第7話 お酒と成人と世界線

前回までのあらすじ、かくかくしかじかありました。詳しくは自分で考えてください(投げやり)


「…………………………なにしてんすか」

ハルトは、目の前でうずくまって顔色を悪くしている美少女に対して、その一言を頑張って絞り出した。

その頑張り度は、赤鬼に変身できるくらいだ


あたりはすでに暗闇に飲まれており、唯一月が1人で輝き続けているくらいだ

とはいえ、繁華街から離れたとしても、少しの喧騒はある


「いや…うっぷ…、その…おぇ…」

「腹パンされたんですねわかりますわかります」

「……家行っていい?」

アイカが言う。

「は?」

こいつは何を言ってるんだ。ハルトの思考は3秒間フリーズする。

この3秒間というのは文字で表すと3文字で短いが、体感は長い。


こいつは何を言っているんだ。思考はそこに戻ってくる。まさに至高の思考

「それまたなんで?」

「なんでもいいでしょぉ〜」

よくねえから言ってんだよ。ハルトはそう言いたくなるのを堪えつつ


「よくないです。というか気持ち悪いんですか?」

「うぅ…全然気持ち悪くないよ…?」

「気持ち悪いんですね。胃薬もらいました?」

「もらってない……」

(とりあえず水飲ませなきゃな)

どちらにしろ部屋に案内することになるだろうとハルトは思案する


「とりあえず、部屋行きましょうか」

「えー、やだぁー」

ずーり、ずーり

ハルトはアイカの首根っこを掴んで運んでいく。

あたりが少しうるさくなる

繁華街へと出ることはない道ではあるが、道を通る人の量も少なくはなく、ハルトの横を通り過ぎる人々は皆、不可解な視線を向けていた。

しかし、そんなこと言っていたらキリがないし、日常生活で道を通ることすら出来ないので、ハルトは無視した


程なくして、軍施設の私部屋(ハルト専用)に到着する。

「着きましたよ。ベッドで寝といてください」

「え!?ベッド!?……はるとくんのedgeエッジ

「俺のどこが端っこなんだ。」

ハルトは捨てた。敬語を使うという意志を。

敬意を。全力で。そりゃもうフルスロットルで。


「とりあえずそこで横になってて」

「ん。……わかった」

そう言ってアイカは横になる

それを確認して、ハルトは水を用意する。

アイカは横になってからすぐに寝てしまったので、起こすのも悪いめんどくさいと思い、机に座り、プラモの箱を開ける。


どこで買ったのか、いつそんな時間があったのか、それを知る者はいない。買った彼でさえも。

ついでに言うと、会計までのスピードはものすごい速度だったらしい。彼でなきゃ見逃しちゃうやつだ

ちなみに買ったプラモは1/144 DP05-スクナイコノクスネだ。そのスケールでのプラモでは、世界一の大きさを誇る。その大きさは195cm。ハルトの身長より高い。そうじて、置き場所がない。特に狭い。そしてこのキットは強欲な美女ではない。決して。


ハルトは箱を開ける。そこに広がるは、プラスチックの枠の中に繋がれてるパーツ。プラスチックの棒の横から伸びた棒にいくつものパーツが繋がっている。そんな板が数十枚も重なり、ひとつの箱に収まっている。

他にも、ネジや鉄板が入っており、それを取り付けるようのネジ回しが入っている。

要は、この一箱でプラモが組める仕様になっているというわけだ。

ふと、横に目をやると、金髪の美少女が寝ている。その綺麗なブロンドはベッドの上に柔らかく広がり、その根元には無論、顔を緩ませたアイカが布団を抱き枕のようにして寝ている

服装はラフなパーカーだが、横になったことにより、乱れ、胸元が露になる。

その厚みは平均的より薄いが、それでも扇情的であり、健全的な男性であるハルトを赤面させるのには十分な格好だった。


ハルトは見てはいけないと、野生の勘と理性が珍しく意気投合し、目線をはずす。

そして、開けかけで完全に空けてはいなかったプラモの箱を開ける

そしてそっと閉じる

有無を言わせぬ行動だった

とりあえず積むほりゅうする場所を探すが、そもそもそんなスペースがなく、しぶしぶ作ることを決める

異世界に来た時も持っていたデザインナイフで袋を丁寧に破壊。ニッパーを買ってなかったので、説明書から指示されるバーツを手でもぎ取ったり、ねじりきったりする


数時間後

「あぁ〜、終わらねえ〜」

怨嗟のように呟くハルト

勿論、プラモは完成していない。まだ、機体上部のコンテナが完成したばかりだ

パーツはあと数百?数千?とりあえず膨大な数残っている


さらに数時間後

「おい!誰だよ!こんなプラモ作ったやつ!誰だよ!誰が作れるんだよ!玄人かよ!開発部!消費者を考えろ!馬鹿野郎!!」

ついに開発部へキレ始めた

やはり、プラモは完成していない。機体両端の無駄にごちゃごちゃしたギミックのついた

レイドソードが完成したばかりだ

パーツは全然減っていない


それからさらに数時間後

「はははははは……ははは…誰だよこんなの作ろうと思ったやつ。なんで作れるか考えなかったんだよ…… 」

やばい、もうダメかもしれない。ハルトの精神状態はマイナス方面へ振り切り続けている

ちなみに機体の大きさはやっと90cmへいった。パーツはまだ、半分+3分の2残っている


その後の数時間後

「はははは!もうあれだ!もうなんかすげえおもしろい!こんなおもしろいことこの世にあるのか!」

精神状態がカンストしたかもしれない。マイナス方面に

大きさは92.5cmに到達した。残り97.5cm

パーツはものすごく残ってる


その後のその後の数時間後

「よし!諦めよう!」

清々しく、彼は宣言し、寝ることを心に決めた。

ベッドはアイカが使っているので、なぜか装備されていたソファーで寝ようと思った

カチカチカチカチ

ゴロゴロしやすいようにリクライニングソファーの背を水平に倒す

しかし、彼は気づいた

(布団が、ねえ!)

そう、布団がなかったのだ

だが、なんという(読者にとっては)神の采配か、布団は2枚、アイカが使うベッドにあった

ハルトとて、寒いのは嫌だ。しかし、美少女が寝てるベッドで美少女で起こさずに布団を1枚剥ぎ取るというのは、至難の業だ。


(最初の難関は、ベッドに登るところか。)

ベッドには、少しといっても、平均的だが、高さがある。さらに、布団の1枚(アイカが占領してない方)は、奥の壁にくっついている。

(あーもうめんどくせ)

そう思い、普通に取りに行くことにした

ベッドに膝をつける。そぉーっと壁の方によっていく、そして布団の裾を掴み、一気にこちらへ引き寄せる

この時のコツは、一気に引き寄せること。音の大きさとか、反動とか考えてはいけない。ただ、無心で、何も考えず、自分が出来る限りの神速で引き寄せることだ


ハルトは引き寄せた布団を、いそいそとソファーにセットし、寝る準備を済ませる

ソファーに寝転がり、目をつぶる。その瞬間に「ふはは、怖かろう」という言葉が、画面被ったやつとともに出てきたが、無視した。しかも脳波コントロールもできるし。

それから数秒後に眠りに落ちた


(なんか、もぞもぞしてる)

ハルトはそう思い、目を覚ます。人の暖かみ(光ではない方)を感じたのだ

それを感じる方向に体を向けると、アイカと目が合った。そりゃぁもうバッチリと




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