第5話タイトルと命名法則とその他もろもろ

事情聴取をを受けた翌日。ハルトは最初に寝かされていた部屋で寝ていた

住所不定かつ、寝る場所すらないので、留置部屋に寝かされているわけである

いちおう、軍の所有物を勝手に乗り回したが、敵の襲撃を退けるために戦果を挙げているため、その戦果を軍としても無げにできず、特例として、留置部屋を私物としていいとの許可が出たわけである

留置部屋といえば、汚い、不衛生、不眠という3Fのイメージがあるが、この部屋はそんなことはなく、小綺麗でどちらかといえばビジネスホテルを彷彿とさせるような環境だ

ベッドは西洋式。

ハルトはよく立ったまま寝たり、椅子で寝たり、会社の床に布団敷いて寝たりしていた

そのため、ベッドで眠れるというのはこの上ない贅沢であり、その贅沢をフルで活かすために午前中は寝ておこうと決めていたのだった

ドンドンドン

音が聞こえる

ドンドンドン ドンドンドン

まだ聞こえる

ドンドンドン ドンドンドン ドンドンドンドンドンドンドン

三三七拍子に入った

ガバッ

ハルトもさすがに起きる

(今何時…?)

ここでみんなも思って欲しい。

そうねだいたいね


ハルトが時計を見て時間を確認すると、時計の針は1を刺しており、長針は12を指していた

それが、意味するのは、今は午後13時だということ。

午前ならば、あたりはもっと暗いし、ハルトは昨日は2時に寝ているので、午前はありえない

というわけで今は13時

そんなことはどうでも良くて、ハルトは昨日着たまま寝ていた、ワイシャツの上に羽織っていた黄色い蛍光色の反射チョッキを脱ぎながら、ドアに向かう

「はーい」

ドアを開けると、そこに居たのは、18歳ほどの青年

チャラさを感じさせない茶髪を七三分けを遊ばせたような髪型にしており、真面目さと"そうじゃない"の中間を演出している

顔も、凛々しく整っており、美少年に近いものを感じさせる

体格も、一見細そうだが、近くで見ると筋肉はしっかりついており、軍人の1人であるということがわかる


「あー、なんの御用で?」

そんな青年がなぜ訪ねたのかもわからぬまま、ハルトはとりあえず、聞いてみる

組織の基本は報告、連絡、相談であり、聞いてみることは大事なのだ。

少なくとも、ハルトは会社でそう聞いている

「いや、ちょっとね、いま、一昨日の戦いに参加した人たちを集めてるんだけど」

青年はそう答える

「だいたいの人は、俺と同じ学生だからほぼ集まったんだけどねぇ。唯一、君だけがどこにいるのかわからなかったんだ」

青年はさらに続ける

どうやら、彼は学生のようだ。さらに先の戦闘に参加したというのなら、軍学校か何かの学生なのだろう

「どうせなら、全員集めようってことになってね。それで、最後の一人が君。嫌なら、拒否してくれてもいいよ」

そういうことらしかった

しかし、ハルトに断る理由もなく

「わかった。ついてくよ」

「随分とあっさりだね」

「暇してたしな」

「なるほどねぇ。経費は軍部から報酬として出てるから、好きなだけ食べるといい。」

「好きなだけ、食べる?」

「……今夜は焼肉だ!」

青年は歓喜の叫びをあげる

同時に、ハルトの全細胞が喜びの色にみちる。

焼肉、それは、全人類にとって、至福のイベントしょくじ

それを、好きなだけ何も考えず、食べることが出来る。素晴らしい、ただそれだけ。

「というわけで、ついてきたまえ」

青年はそう言う。喋り方は一見、高圧的に聞こえるが、実際はそんなことを一切感じさせない不思議な喋り方だった

それも、彼の雰囲気が成すものなのだろう

ハルトは、その青年について行く。留置部屋から出た廊下は、白く、何も無い、無骨なものだった

そんな廊下をどんどん進んでいく

「そういえば、俺の自己紹介をしていなかった。俺の名前は、リエル・ワイト。軍部学校の学生で、19歳。以後よろしく」

青年、改めてリエルは、廊下を歩きながら自己紹介をする

「じゃあ、俺も。名前はハルト・シュトウ。住所不定の無職。圧倒的な不審者だ。以後よろしく」

ここまで酷い自己紹介があるだろうか。いや、ここにあるが

「君は、あの赤い機体のパイロットかい?」

「うん。無理やり出撃したよ。動かすのが難しかった」

「だろうね。俺でもむずかしいねぇ。あれは」

いつしか、廊下を抜け、外に出る。 そこには、大きな街が広がっていた。分かりやすく説明するなら、近未来の都会。

そこらじゅうにホログラムと思わしき広告があり、各々が各会社の商品や事業の宣伝をしていた。また、コロニーといえど、上にも街が拡がっている訳ではなく、あくまで平面である

やはりというべきか、街には人が多く、主に若い人が多かった。

その中には獣耳や、エルフのような耳をした者まで多種多様な人?が混じり、本格的に異世界だということを主張している

(おお…!これだ。これこそが俺が求めていた異世界…!)

そもそも、ハルトは異世界を求めていた訳では無い

そんな感じで、テンションが上がりながらも、リエルについて行く。

リエルは、街の中を進んでいき、ついに飲み屋街のような場所のひとつの店の前で立ち止まる。

「着いたよ」

そこは、まさに焼肉屋。チェーン店などでは無いことが一切その店について知らないハルトですら分かるほどの雰囲気。

店は全体的に、黒い外装で、銀色の四角いダクトがそこらじゅうから出ている。店の周りにはノボリが一定額払えば食べ放題というシステムを宣伝している

リエルは店の入口へ歩いていき、店に入る。ハルトもそれに続き、入店する。

ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ

店の中は既に学生独特のノリと雰囲気で充満しており、すでに宴は始まっていることを表している

「おおー!リエル!居た?」

「ああ、もちろんいたよ」

とある青年がリアルに話しかける。髪の毛を短くかり、いわゆるスポーツ刈りという髪型にしている。いかにも好青年という風貌で、来る人を拒まない、誰とでも仲良くなれる雰囲気を醸し出している

様子を見るに、どうやらリエルの友人のようだ。

学生時代、ほぼ人と関わらず過ごし、青春を亡きものとしたハルトにとっても、最初のイメージは、いいひとなので、雰囲気は本物だろう

「君が、あの赤い機体の?」

「え、ああ、そうです」

何故か敬語になった

「おい、君。なぜ俺には敬語を使わない?」

「いや、もうめんどくさくて」

リエルがツッコミを入れる

「ははは、僕の名前はカルト・ガンゴーギル。タメ口でいいよ」

「わかった。俺の名前はハルト・シュトウ。よろしく。」

「よろしく」

彼らは挨拶もそこそこに、席に向かって歩き出す


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