第164話 ビループと法師と胞子

 影法師の能力で逃げようとするが、何かに阻まれている。上手く能力が発動しない。


 (なんなんですか一体!! この神に選ばれし最強のワタクシがこんな!!)


 「地獄の植物ってなんなんデスか!? それがあなたのギフト!?」


 未だにヴァルトメアを人間だと思っているビル。自分の能力も完全に封じられる程の能力。

勝てないと思い、この場を打破できる様に会話を試る。


 「あぁ、逃げられないから無駄だよ?」


 突如として全身に絡みついてくる木の根の様な物体。ギチギチと手足を引っ張り動けなくなる。


 「何をす「君には二つ選択肢を与えよう」」


 ピンと人差し指を立てる。


 「一つ、このまま実験体として俺くんの植物の寄生主となり、未来永劫苦しみ続ける」


 加えて中指を立てる。


 「二つ、君の主人の事を話し、苦痛無く死ぬ」


 ヴァルトメアであれば、通常、人の記憶を読み取る事は容易い。しかし、その情報が同じ神の事であれば難しく、探ろうとアクセスしても弾かれてしまう。


 「どちらにしても死ぬのデスか。であれば、迷う事はない。三つ目、あなたを殺す!!」


 影を伸ばし、ヴァルトメアの顔目掛けて槍の様に尖らせ貫いた。


 バタリと倒れ、頭からは血が噴き出ている様だ。そこから何度も何度も影の槍でヴァルトメアの体を貫く。


 「ひゃひゃひゃひゃ!! 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇええええ!!」


 宙に串刺したまま放り投げ、再度地面へと落下させ何度も串刺しにする。

ビルの満足がいくまで。


 「は、はぁ、はぁ、ワタクシに歯向かったからこんな事になるのデスよ。ひひっ」


 無惨な姿のヴァルトメアを見て、優越感に浸る。


 「良い夢は見れたかい?」


 死んだはずのヴァルトメアが血だらけになりながら立ち上がる。


 「何故だ!? もうお前は死んだはずだろ!? 何故何故何故ー!? お前はこのワタクシに殺されるべきなんだ!!」


 「まだ分かっていないようだね。自分の体がどうなっているのか」


 ビルは自分の体を確認する。

手のひらから徐々に全体へ……すると信じたくない悪夢の様な光景が目に入る。


 下半身は足先から溶け始めており、動けぬ様に蔓が雁字搦めになっている。


 徐々に感じられていなかった苦痛が思い起こされる様に鋭敏に感じられる。


 まるで足先をネズミに食いちぎられる様な感覚。


 いつからだ?


 先程は一矢報いてワタクシが攻めていたじゃないか。


 串刺しにして殺したはず。

いつから………幻を見ていたのか。


 「ぐぁああああああああ!!」


 今度は足先だけではなく、手や顔からも激痛が感じられる。


 頭が割れる様な痛み、顔を引き裂かれる様な痛み、全身から失神する程の痛みが押し寄せる。しかし、気絶する事は何故か出来なくされている様な……。


 このまま全身がボロボロにされるまで、心が、体が死ぬまでこの苦痛を味わわないといけないのデスか。


 そして一週間ほどの耐え難い苦痛を与えられ、ビルは死んだ。

















 「あぁ、逃げられないから無駄だよ?」


 突如として全身に絡みついてくる木の根の様な物体。ギチギチと手足を引っ張り動けなくなる。


 !? 


 何故!?

時間が戻っている?


 「何をす「君には二つ選択肢を与えよう」」


 ピンと人差し指を立てる。


 「一つ、このまま実験体として俺くんの植物の寄生主となり、未来永劫苦しみ続ける」


 加えて中指を立てる。


 「二つ、君の主人の事を話し、苦痛無く死ぬ」


 やっぱりだ。

時間が戻っている。


 だが、思考とは裏腹に口が、手が、体が勝手に動く。まるで定められているかのように。


 まさか、まさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさか!!!!!!


 現実世界のビルはキノコに全身が寄生され、フシューと口から息が漏れている。


 意識は無く、夢の中にいる様だ。


 「結構面白い子だよねこのキノコちゃん。傲慢な君にはピッタリさ」


 オリジナル植物。

『逆巻く幻夢の菌糸』

・ある時点から永劫に続く苦痛のループを強制させられる能力を持つ幻呪種のキノコ。動かぬ体は未だ夢から覚めない。


 ピクピクと体を痙攣させるビル。

ヴァルトメアを倒したと思ってニコニコしているかと思いきや、苦痛に喘ぐ表情となる。


 「表情筋が忙しいねぇ。いつまでも影の中で幸せでいるんだよ」


 影の中を出る。

無傷なメアを見て、驚くシャグァル。


 「我がドウホウは?」

 

 「さぁね。幸せにおねんねしてるんじゃない?」


 「ぐはははは。やはりニンゲンではあの方の力にはナラナイカ。ではお前を喰らい、我も支配者の一柱の末席に加えてもらうとしようか」


 「あの方……。気に食わないねぇ。君を殺したら次は君の主人を殺しに行かないとねぇ」


 ヴァルトメアの威圧感が天を穿つ。


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作者です。

多分未だにビルくんはループ系主人公やってますね。

快感と絶望を繰り返してます。


きのこは菌類なので植物ではないですが

何か植物みたいですし

何か寄生するし

何か狂気的だし

何かかっこいいから使ってます。


ということで風邪ひいたので皆さんは健康にはくれぐれも気をつけてくださいね。


なんかね、もう、咳が辛いのよ。

魔法使いならすぐ治せるんだろうけどね。

あーダニエル・ラドクリフになりたい。

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