第15話 ゲームと改造と来たぞヤツらが

 前回までのあらすじ 

 国王とゲームをした

 レーシングゲームのはずが、格闘ゲームだったけど、やっぱりレーシングゲームだった

 よく知ってるしらない人が来た

以上

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「レーシング……。それは競走をすること」

「何を今更深いことみたいに言ってんだよ。全然深くねぇよ。少なくともマリアナ海溝よりは」

「だいたいそんなもんだろ」

 カイレのつぶやきにハルトがツッコミ、カルトがそれにさらにツッコむ

 完成された漫才だった

「で、何をしに来たわけ?」

「あそこの中佐にどこにいるか聞いたら、すんなりと話してくれたので、恩を仇で返すまいと我らはここに馳せ参じたわけさ」

「馳せ参じんでいい。馳せ参じんでいい」

(国王がいる王宮にすぐに行くことを決められたな……)

 ちなみに当の国王本人は

「人増えたし何して遊ぼ……」

 人が増えたので、より大人数で遊べるゲームを探していた

「なあ、アイカ」

「ん?なに?」

「あれ、ほんとに国王であってる?」

「…………うん」

 俺が間違えていて欲しかった

 ハルトはそう思った

「よし!次はこれやろう!」

 そう言って国王(仮)が掲げたのは、ゲームのタイトルだった

 パッケージには、『最大人でバトル!広大なステージで最強を目指せ!』と書いてある

「ええっと、それはどんなクソゲーで?」

「その聞き方はないんじゃ……」

 ハルトの作品紹介を求める声に、アイカが、ええ……という顔で咎める。いや、別に咎めてるわけではないようだ

「よくぞ聞いてくれた!ハルトくん!このゲームのどこがクソかって言うと……」

「クソゲーであってた……」

 クソゲーだった

 それを聞いてハルトは精神に多大な負荷がかからないよう祈るだけだった

「これは、パッケージにも書いてあるとおり、四人対戦できる格闘ゲームさ!」

「それをみんなでしようというわけか」

「そうそう」

 ちなみに、このゲーム、キャラクター一覧から好きなキャラを選んで戦うゲームなのだが、そのキャラクターのゲームバランスが狂っている

 どれくらい狂っているかと言うと、みかんがメロンと大きさ勝負をするのと同じくらい狂ってる

「おいちょっと待ってくれ。クソゲーなんてみんなでやるもんじゃないだろう」

「おいおい、クソゲーはクソだと思ってもらっては困る」

「その通り、クソゲーこそみんなで苦痛を分かち合い、痛みを軽減するものなのさ」

 リエルのつっこみに、カルトとハルトが返答する

「それに、このゲームすでに改造しあるし」

 どうやらこのゲームはすでに改造されていたようだ

 さすが国王、腕がたつ

「あ、けど安心して、ちゃんとこのゲームデフォルトの“クソゲーモード“もあるよ」

 さらにいらない機能までつけてくれた

 ちなみに、手を加えたのは主にゲームバランスで、ゲームバランスはちょうどいい塩梅となっている

 クソゲーモードを除けば

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 バシュゥゥゥゥン

 近未来的な銃声が響く

「カルト!おいカルト!大丈夫か!」

 銃声がしたすぐ横では、カルトが虚な目で横たわっていた

「すまない…俺はもう…長くないようだ………]

「おい!そんなこと言うなよ!お前!まだあのアニメの最終話見届けてないだろ!?」

「そうだな………じゃあ、せめて俺の分まで君が見てくれ………」

  がくり

 カルトが目を閉じる

 不思議と、重みはない

 それもそのはず、それは全て、画面内で起こったことなのだから

『カルト LOST』

 ゲームの画面内にそんな文字が表示される

「みてー、ハルトくんー、シーラカンス釣れたー」

 アイカの可愛くデフォルメされたアバターがハルトの方に釣った魚を掲げて走ってくる

「シーラカンス…、ってそれどう見てもグソクムシ」

 それを見たハルトは先ほどの真剣な表情とは打って変わって、笑い転げる

 なにせ、シーラカンスと言われ持ってこられたものは、海の節足動物、「グソクムシGUSOKUMUSHI」だったのだから

「まさかこんなゲームだったとはねえ」

 リエルが画面に顔を向けながらそんなことを呟く

「まさか中身が入れ替えられていたとは………」

 ことの発端は数時間前、さあやろうやれやろうそらやろうというテンションで、中身を取り出し、ゲームを始めてみると、画面はガチムチのおっさんや、筋肉もりもりマッチョメンの変態が現れず、代わりに可愛くデフォルメされた女の子や男の子(男の娘ではない)が出てきた

 それを見た一同は、少し気分を削がれたが、やってみると意外や意外、面白かったのだ。

 ゲームの内容は主に、デフォルメされたキャラを動かして、街で遊んだり、釣りをしたりと、色々なリアルでできる体験をゲームでしかできない演出で体験すると言うもの。例えば、釣りの時に天叢雲剣と思わしき片刄剣が釣れたり、洞窟に潜ったら黒く輝く・・多面体が出てきたり、地中掘ったらオルトの直線上にある惑星の首都が浮き出てきたりするのだ

 それに一同は楽しくなり、かれこれ二時間ほどあれやこれやと騒ぎながらやっている

「カルトー、見て見てー、そこらへんにあった直方体殴ったら電気ウナギ出てきた」

「ぷっ、なに、なにそれっははっ、なんで…殴ったらそんなもんでてくるんだよ」

 復活したカルトが笑い、過呼吸になりかける


そんな楽しい時間が過ぎていった


______________________________


 時間は過ぎていき、すでに外は真っ暗である

「楽しかったよ、ありがとね、国王」

 カルトがそうお礼を言う

 国王に向かって言うにはあまりにも、軽い気がするが

「やだなあ、キギアって呼んでよー。冷血種族マシンキギアでもいいよ」

「それはどうなんだ?」

「んじゃ、俺たちはもういくよ」

「じゃあね」

 カルトとリエルが背を向け帰っていく

「俺もいくとしよう」

 カイレも、帰る準備を始める

「じゃあ、頼んだよ」

「わかってる。俺はプロだ、その「えなじーどりんく」くらいすぐに持ってこよう」

 言葉の端々に不穏な雰囲気を感じたので、それとなく聞いておくことにするキギア

「ありがとう、それで?どうやって用意する気?」

「大事なものなんだろ?ならば敵も大事なものはず……だから、寝込みを襲う」

「うん。それはやめてね。普通に買ってきてくれると嬉しいな」

「普通に売ってるものなのか!?」

 技量はあっても常識はないらしい

「うん」

「了解した」

 カイレも背を向け帰っていく

「さて、こんな夜道にアイカおんなのこを一人で帰らせるきかい?ハルト」

「安心しろ、それはない。途中まで送っていくさ」

「よおし、それでこそ紳士だ」

「じゃ、アイカを呼んで帰るよ」

「くれぐれも寝込みには気をつけて」

「なに、俺ビルの屋上から狙われてんの?」

「はいはい、帰った帰った」

 夜の冷たく、心地いい風が通り抜ける 

 それは、もう帰るべきだと言う合図でもあった

「じゃあな」

「それじゃあまた」

 キギアとハルト、2人は互いに小さくてをあげ、背を向けた

 1人は室内に、1人は仮家に

 それは、楽しい時間の終わりを告げるものだった

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