第13話 ゲームと画面と狂ったシナリオ
前回までのあらすじ
呼び出しを食らってしまったハルトは出先で出会ったカイレという青年とガァーチャンコォッ!
国王が最初に出会った医師だとわかった
そして、みんな仲良くゲームを始めることになった!
…………とさ
____________________________________________
「液晶ぶっ壊れちゃったよ……」
「すまない……。まさかそんなものが存在していたとは……」
凹んでる風にはしているが、一切凹んでる風には見えない不思議な雰囲気のまま呟いたキギアの一言に、今度はカイレがしっかり凹んだまま返す
「いや、別にいいでしょ、人間誰しも知らないことがあるもんだし」
「いや、君が言うなよハルトくん」
ハルトが、一切関係ないのにも関わらず、適当に返す
それに即ツッこむキギア
いいコンビだ
「うーん、ゲームできないなぁ……」
「お前ならもうひとつくらい持ってるんじゃないか?」
国王なら持ってそうだと思い、聞いてみるハルト
しかし、そんな国王の返答は想像の斜め上を行くものだった
「持ってるけど、自室にあるんだよねぇ……。自室にあと3台くらいあるんだけど……。持ってくるのめんどくさい……」
「なら仕方ないな」
国王の言い分にもはや呆れを通り越して、どうでも良くなったハルトは適当にまとめた
「ボードゲームとかはどうだ?」
((こいつボードゲームは知ってるのにシューティングゲームは知らないのか))
2人は同時にそう思った
「うーわ、ボードゲームねぇ……。あ、そうだ!アレがある!」
ぽんと手を打ち、なにか思いついたように声を上げるキギア
「何があるんだ?」
「ふふふ、ボードゲームっていうわけじゃないけど、ちょうど3台あったはずなんだよね、みんなで遊べるゲーム」
心の底から楽しそうに返事をするキギア
一体何があるというのか、ハルトは楽しみにしながらも不安のも同じくらい感じていた
ちなみに、カイレは心の底から楽しみにしていた
~数分後~
ガラガラ
キギアが黒い大きなゲームの筐体を3つ、押しながら持ってくる
よく見ると、正面(と思わしき場所)にはスピーカー付きの椅子、その奥に液晶。その下には謎の空間があり、よく見るとそこには車のアクセルやブレーキを司るペダルがあった
しかし、何より目を引くのは、画面とペダルの中間に位置するハンドルだろう
車と同じ大きさくらいの黒いハンドル。真円の枠から内側に伸びた三本の棒は、等しく真ん中の真円に繋がっており、その真円の中には、ロゴと思わしきものが描かれている
(これは……)
ハルトはふと思い出した。ひとり寂しくゲームセンターへ通い、ひたすら美少女を愛で、峠最速をめざした日々を
(俺は……知ってる……このゲームは……峠最速を目指すゲームだって……!)
要するにレーシングゲームである
「いやー、昔衝動買いしたのを思い出したんだよ」
動くかなーと、電源を入れてみるキギア
『
ついた。そして鳴った
「おお!」
「ついたな」
感嘆の声をあげるキギアの横からひょいと顔を出し、つぶやくカイレ
「これはレーシングゲーム……。一般道最速を決めるレースさ!」
「いや一般道で走るなよ」
まあ、豆腐屋も一般道を走っていたのでなんとも言えないが
「レーシングゲーム……。聞いたことがある……。おばあちゃんによると、通勤ラッシュを避けながら最速を決め……」
「よしじゃあ始めよう!」
なにやら語りだしたカイレの声を遮り、キギアが3機あるうちの真ん中に座った
それに続けてハルトは右端の、カイレは左端の筐体にそれぞれ座った
椅子の質感は、ゲーミングチェアに近く、ハンドルの感触もゲームセンターのそれだったので、業務用のものを買ったのだということがわかる
さすが国王やることが違う
ハルトはそう思った
「じゃあ操作は僕がやるから任せといて!」
「了解した」
「よしじゃあ始め!」
ギュゥゥン!と、とても開始音声とは思えない重厚なエンジン音が3機同時に鳴る
「あ」
「どうした?」
素っ頓狂な声を出したキギアに、ハルトが問う
「チュートリアル始めちゃった☆」
「おいバカなにしてんだ」
チュートリアル、それは、多くの
初めてやるゲームならまだしも、セーブデータをリセットした上で、操作方法もわかってる場合、ただ長く鬱陶しいことこの上ない
キギアは、それを押したわけで……
『チュートリアルを始めます』
機械音声が無情にも告げる
「勝手に始めるなよ」
でーんでーんででーんでーん
重々しいBGMと共に、達筆な
「 ト そ し ポ 日 時
ラ の て | 本 は
ペ 名 い ツ は 2
イ は た を 新 0
ジ ゴ 生 た X
丨 み な X
ス だ ス 年 」
そんな文言が、黒色の宇宙のような背景のしたから、金の筆文字で縦書きで流れてくる
「読めるかぁーっ!」
ハルトの慟哭が響く
しかし、無情にも、あらすじは続く
『そ』
「そ?」
キギアの疑問詞の声がする
『の』
黒い画面の中にあった"そ"の文字は一瞬にして消えうせ、"の"の文字に変わる
パッパッパッ
それが何回か続く
「いや、見えねーよ。見せる努力をしろ努力を」
もちろん常人には見えるはずないので、ハルトも見えない
誰がここで怪盗の次回予告をしろと言った
「俺は見えたぞ」
そんな世迷いごと(ハルトの感想です)を言うのは、初見で液晶に神速の衝撃(物理)を与えたカイレ
「こう書いていたな。その内容は、朝の通勤ラッシュ時に、渋滞の種となり得る車を避けつつ、いかにしてコースを三週回るかということである。と書いていたぞ」
「なまじ合ってるとしても迷惑すぎる……」
呆れつつツッコミを入れるハルト
ある意味律儀と言える
バッ
今度は筐体の、横についてあった黒い板が展開し、もとからあったモニターと連結し、大きなモニターとなる
そのモニターに、緑色の結晶のような背景が映し出され、真ん中に3つの文字が鎮座している
その文字は、「そ」、「や」、「か」
訳が分からなかった
しかも日本語だし
「一体これになんの意味があるんだ!?」
オーバーなリアクションを取ってみせるキギア
その時、3つの文字が回転し始める
「なんだ?何が起こってるんだ?」
カイレも、何が起こっているのかさっぱりわかってない様子
不意に、回転が止まる
止まった文字は、「そ」、「ん」、「な」
(読める!私にも読めるぞ!)
ハルトは心から思った
読める。読めるのだ
そう、このシステムとは、回転して、ランダムで文字が組み合わさることにより、ストーリーが進行するのだ
「「いや読めるかぁっ!」」
キギアとハルト。二人の慟哭が筐体を揺らした
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