第115話 本戦、洗礼
本戦、
今代の百聖は確定し、この時点で他国でいう下級貴族程度の権力を得た事になる。
ある者は満足そうな顔で微笑み、ある者はもっと上の武格となるべく油断と達成感を消し、次の戦いに備えた。
本戦四日目。
生き残った100人が闘技場の待合室で待機する。
各部屋に設けられた小さめの魔導モニターには本戦、洗礼の組分けが告知された。
気になる樹国三柱は
11組目にアポリュオンVSガンズ・ローズ。
25組目にタルタロスVSエアロス・モビ。
44組目にマーニVSラテカ・ジョドウ。
一死合目から盛り上がりを見せる。
基本何でもありで、結果的に相手を死に追いやってもそれは相手が弱者だからという理由で片付けられる。
そしてここからはそれが当たり前であり、闘技者のレベルが上がれば上がるほど、起こり得る事故のようなもの。
隙が無くなれば、揺さぶり、隙を作る。
そうして出来たほんの僅かの勝機をものにした奴だけが勝てるのだ。
そうして勝者が笑い、敗者が涙を流す中、ついにアポリュオンの出番がやってきた。
アポリュオンの相手は『ガンズ・ローズ』。
魔導国出身でありながら、魔法師ではなく、珍しく騎士の家系で生まれ育った。
魔導国は爵位の代わりの序列が存在する。
上から、大賢者(国王)、大将(謎)、賢者(七人)、魔将(七人)、魔星、剣星、魔士、魔導騎士、これ以下は多いので割愛。
末端貴族である魔導騎士の序列である彼は、生まれてこの方、剣のみを生きる糧として死に物狂いで努力をしてきた。
魔導騎士でありながら、七人の魔将とも負けない戦いが出来るほどに強く、その為、他国の者には剣では負けないという強い自負があった。
修行の一貫として武王国の大会に殴り込みに来た前回は22位という成績。今回も内心では優勝こそ叶わない願いかもしれないが、胸を張れる成績を引っ提げて再び魔導国へ凱旋出来ると思っていた。
『魔剣ローズウィップ』
ローズ家が家を興す起源となった魔剣。
ダンジョンの宝箱に眠っていた〈超絶級〉の業物で、蛇腹剣の様にクネクネと持ち主の意思通りに伸びたり自在に動く。イバラの様に棘があり、棘にはインド象でも気絶する程の神経毒がある。
騎士二人が向かい合う。
白銀の闘鎧を纏いし闘神と生を剣のみに捧げてきた剣士の一騎討ち。
「あんたが対戦相手か。はん、余裕の態度だな。気にくわねぇ。俺は前回22位だ。強者の中の強者と言っても良い。あんたごとき、一撃で葬ってやる」
「ふははは。人の子よ、全力で来るがいい」
会場は二人の間に走る緊張感にゴクリと息を飲み込む。
死合開始。
まず動いたのはガンズ・ローズ。
身体強化スキルをフルスロットルで施し、白色の闘気を身に纏う。
まるで湯気の様に立ち昇り、次第に体の表面を覆うように収縮していく。
スキル『魔剣強化』を発動する。
発動後、魔剣ローズウィップの切れ味、毒の強さ、操作性がかなり強化される。
『敏捷強化』『身体能力超強化』『加速』
『超加速』『腕力強化』『高速思考』『剣術』
『剣聖』『覇気』を発動する。
大幅に強化された身体能力を高速思考により制御する。体感速度が非常に遅く感じる。
世界がスローになると、観客は驚きを隠せない表情である。
ガンズのあまりの速さ。
高速を超え、更に縦横無尽に音速を超える鞭の様で、しなやかさと強さを持つ魔剣がアポリュオンに襲いかかる。
勝利を確信するガンズ・ローズ。
避けられず毒の茨と刃の切れ味で全身は再起不能、致命傷は避けられないと。
様子見はしない全力の一撃。
「ふははは。愉快、本気の一撃には応えねばな。いくぞ」
一振りの刀を神気と闘気を練り合わせ創造する。日本刀の様な湾曲した全体形状。
美しさと妖しさを顕現させた様な太刀を居合の構えで静かに目を瞑る。
「冥壊流剣術・一刀・『
墨で塗られたかの様な漆黒の闘気を纏わせる。恐らく最大限に手加減された一撃。
鞘から抜刀されたが、それを誰も認識出来ない。
闘神の一撃は只人には認識することすら叶わないのか。
次の瞬間には魔剣ごとガンズ・ローズは細切れになり、自分がたった今死んだという現実すら理解出来ず肉片となった。
「ふははは。これすら避けられん様ではまだまだ未熟よ」
こう言われては浮かばれないが、痛み無く死を迎えられた事が唯一の救いだろう。
会場は静まり返る。
たった今起きた現実が衝撃的過ぎる。
「え? だって、え?」
「何が起きたんだ? ガンズの奴ぁ攻めてたんじゃないのか?」
「いや、俺はてっきりこのままガンズの魔剣で斬り殺されるのかと思ってたが」
「次の瞬間にはミンチだとは。な、何もんだアイツは」
「もしかしたら四天武、いや今代の武王はあの方かもしれねぇ。圧倒的だ。まさに闘神じゃねぇか」
「闘神……アポリュオン」
「こら馬鹿、様を付けろ。闘神アポリュオン様だ!!」
圧倒的な実力に
その後、会場では闘神コールが暫く鳴り響き、その中をアポリュオンは笑いながら去っていくのだった。
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