第114話 武王大会、本戦開始

 予選会を終え、本戦を迎えた。

注目は予選会で群を抜く程の成績を残した謎の男達三人とそれに次ぐ成績を残した各国の英雄。


 そして、四年前に開かれた前回の武王大会にて優秀な成績を残した者たち。


 四天武を始めとする獣人最強は、今大会も圧倒的な存在感を示す事が出来るのか。


 史上最強の武王は、今大会では真の本気を見せることになるのか。



          ✳︎


 本戦当日。


 総勢1000名の選ばれし本戦出場者が一つの闘技場リングに集う。


 開会式が始まると、会場は一気に熱を帯びていく。なにせ国民にとっては四年に一度の一大行事だ。期待度と興奮度は桁外れに違いない。


 開会式を終え、本戦の初戦が始まる。

説明は開会式で運営から行われた。


 初戦【ふるい】。

一つの闘技場リングで10名が同時に闘うサドンデスバトル。戦闘不可、戦意喪失、場外、反則行為(外部の仲間からの支援など)は失格となる。

 一名のみが次戦へと進むことができ、この初戦を突破すれば『百聖』となる事が出来る。


 弍回戦【洗礼あらい】。

一体一さしで闘い、勝利者50名が参回戦へと進むことができる。敗戦者はここでリタイアとなり、後は武格の序列を争う為、死合うのみ。


 参回戦【天賦てんぷ】。

50名が20名になるまで同じ闘技場リングで再度サドンデスを行う。武格の序列を争う為、敗戦者はとにかく死合うのみ。ここで敗戦した者を『天賦』とする。


 肆回戦【偉武いぶ】。

20名が残り、再度一対一さしで死合う。

単純に強い者だけが先に進め、敗戦者は死合うことはせず、大会運営委員会が総評に序列を決定する。ここで敗戦した者を『偉武』とする。

 

 伍回戦【十師じっし】。

選ばれし十人で総当たりで死合う。

最終的な勝敗数で序列を確定し、全勝した者が一位とする。序列が確定するまで何度でも闘う事とする。


 最終戦【玉座】。

1000人の頂点と現武王との一騎討ち。

勝った者だけが正義であり、王であり、最強である。

 

          ✳︎


 初戦【ふるい】が始まる。

マーニ、タルタロス、アポリュオンは別々の闘技場に上がる。


–––––マーニside


 闘技場リングに上がる。

開始の合図であるピーーッという甲高い笛の音が場内に響き渡る。


 マーニの周りには闘技者が囲う。


 「あんたは予選会ぶっちぎり一位だ。全員で潰させて貰うぜ。くっくくっ。悪く思うなよ!!」


 スキンヘッドの男がくつくつと笑いながら、数の暴力でマーニに襲い掛かろうとする。


 「おやおや、この数は恐ろしいですかー? 個の力など所詮数の暴力には勝てませんよねー? みなさんスキルと魔法の用意は出来てますかー? 一斉にかかりますよーっ!!」


 狐顔の胡散臭い男が号令を出すと、闘技場には様々な魔法が飛び、スキルを発動し、マーニへと攻撃する。


 土煙があがり、姿が見えなくなる。


 「もう終わりですか。あっけない。やはり闘いは頭でやるものです。ではみなさん今からは敵同士です。覚悟してくださいねー?」


 狐顔の男はマーニを倒したと確信する。


 土煙が風に吹かれて消えていく。

その場にはマーニの姿が無く、男はあるはずの死体を探す。


 「な、に? 奴はどこだ!?」


 周りをキョロキョロと見ながら、警戒心を上げる。


 「やはりいない。ふはは。驚かせやがって。魔法で木っ端微塵に消し飛ん「ここでありますデス」」

 

 背後に周ったマーニの空中横蹴りでカマイタチが発生する。9人が一斉に一瞬で切り刻まれ、バラバラになった。


 闘技場は汚物と血液で汚れ、かつて見たことがないほどに悲惨な舞台となった。


          ✳︎


 同時刻。

闘技場リングにはタルタロスが立っている。予選ぶっちぎりトップだが、子供のような見た目に闘技者はあなどり、不正を働いたのではないかと疑った。


 「坊や、ここは闘技場だ。子供は家に帰ってママのおっぱいでもしゃぶってな」


 「ひゃひゃひゃ。その通りだな。ぷっくくくっ。ちんちくりんは今すぐにお家に帰れ。痛い目に遭う前になー」


 観客を含め、小さな男の子に嘲笑を浮かべ、完全に舐め切っている。


 「失礼っす。雑魚にそんな事言われる筋合いは無いっす。弱い犬ほどよく吠えるっすよ」


 やる気の無い眠そうな顔で欠伸を噛み殺す。


 「なんだと!? おいっ!! 殺っちまうぞ。囲え!! 目に物見せてやるっ!!!」


 男達は全員がスキルを使い、魔法を放つ。


 「おらおらおらおら!!」「これで終わりだ!!!」「舐め腐りやがって死ねや!!」「ガキとは言え許さねぇ!!」「俺のスキルで切り刻んでやるっ!!」


 各々が自身最高の攻撃をする。


 物凄い硬いモノにぶつかる音が響く。

山に剣で切りつけようが、火の玉をぶつけようが何も意味がない様に、タルタロスは無抵抗で全ての攻撃を受け切る。


 「これだけっすか? やっぱり雑魚っすね。じゃあ次はこちらから行くっす」


 異空庫からハルバートを取り出す。

ブンブンと振り回すとあり得ない程の速度により轟轟と空気が押しつぶされる音が聞こえる。


 「なんだ、あのデケェハルバートは…」


 目を見開き信じられない物を見たかの様な顔でタルたんを見やる。


 小さな体躯からは想像できないパワー。

一歩歩く度に、地響きが鳴り響く。


 「一瞬で終わらすっす」


 タルたんの右手はバキバキバキバキっと筋肉が軋む音がすると、溜めた力を解放する。


 刹那。


 瞬きの速度より遥かに速い振り抜き。

ハルバートが人々の認知力より遥かに速く振り抜かれ、大気を圧し潰す。


 轟っ。


 大型トラックに轢かれる、否、それが軽傷だと思うほどの衝撃に、タルたんを除く全ての者が一瞬で圧死する。


 「終わったっす。もう眠いっす。ふわっーーくっ」


 欠伸の音なのか、ファックと言ったのかわからない声を出しながら、勝利の宣言後、闘技場リングを降りて行った。


          ✳︎


 同時刻。


 アポリュオンの周りには死屍累々の光景が見えた。


 アポリュオンの身体からは破壊のオーラが沸き立つ。

それは陽炎の様に全身から立ち昇る。


 触れた者は等しく全てが壊され、命すらも壊し尽くされた。


 「弱き者は我に触れるな。死にたくなければ降参せよ」


 あまりに理不尽な力。

人々が勝てる道理はなく、次々と武器を捨て降参する闘技者。


 圧倒的な力はそむく事すら許されない。


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