第151話 案内人イバル
オレは樹国エンデの案内人イバル。
昔はエルフの国に住んでいたが、今は我が主人であるヴァルトメア様の国の民であり、案内人として日々働いている。
と言っても案内人になったのはつい最近の事で、ヴァルトメア様にイバル君さぁ案内人になってよ〜と申しつけられ今に至る。
この国は確かに案内人が必要かもしれない。
広すぎる国土、未知の生き物、鉱物、建物、新しくも複雑な文明、何よりもヴァルトメア様が創造された独創的な植物の特性を知らなければ下手すれば旅人や国賓が死んじまうからな。
そして今日は何やら冒険国アーベンの王様がこの国に訪れたという事でヴァルトメア様から案内する様に命じられた。
いざ会ってみるも何か顔も体もアザだらけ。
どうしたのか聞いても何も言わない。
それどころか謎に涙を流す彼女にオレの頭は混乱した。
「本日は一通りこの国の生活を見ていただきます。オレ…ワタシに着いてきてください」
「ばぁよろじぐ頼む」
何か上手く話せないようだ。
再度何があったのか聞いてみても口一文字のまま何も言わない。んー、何故か察してくれみたいな目線をされるが訳わかんないのでスルーする事にした。
「はい、ではまずこの国の成り立ちについて話します。この国は………」
我が主人の武勇伝(国の成り立ち)を熱意を込めて説明するが、聞いているのかいないのか分からない顔だ。
そして再再度、何があったのか聞いてみた(^^)
「きさまぁあああああ!!! 察しろぉおおお!!」
何故か発狂し始めた。
ヒューマンという種族は変な人ばかりなのかもしれない。
ということで引き続き案内を再開した。
「ここが娯楽施設ですね。中にはカラオケやゲームセンターなどのアミューズメント施設が盛り沢山。時期を見てカジノなどの公営ギャンブル施設も開発するそうです」
煌めくイルミネーションに色とりどりの面白そうな遊び場が目白押し。バレリアといつの間にか復活したアリアナが口を大きく開けて驚愕していた。
「か、カラオケとは何なのだ?」
「知らないんですか? 民謡や童謡などの伴奏だけを流して歌を歌う画期的な発明ですよ」
「ど、どんな仕組みなのだ?」
かくかくしかじか。
オリジナル植物『
半ば諦めた彼女達の脳は聞いているつもりだが実の所何も理解は出来なかった。
もしかしたらさっきやっぱり何かあったのかもしれない。あっ、睨まれた。
「ちょっとやってみますか?」
「良いのか!? 金は必要であろう?」
「今回はサービスしとくんで楽しんじゃったてください。ちなみにこの中は完全に音が遮断されるので経過時間には気をつけてくださいね」
一時間後。
「イバル氏、あれは人類の歴史に名を残す画期的な発明だ。一時間が五分ほどに感じるほどの楽しいひと時だった。是非、我が国に輸入させてくれ」
アリアナは鼻息荒くイバルの肩を掴み情熱的にその素晴らしさを語る。
「まったくだな。冒険の合間や恋人とのデート、多忙を極める冒険者のストレス発散にもなる。ヴァルトメア王には私からお願いをしよう」
二人とも満足したのか。
目をギラつかせて次の案内へとイバルを促した。
「次の案内場所は、ちょっと距離あるんで時空の中級精霊で二人を転移させますんで少々お待ちを」
「えっ……転移!? ちょまっ」
何か言ってたが二人を次の案内場所へと転移させた。
グニャ〜っと空間が捻じ曲げられ、二人にとって見たことのない風景へと変わる。
「はいココは樹国のメインストリート。商業施設が建ち並ぶ区画『
樹海の中とは思えない程に栄えている超弩級に派手で独創的な都市に二人は混乱したが、脳の整理が追いついたのかめちゃくちゃ興奮しているようだ。
「なんでこんなに面白き文明を短期間に築けるのだ。ヴァルトメア王は天才か…。我が国も冒険者の集う町として誇りに思っているがこれを見ると霞むなぁ」
「バレリア様ぁ、お買い物しましょうよぉ。もう我慢できない……」
「買い物か。よし、行くぞアリアナ!!」
「あっ、貨幣の換金はあちらでお願いしますね」
二人はいそいそと換金し、買えるだけの洋服や様々な商品を購入し、持ち込んだ
「ここは天国か……。もう一生ここに住みたい。もう帰りたくない。ここの住人になる」
「アリアナ……それには同感だが、帰ったら仕事が待っているぞ」
現実を知り一人泣くアリアナ。
「まぁワタシでもそう思いますよ。それに主人様の発想は次元を超えてますから。それでは次に案内するのはこの国の闇。人間牧場です。それでは転移しますね」
二人はこの後、凄惨な現場を目撃する事になる。未だに勇者召喚は行われ、優秀な子孫を約束されたこちらの世界の未来の英雄達との交配。人間牧場へと連れて行かれた二人は怒りと恐怖に脳が支配された。
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