第148話 グランドマスターズ
ジルバ城、大会議室。
四人のグランドマスターの内、三人が話し合いを行っている。
「のぉ、ノコウ。お前さんのアレはいいな。確かグエン侯爵から貰ったとかいう名刀。名は『
「なんじゃダキシ。アレはやらんぞ。あれほどの名刀はこの国でも最高峰に入る。儂がグエンの奴に色々と優遇してやったから貰った物だからな」
「はははは。優遇というか裏金じゃろ。俺はそれよりもダキシの『豪鬼の腕輪』の方が気になるがの。ありゃ誰から貰った?」
「コレか? スパイダム伯爵の事件があったじゃろ。アレの後始末、というか隠蔽だの。その見返りとして貰った物だわい」
グランドマスター三人。
ダキシ、バイシ、ノコウはワイワイと己の自慢話でマウントを取り合うのが日常である。
--------------------------------------------------------------
スパイダム伯爵。
彼の領地にて大量に行方不明者が出た。
合計四十五人もの女性が行方不明となったが、実はその犯人は伯爵家嫡男パムレイの仕業だった。伯爵家地下に監禁された女性達は腐敗し、半分白骨化した状態で見つかったという。
--------------------------------------------------------------
「よくあの事件が公にならず済んだものだと思うておったが、お前さんが絡んでおったか」
民が疑問に思っていたが、地下にあった遺体の事は伏せて、魔物に殺された事にした。
近くの森に遺体を捨てた事でゾンビ化し、光属性などの白魔法にて粉と化した。
「もう昔の事だの。しかし、民が死のうが支配者の血が受け継がれさえすれば国は存続する。我々グランドマスターも貴族達も民よりもその命は何倍も重い。それを守ったのだ。報酬として甘い蜜を貰っても悪くなかろ?」
「それもそうだな。儂らが国を動かし、守り、導いているからこそ下々の民が生きていられるのだ。たかが四十五人の命より我々や貴族の血の継承が重要だ」
「そういうことじゃい。我々はこれからも貴族連中の後盾としてこの国を支えていけばよいのだ」
こんな会話をずっとしているようだ。
非道、悪そのものであり、自らの都合を民の命を蔑ろにする事でこれまで解決したふりをしてきた。
これから悲惨な目に遭う彼等。
地獄の力で、この世に居ながら凄絶な苦痛を味わうことになるとは夢にも思わない。
「そう言えばバレリア王が樹国へ向かったが、国交を結ぶ手立ては何かあるのか?」
「知らん。だが恐らくは冒険者ギルドを強みにし交渉するのじゃろう。しかし、上手く行くかの?」
「まぁ大丈夫だろう。世界的に我らが冒険者ギルドは多大な影響力を持っておる。脅せば大抵の命令は出来る程にはな。それが通用しない国も確かにあるが、もう滅びたからな」
「あぁ帝国の事か。まぁあの国は冒険者を信用しとらんかったの。国としての力もかなり大きく正直邪魔な国だったわい」
「それも今や滅びた…か。滅ぼしたのは樹国…だな。バレリア王が余計な事をしなければ良いが」
「ふん。大帝国が滅びたのは本当に樹国のせいかどうかも怪しいものじゃ。新興国にそんな力があるとは思えんが。何をビビっておるのか」
「黙れバイシ。ビビってなどおらんわ。物事は慎重に検討を重ねなければ上手くはいかん」
「おまえさんらしいな。検討した所で状況は何も変わらんだろうに。それよりも今後の話をせんか。まずはあの領地の………………」
次の問題領地の解決、否、揉み消しと賄賂の話をし始める三人。
ニヤニヤとしながら己の事しか考えない三人。冒険国の未来、若者の将来はそっちのけ。
腐り切った人間は未来永劫変わらず、誰かの未来をしゃぶり尽くす事のみを考える。
そんな愚か者達の手の甲に何かの植物の芽が生え始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます