第4話 中佐と医師とメカニック
あの戦いから、1日が過ぎた
幸い、住宅地に被害が出ることはなく、壊れたのも軍備だけ、それでも、小破くらいの被害である
しかし、人の心の面ではどうだろうか
あの戦いの後、イクストライトを乗り回した張本人である、晴人は静かに胃の痛みを感じていた
(ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ー)
前言撤回、派手に胃の痛みを感じていた
その理由は、約6時間前に遡る
6時間前、晴人は起床した。時刻は午前10時。日曜日のヒーロータイムを見逃したかと、絶望しかけるが、ここは異世界であり、そんなものは存在しないと思い直し、結局絶望した
そもそも、ここが異世界だと思ってる時点でおかしいのだが…
いや、異世界ではあるけど
そんな中、彼は自分がいつの間に、寝ていたことに気づいた
彼が、知らぬ間に自分がここで寝て、起きたその事に
そして、ここが何処か分からないということも
ピンポーン
地球でよく知るチャイムがなる
玄関口にあるあれの音だ
「はーい」
いつもの癖で、声を出しながらドアを開ける
「………」
軍人と目が合う
ばたん!
ドアを閉める
ぐっ
ドアの隙間に靴を入れられる
「ちっ」
晴人の心がおれる
ドアが開けられる
「シュルベルト少佐がお呼びだ」
軍人は晴人に向かって高圧的な態度でそう言いながら、ついてこいと歩き出す
晴人はその言い方にイラつきながらも、軍人についていく
少し歩くと、とあるドアに行き着く
「入れ」
軍人は少ない言葉ながらも、的確にやれと指示する。無論、高圧的な態度だ
多分わざとしている。いや、絶対
とりあえず、晴人はそれに従っておき、ドアを開け、その部屋に入る
すぐに扉は閉まり、1人部屋に取り残される
↑
いまここ
(胃が、胃が痛い)
晴人の胃に穴があくまで残り30分といったところか。ちなみに、一人残されてから、10分間たっている
誰も来る気配はなく、この部屋には、白い壁と晴人がただそこにあるだけ
筆舌に尽くし難い緊張感で張り詰めているこの真っ白な部屋。
あと数十分いるだけで、鼓動が止まってしまいそうな感覚に陥る
バタン
そんな音がした
もちろん、晴人が倒れた音ではない。もそ、そうならば、見出しに最終回と書かれていたことだろう
ということは、そのほかの何かということであり、目の前にあった、もうひとつの扉が開いている
ならば、それは誰かが入ってきたことになる
そう、誰かが入ってきた
入ってきたのは、少女。外見は15歳くらい
澄んだブロンドの髪を肩まで伸ばしている
白い肌に瑠璃色の瞳が綺麗で、The・美少女転校生のような美しさと可愛いさを両立している
背丈は平均的な15歳と同じくらいで、無論、晴人よりも小さい
しかし、その中でも最も目を引くのが服装。
見た目にそぐわず、軍服のようなものを来ており、軍人であることを証明している。
少女が着るには少し大仰かと思える服装だが、不思議と違和感はない
晴人はその事に違和感を覚える。
(少女が軍服?……妙だな)
しかし、次の瞬間、その違和感は一瞬にして崩れ去る
そう、それはフタエノキワミを受けた岩のように
「急に呼び出し、申し訳ない。先になのっておこう、ボクの名前は、アイカ・シュルベルト。階位は中佐。以後、よろしく。」
そんな美少女はそんなことを言う
階位は中佐との事らしい
(中佐か……、中佐!?。大、中、小で言うあの、中!?)
そもそも、大中小の中はお前にとってなんなんだと思うところである
そんなこんなで、晴人は心の底から驚いていた
当たり前だ。自分よりはるか年下である美少女が、無一文かつ、家無しである自分より、はるか上の地位にいるのだ
(というか、今、以後って言った?)
