開始までもう少し日が空くけど…どう過ごすつもりなの?」
「……野宿なら10日間は余裕だ。ギリギリ1年くらいでも」
「…さいですか」
どうやら野宿をして過ごすつもりらしい
だが、残念ながら食べれる草などは土地柄の影響で少ない
「そういえば、あのアパートもう一部屋残ってたよな?」
「あそこに住まわせるつもり?経費はこっちで持てるけど…。許可取れるの?」
軍が必要経費は払ってくれるらしい
なんという太っ腹
「ああ。あそこの大家には猫探しの時に仲良くなったからな。大丈夫だと思う」
「なるほど。じゃあそうしよう」
カイレの住居、決定!
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その後色々あって、ギルと別れたあと、2人+1人は新居であるアパートへ足を動かした
既に時刻は午後5時。オレンジに染った空と、低い位置にある太陽が3人を照らす
「そういえば、魔法って、ARに乗った状態だとどれくらい使えるんだ?」
「うーん。生身で人間ができることのちょっと大きい版みたいな感じかな。大きな火柱を打ち出すことはできるけど、氷とかで武器を何本も作るとかはできない感じ」
ハルトの質問にアイカが答える
次いでカイレが補足する
「ARの魔法能力ってのはあくまで人間の処理能力を倍にして動くようにしたってだけだ。人が自分の背丈と同じくらいの武器を10本も作れないように、ARも同じことは出来ない」
「もっとも、乗り手本人がそれだけの技術を持ってればできないこともないけどね。まあARは大きいからAR用の武器1つを作ることすらほぼ無理だけどね」
「なるほどな…」
「そういうこと。あ、そういえば何年か前に危険級魔法生物を1人で倒した人がいたな…。あの人は確か、魔法で武器を作ってたな…。名前は確か、ギデル・ソー…なんだっけ」
「俺は知らないな…」
「なるほどな…。じゃあARのCDってのは…」
「そう。人が直感的に操作できない、いわば人じゃ処理しきれない魔法の演算をするために作られた機械だよ。その機械を物理にして、刻むことで何とか演算できるシステムを作ったんだ」
「なるほど」
「まあ君が欲しがってる魔法の情報はこのくらいじゃないかな。あとはプログラムについてかな。まあプログラムも作る時に分かればいい。」
そんなこんな、喋りながら歩いていると、ついに新居となるアパートへついた
「ここだよ」
アイカはアパートを指さし、ここが新居であることを示す
白い壁と鉛色のドア。二階建てで外側に階段がついている
建ってから少し年月がたっているようで、ところどころ古く見える
(懐かしいな)
ハルト自信、日本で見たような、というか自分が住んでいたアパートそのもののような見た目のため、懐かしさを感じずにはいられなかった
「さて、早速入ろうか」
そう言って、アイカはガチャリとドアを開けた
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