第6話 炎と焼肉とじゃぱにーずとらでぃしょなるいべんつ
3人は席へ歩いて行く。
席は窓側の端っこ。合流が1番最後だったので、端っこだということらしい。
「もう、食べ放題は始まってるみたいだねぇ」
すでに、肉が机に置かれている。綺麗な赤色をした肉に、文字通り霜が降ったように、白い、脂の部分がある
その横には、壺。中にカルビが入っており、特性のタレにたっぷりと浸かっている。
「さあ、焼こうか。」
カルトがそう言って、肉を焼き始める。
ジューという、肉が焼ける心地いい音がして、片面が少しづつ茶色になっていく。
「それにしても、君、よくあれが乗りこなせたね」
リエルがハルトに言う
「ほんとに、なんで乗りこなせたんだろう」
続けて、カルトも似たようなことを言う。
彼らは、あの機体について何か知っているようだ。
「?、何か曰くでもあるの?」
ハルトは思わず尋ねる
カルトが肉をひっくり返す
「いや、うーん、言ってもいいかな…」
「確かにねぇ…」
ハルトの対面に座る2人は、揃いも揃って歯切れが悪い
しかし、そんな反応をされると気になるのが人の性分。
「教えて欲しいんだけど」
というわけで、ハルトも追撃をする
「わかった。言う。だから、焼いてる肉を取らせてくれ」
ハルトはそう言われ、取らせずに焦がそうとして、押さえつけていた肉を離す。
リエルは、その肉を自分のさらにとり、話をする
「いや、噂程度ではあるんだけど、あの機体、試験機だったんだ」
「それだけ?」
「いや、そこまでは周知の事実。噂はここからさ」
にやり、と口元を歪ませるリエル。
「あの機体、人の魔法能力を大幅に拡張する機能を搭載しているらしいんだよ。それも、かなりの負荷がパイロットに生じるらしい」
カルトが肉をとる
「なるほどな、魔法能力を…」
(何それ知らん、怖……)
ハルトは何も分かってなかった。
そもそも、魔法能力がわからない。ありえそうではあるけど、理解はできない
「いやー、けど、かっこいいね。ハルトは」
そう、カルトが言う。肉を頬張りながら。
「それはまたなぜ?」
ハルトが問う。
「いや、人が耐えられないようなシステムをどうにかする。まさにヒーロー!特撮にだって沢山あったよ、そんなシーン。」
急に熱くなるカルト。そんな彼をみて、リエルが嘆息する
「また、始まった…。こいつ、重度のヒーローオタクなんだよ。」
「なるほど。」
「危険なシステムを使いこなすことではるか上の的と渡り合うロマン!熱いパトスがほとばしる!しかも、初めての操縦なんでしょ?」
「まあ…」
カルトの喋りが熱くなる
「やっぱり!さすがだ!初搭乗、初操作、これで機体を撃破してる!まさにヒーロー!君は英雄の素質を持ってる。きっとエクスカリバーに選ばれる日が来るよ!」
刹那の時間、彼の喋りが止まる
「やっぱり、ボロボロになりながらの勝利でかっこいいと思うんだ。」
「…………わかる、わかるぞその気持ち!」
しかし、ハルトも伊達に青春時代をアニメとロボと特撮に捧げていない。
そんな人物が、同じ趣味の人物と触れ合うとどうなるか。
「おお!分かるか!あれが!」
「わかるとも!ギリギリの初期フォームで勝つ姿、かっこいい!」
こうなる
立ち上がりながら、大声で話す2人。幸い、周りも周りでうるさいので、あまり目立った様子はない。
もし、そうでなければ、ここでハルトの異世界ライフは潰えていただろう。
「はぁ…、こっちも同類か…」
「やっぱり、アーマーパージはロマンだよ。プロペラントタンクなんて最終的には爆薬にすればいいし」
「弾薬なんて威力増幅剤だろ?」
話を続ける、2人。
「けど、でかいけどその分推力がある機体もいい。」
「それには、俺も同意するね」
リエルも話に混ざる
「暴走ホームって危険だからこそ、いいよね」
「主人公が体の限界と戦いながら克服して行く姿、そそられるね」
実際は、克服できないどころか、掌握されかけたホームもあるのだが、引き合いに出すと面倒なので出さないでおく
ヒーローオタクたちが語り合う、当事者にとっては楽しく、他からしたらカオスでしかない時間はすぎていき、飲み会もお開きになる
「いやー、今日は楽しかったよ。ありがとねハルト君。」
「おい、俺に対しての感謝はないのかい」
カルトは無視した。
「じゃ、また今度、会う機会があれば」
「じゃあね」
2人は帰っていく
その後ろ姿を見送ると、ハルトも、何も見えない真っ暗な闇に向かって歩いていく
しかし、その中に、人の形をした何かがあった。
ハルトはそれに近づいてみる。
近づいていくと、輪郭が徐々に明らかになっていく。
緩く、低いところで
しかし、幼女でもなければありえないほどの身長の低さなので、しゃがんでいることが分かる。
というか、こんな細かく描写しなくとも、ハルトはすでに誰かを察していた
「…うっ…うぅぅぅ……、気持ち悪い……」
別に付き合いが長い訳では無いが、短時間でのあまりのインパクトの大きさに、脳が忘れてくれなかったのだ。
「あ、あの、アイカ中佐、ですよね…」
「ん?…あれ、君は…。ああ、ハルトくんか、どうしたの?」
どうしたもなにも、お前がどうしたという状況だ。質問を間違えている
「……………………………なにしてんすか」
あまりの呆れに、ようやく絞り出した一言だった
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