18話 街と住宅と行き倒れ
新居。それは新しい住まい、新しい生活の象徴とも言える人の住処
困惑。それは脳が理解を拒み、どう頑張ってもその現象、言動を噛み砕くことが出来ないという状態
では、それが同時にあわさった時、人はどうなるのか
「新居が決まった……?まあいいや」
そう、全てがどうでも良くなり、受け入れるのだ
「驚かないね…」
「いや、内心すごい驚いてるよ?けど一周まわってどうでも良くなった。あ、さつまいもいる?」
アイカに対して手元にあった蒸かしたサツマイモを手渡すハルト
どうやら異世界は地球にあった野菜や食物、+新しい食物何種類か
という風なものらしい
そのためもちろんサツマイモもある
「ありがとう。じゃあその新居にはこの後案内するね。市街からは少し離れるけどまあそこまで離れてる訳でもないから安心して」
「なるほどね……。というか俺、新居への移転が検討されてたのか……」
「そうだね……。私物化してるけど一応ここ軍部の留置所だから……」
件の留置所を見渡すと、そこかしらにハルトの私物がおかれていた
「そうだった」
「とりあえず、今日は寝よう」
そういえば、今は夜だった
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「さて、出発しよう。……昼ごはん食べてからね」
「おうよ」
時刻は12:00
とっくにお昼の時間である
外では太陽が輝いているが、白い壁に包まれた屋内では、なかなか感じることは出来ない
「昼は出前でいいよね」
「昨日が再来しないなら」
(どっから持ってくるんだろ)
ふとした疑問を感じながら昼ごはんを待つ
屋内からでも感じることの出来る恩恵である青空は、眩しいくらいに輝いている
出前が届いたらしく、てってってとアイカか部屋を出ていく
少ししてから、アイカが部屋に戻ってきた
両手に持つ袋からは、揚げたての揚げ物の匂いが漂っている
どうやら、出前とやらはファストフード店のハンバーガーらしい
がさがさと袋を漁り、包み紙に包まれたハンバーガーなどを取り出す
「すっげえ久しぶりに食べる気がする」
ふと、ハルトがそう呟いた
「前から気になってたんだけど、君、ここに来る前はどんな生活してたの?」
「え?やめてくれ……思い出したくもない…。まあ一言言えるのは仕事ばっかの日々ってことだな」
「大変そうだねぇ……」
アイカが口をもぐもぐさせながら言う
小動物みたいだ
その後も、2人で会話を交わしつつ、昼ごはんを食べ終えた
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「着替えたー?」
「もちろん」
「よろしい。よし出発しよう」
アイカが張り切り、それにハルトがついていく
今回のアイカは普段よりテンションが高い
重い鉄製の扉が重々しく開き、外の世界へと接続される
部屋の中に吹き込んでくる風が心地よい
外に1歩踏み出すと、ビルや商店に囲まれた市街地が見える
商店が多い地域では、物を売るという気概のある声、というよりは人との談笑の声が聞こえてくる
ビルなどが多い地域では、外回りと思しきスーツを着た人などで溢れている
今がお昼時ということもあり、昼休みで昼飯を食べにいく人も多いのだろう
「ボクについてきてねー」
そう言いつつ、アイカは進んでいく
ビル街を歩きつつ、ハルトは街を見回す
(まるで日本だな。店とかの雰囲気もまさにそうだ)
ところどころに、激安を殿堂としてそうなヒクイドリ印の店や、業務スーパーと思わしき店もある
また、たい焼きのような焼き菓子の匂いが鼻腔をくすぐる
「ここら辺って、この国で発展してる街なのか?」
「まあ、そうだね。とは言っても、最も栄えている街よりかは離れてるかな」
この街は、どちらかといえば、都心部のベッドタウンという役割が近い
しかし、この街で生活を完結させる人も多くいるのも事実だ
「あ、ちなみに、ここよりちょっと外れたところにこの国でいちばん大きいテーマパークがあるよ」
「どこのネズミーランドだ」
くだらない会話をしつつ、住宅街へ突入する2人
その住宅街は、まさに日本の住宅街という感じで、洋風建築もあれば、和風建築もある
そんな外観だった
しかし、所々に魔法陣や魔法の使い方などの記載があることからここでも密接に魔法が生活に関わってるとわかる
「よぉ、軍の中佐さんかい?」
フラフラと歩きながら渋い声をかけてくる、中年男性(汚くない)
「そういう君は……。ああ、あの時の」
「なに?知り合い?」
「うん。ここら辺で余ってる部屋のある賃貸を教えてくれた親切な探偵」
「ああ。その通りだ。俺はそこで探偵業をやってるギル。よろしく頼む」
中年男性…ギルは、そばのビルを指さそう言った
「よろしく」
「早速だが、こいつをどうにかしてくれ……。重いんだよ」
そう言って背中で支えていた何かをドサッと地面に落とすギル
その姿は、ハルトも見た事ある青年、カイレの姿だった
「わーお」
素直にそんな反応をした
「とりあえず、これを君の事務所まで運んでいいかな?」
アイカがギルにそう聞き、ギルが静かに首を縦に振った
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