第9話 外出と衝突とエクストリームスポーツ

「落ち着いた?」

カルトが聞く。通常ならここでヒロインの慰めなのだろうが、メインヒロインが慰められる側に入っているので必然的に、友達その2になる

「うん。少しは」

「ならよし」

カルトの問にハルトが答え、その答えにリエルが反応する

「どうやら、学生の身分で勝手にARを乗り回して戦いに出たことが上層部の逆鱗に触れたらしい。文面から推測するにこっちの身より軍の備品であるARを壊されそうになったことに怒ってるみたいだし」

ちなみに、軍から出された文面はこうだ


さきの戦いにおいて、君ら学生が軍の指示なしにARに乗り、戦ってくれたことには大いに感謝しよう。しかし、君たちはまだ学生の身分。ARの乗り方などはまだ稚拙であり、1歩間違えば、全てが終わっていただろう。よって、君たちのARの操縦能力を高めるためにも、先日発現した、赤い柱の討伐作戦に参加することを命じる。無論、これは強制である。普段ならばARを指示なしに操縦したことに対して、思い罰を下すところだが、今回は一切の破損はなかったための、特別な措置である。また、さきの戦いで参戦した赤い機体のパイロットもこれに該当することとする

軍教育部 ノルワート・デル


要約すると、軍の備品かってにつかってんじゃねえーよ、責任取れよ

ということである

ひどい


なにはともあれ、そういうことである

これでは、ハルトが労働するBADEND不可避である

「バックれようかな……」

「リエル、アイアン・メイデンに保管しといて、こいつを」

「わかった」

カルトがハルトを指さしながら言う

それに了承するリエル

「やめてくださいしんでしまいます」

渋々了承するハルト

了承なのかと感じたそこの君。君の完成は正しい。誇っていい。たぶん


「んじゃまあ、そういうことで」

とリエル

「あ、そうそう、君、国王様から呼び出されてたよ」

そして、カルトがとてもいらない大事なことを言う

「は」

「「んじゃまあ、そういうことで」」

最後に2人が同時に同じ言葉を発し、ここからいなくなる

ガツン

「あぅ、いてっ」

そんな衝撃音と声がしたのはそのすぐあとだった

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「というわけなんだ」

ハルトの説明が終わる

「そりゃ、なんていうか、ご愁傷さま」

ハルトと対面で座るアイカが言う

「で、なんとかバックれる方法はないかな」

「ないね、というか無理だ」

で、何をしてるのかというと、いかにして、命令をバックれるかという会議である

この上なく、アホらしかった

アイカも呆れている

カランと、ハルトが持っていたグラスの氷がとける

「まあ、そんなに怖がらなくてもいい人だよ。あの人。変な人だけど」

「そういう問題じゃない」

「え?」

「俺は、この命令に背くことを決めた。ならば、それを途中で投げ出すというのは相手にも失礼にあたる」

そもそも、相手の了承得られずに始めたため、投げ出しても問題はない。だが、そんなものを気にしては負けのため、ハルトは気に来ていない

「これは、エクストリームスポーツだ。いかにして、綺麗に狂いなく、バレることのないかを競うスポーツだ。そのためには、フェアである以前に、勝負が成立しなければならない。だから、俺は途中で投げ出さない」

エクストリームスポーツなら仕方ない

そんなわけが無い

そう思ったアイカは

「いいから、さっさと行きなさい」

そう言ってハルトを送り出した

____________________________________________

ハルトは街を歩いていた

気分はグレー。めんどくさいというのが強い

上を向いて歩いても、涙を浮かべてないので意味は無い。だからやめた

どこまでも広がる蒼穹の空の下で、鳴り止むことのない街の喧騒が、ハルトを包み込む

コンクリートしかない街を歩きながら、中心部へ歩いていく


どすん!

人とぶつかる

「!すまない」

ぶつかった衝撃で倒れたハルトの上から、落ち着いた男の声がする

ふと上に目を向けると、散切り頭の男性がいた。歳は18くらいだろう。

綺麗な琥珀色をした目は、こちらを捉えている

その次に差し出された腕は、細いながらもしっかりとしており、よく鍛えられていることが分かる

この時、ハルトも少しは鍛えようと思った。具体的には基本フォームを鍛えるだけで遥かに上回るくらい

ハルトは、差し出された青年の手を掴み、立ち上がる

「ごめん。こっちの不注意だった」

素直に謝るハルト

こういう時は、どっちが悪いでもなく、両方が悪い、いや、ハルトが悪いので、素直に謝ることが大事だ

そうすることで、次になにされても、正当な理由をつけることができる

「すまない、こちらも不注意だった」

青年も、謝る

「怪我は?」

青年が聞く

「いや、特には」

「なら良かった」

「それじゃ、俺はもう行くので」

「ちょっと待った、道を教えてくれないか?」

ハルトは困った。自身も地理には詳しくない

それでは人に教えることは出来ない

しかし、そんな疑問は次の一言によって打ち破られる

「OUKYUUというのだが、どうやら銃を売ってるところらしい」

そこは、ハルトが行こうとしている場所だった

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