第150話 国交

 バレリアは倒れたアリアナを部屋の隅へと移動させ横たわらせる。


 部屋にはヴァルトメア、アリアナ(気絶)、バレリアの三人となり、自己紹介を済ませる。

侵入に似た様な赴き方にバレリアは申し訳無さそうな顔をしている。


 「それでバレリア王、用件はなんだい?」


 姿勢を崩して、余裕のある振る舞いで同じ王であるバレリアへと話しかける。


 「た、単刀直入に申すが、ヴァ、ヴァルトメア王はこの国に冒険者ギルドや傭兵ギルドを建設する予定はないか?」


 ヴァルトメアのあまりの覇気に冒険者としての血が恐れを抱き、上手く言葉が出てこない。


 「ないかなぁ。必要ないもん」


 グハッ!!っと思わず声が出た。

あまりの無遠慮な断りの言葉にバレリアは落胆する。が、そこは冒険者である彼女はまだ粘りを見せる。


 「ぼ、冒険者は必ずや貴国の助けになり、より国としての発展が見込め「んー、要らない」」


 「………」


 「話は終わり?」


 「………本当に不要で?」


 上目遣いでヴァルトメアの反応を窺うように見上げるバレリア。


 「本当に必要だと思う? この国を見てそう感じるなら驚くよ。衣食住において冒険国が勝る所は無いし、ウチのエルフちゃんは人間の事が嫌いだからね。どうせエロい目で見る冒険者は多いと思うしね」


 「ま、まぁ確かにヴァルトメア王が言う事も理解できるが、べ、便利ですよ?」


 「じゃあどこが便利なのかな?」


 来た私のターン、ドロー!! の様にイキイキと冒険者ギルドのメリットを伝えるバレリア。


 「冒険者は様々な依頼を受ける事で生活をしているがそれは多岐に渡るのだ。時間の無いヴァルトメア王や貴国の人々の手助けになるかと思うが」


 「ウチの子達は何でも自分で出来るし、皆が助け合ってるから困った事は今のところ無いんだよね」


 「で、でもやっぱりか弱い女性達には魔物や猛獣は恐ろしく思うのではないか?」


 「か弱いね。君より強いと思うよ。それに冒険者達がこの国に来たところで樹海の魔物に食い殺されると思うけど。なんたってからね」


 完璧な意趣返しにバレリアはムッとした表情を浮かべる。


 「ほーう。私よりも強いと? この冒険王である私よりも」


 「そうだと言っているじゃない。多分秒殺だと思うけど」


 顔を真っ赤にして怒りを表す。

今まで生きてきてこれ程の屈辱は初めての事だった。過去散々女だからといって侮られた事も多かったが、その全てをその強さで蹴散らしてきた。


 だが、同じ女であるエルフしかも、戦士では無いただの国民に負けると秒殺であると言われた。


 「であれば試合をしようではないか。私が勝てばコチラの望みである冒険者ギルドを建設願おう」


 「オッケー。じゃあこちらが勝てば………特にこれと言ってないなぁ。まぁ何でもいいや」


 「むっきぃいいいい!! また馬鹿にしやがってぇええええ」


 怒りによって完全に我が抑えられていないバレリア。


 「じゃあ適当に見繕ってくるから」


 そう言うと転移で一人の女性エルフを連れてきた。オドオドとしたエルフは状況が理解できていないようだった。


 「な、何でここに? 私は薬草採取に樹海に行ってたはずじゃ……」


 「やぁ君は『ラミン』ちゃんだったね。急で申し訳ないんだけどさ。あの子と闘ってくれない?」


 「あっ! こんにちは、ご主人様!! え……あんまり自信ないですよ? みんなより弱いし……精霊さんも中級精霊さんだし…みんなみたいに上手く精霊術も使えないし……」


 「大丈夫だって!! 彼女……そんなに強くないから」


 「わ、私に倒せるかな……。ご主人様に……そう言われたら、なんだか出来そうな気がします」


 「なんだと!? くっそぉおおおお!!」


 そしてその後、二人は決闘。

精霊術及び、精霊の力を身に宿す力である

『霊装』を使用したラミンにボコボコにされるバレリア。


 「私が間違ってました。冒険者ギルドは必要ありません。ずびばぜんでじた」


 泣きべそをかいて女の子座りをする可哀想なバレリアは此処に来た事を後悔した。

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