少女、アイカの言葉に若干どころか、悪寒のするほどの嫌な予感を覚える晴人
「さて、君はもちろん、呼び出された理由が分かるよね?」
晴人の疑問も、置き去りについでに光も置き去りに、アイカは話を続ける
晴人は、アイカからの質問に対し、最も好感度が上がるような答えを探していた
何故、呼び出されたか、心当たりがありすぎてわからないのだ
(あなたが僕に一目惚れしたから
愛し合いするため
わからない ←これ)
晴人の頭の中はこの状態である
しかし、こんな答えをすればほぼ100パーセント怒られる。
彼は、ニュータイプではないがイノベイターの素質があるので、わかってしまうのだ
しかし、いい答えも見つからない
ならば、あえて言おう
「わからない!」
と
・
・
・
・
3秒間くらいの短い沈黙。
「はぁー…」
そしてアイカの深いため息と、額に手を当て、呆れている様子
「うん。もういい、もういいよ」
「じゃあ帰っていい!」
「待ちなさい」
アイカと晴人の掛け合い
知り合いか夫婦かと思えるほどのタイミングの良さである
「とりあえず、名前は?」
晴人は一瞬考える
「ハルト・シュトウ。です」
そして、新しく名前を作る
彼は知らなかった、。この名前が、今後自分の行動ともに、騎士とヒーローというイメージを与えることを
「ハルト・シュトウと…。ハルトでいい?あと、タメ口でいいよ」
ちなみに、シュトウという苗字は、日本にも存在する
「大丈夫」
ハルトは、アイカの問いに答える
「わかった。そんじゃハルト。君、軍に無断でAR《アルミュール》を乗り回したね」
「はい」
即答するハルト。
「これ、犯罪なのよ」
バシューン
そんな音ともに、目のハイライトが消えるハルト。
「そんな、馬鹿な…」
一瞬にして顔が青ざめる
「もちろん、犯罪だから、罰は受けてもらわないといけない」
「まじですか…」
「一応、迎撃には貢献してるみたいだけど、君はARを小破させてるわけだからね。ちょっと厳しいバツになるかも。ほんとに、ほんとに悔しいけど」
悔しそうな顔しながら、そんなことを言うアイカ。
その顔は、本当に罰を受けることを、悔しがっていることを物語っている
「長くて、20年以上の懲役。いや、君は住所も不定だからもう少し、あと10年くらい伸びるかもしれない」
「そんな…」
異世界に来てそうそう、死にかける目に会い、その挙句は、懲役30年以上かもしれないとなると、もちろん、感情は絶望だ
ウィーン
扉が開き、誰かが入ってくる
「それは許してやってくれよ。それにあの出撃は、僕が許可した。僕に責任があるはずだろう?」
「あなたは…!しかし、さすがにあの機体を勝手に乗り回されるのは…」
「結果的には、大破じゃなくて小破。しかも、まだ動かせる。結果としては十分だろう?」
「分かりました。今回は特例で、不問とします」
入ってきてのは、男。男性といった大人といったた雰囲気はなく、かといって男の子という純朴な雰囲気もない。
17歳とか、そこら辺の雰囲気である
そんな男とアイカは会話し、なんだかんだでハルトの件は不問となった
(中佐が、見知らぬ男に敬語…。上官なのだろうか?というか、あの人が許可した?)
色々な疑問が浮かび上がってくる
「誰?」
というわけで、ハルトは単刀直入に聞いてみることにした
「えー、酷いなあ。覚えてないの?僕だよ。僕。」
新手の詐欺かと思えるような言葉。
無論、ハルトにそんな覚えはない
ハルトが誰だオメエみたいな顔してる、男は、
「ああ、そっか、あの時は違ったか」
そんなよく分からないことを言う
「僕は医師。ほら、あの時の」
男はそう言って、自分の顔を指さす
「医師って…、えええええ!」
ハルトにとって2度目の驚きである
「わかった?。僕の名前はヒルア。あの時は面白いかなぁと思って変装してたんだ」
馬鹿なのだろうか、こいつは
「なるほど、ありがとう。あの時は」
「いやいや、守ってくれてこちらこそありがとう」
「盛り上がってるところちょっといい?」
ヒルアと話しているところにアイカが割り込んでくる
どうやら、まだ聞かなければいけないことがあるらしい
「とりあえず、なんでARに乗ったの?」
「うーん。ほら、芸術だから?」
「爆発させることが?」
「芸術は爆発だっていうじゃん」
「次元が違う」
ハルトとアイカの会話。ほぼ漫才である
「じゃあ、ヒルアさん。何故許可したんです?」
「ほら、宗教上の理由で?」
「そんな宗教この世にない。よしんばあったとしても、この国は無宗教です」
ヒルアとアイカの会話。
ヒルアの言っていることがほぼ、ハルトと同じだ。
仲良しかよ
「とりあえず、調査書には適当に書いておくよ」
アイカはそういい、席を立つ
そして、ハルトに向かって微笑みを浮かべ
「ありがとう。君がこの国を守ったおかげで、生きてられる。」
そう言って、アイカはどこかへ行ったのだった
そんなことがありつつ、ハルトは見事、無罪放免となった
しかし、最後に問題が。
「俺、どこに帰ればいいんだ?」
ハルトが帰る場所がなかったのだ
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