第113話 大会予選、結果
大会予選の参加者は世界中から集まり、数えきれない程の数となった。
その中でも特筆すべきは、三名。
一人目は、砂漠国『サンドハザード王国』出身の男。名を『キリア・ビビアン』。
戦闘力五万、固有のスキルを持ち、武術の熟練さも高レベルである。
二人目は、北厳国『フリージド連邦』出身の女。
名を『ナナ・グラント』。
戦闘力六万、氷属性魔法が得意で、魔力量は予選参加者の中でも群を抜いている。
三人目は、火山国『ブラックスミス王国』出身の男。ドワーフであり、自身で鍛えあげた武器を使う。魔剣ならぬ魔槌で叩いた人や物を爆発させる。
戦闘力六万、火炎属性魔法が得意で、ユニーク武器を使用する。
本戦への出場がその場で決まるレベルの合格者は街の宿屋に泊した。
✳︎
タルたん、リュオン、マーニはそれぞれ宿屋に泊まり、本戦の開始を待つ。
その間、街を巡ると、やはり元魔物な三柱なだけあって興味深そうに出店を見ていた。
「ふははは。中々面白いではないか。それにこの匂い、肉を焼いているな。美味そうだ。どれ一つ食ってみるか」
武国銀貨一枚を店主へと渡す。
焼きたての魔牛のロースを口へと運ぶ。
「美味い!! この肉汁、弾ける歯応え、調味料も程よいアクセントを効かせている。全てが調和していて最高であるな」
タルたんが涎を垂らして見ているようだ。
仲間になりたそうにこちらを見ている。
「リュオン、くれっす。くれなきゃ暴れるっす。この街滅ぼすっす」
目が座るタルたん。
「ま、待てタルたん!! 落ち着け、そうだ、か、買えばよかろう!!」
顔中に冷や汗をかくリュオン。
イケメンが台無しになっている。
「お金ないっす。道中で使いすぎたっす」
「いや自業自得っ!!?」
「そんなことないっす。美味そうな物が有るのが悪いっす。良いから早くその肉くれっす。くれなきゃ元のサイズに戻るっす」
「それは辞めてくれ!! わか、わかったから!! 大人しくしていてくれっ!!」
肉を渡すとモグモグと口に頬張る。
超絶笑顔で、肉を味わうタルたんを見て、さっきからドン引きしているマーニ。
「本当食い意地がすごいでありますデス」
「見てみよこの幸せそうな顔を。これは我の肉なのに…」
完食したタルたんは、我に戻ったのか、満足そうな声でリュオンに感謝した。
「リュオン、ありがとうっす。これで優勝間違いなしっす。二人にも絶対負けないっす」
「ふははは。闘いとなれば我が勝つわ!! しかし、全力で暴れる訳にはいかん。二人も心しておけよ」
ヴァルトメアからの注意事項。
「あまり本気は出さないでね。武王以外は雑魚だから。あとお互い絶対に本気は出さないでね。それにこの間の件も忘れてないから。今度やったら……わかるよね?」
口は笑っているが、目が笑っていないヴァルトメア。
思い出したリュオンは恐怖のあまり身震いした。
「二人とも絶対本気は出さないようにな。主人様に叱られたくなくば」
「そんな事するのはマルコやサマエル、ルシファーくらいっす。僕は優秀っす。主人様のご期待に応えるっす」
「いやお前も大概…「何か言ったっすか?」…何でもない」
その後、三柱は街を歩き、ゆっくり観光した。時折、タルたんの目が座る以外には大した問題はなく、予選結果発表まで楽しく過ごしたのだった。
予選結果。
大会運営により、魔導モニターにて予選通過者が発表され、順位にて本戦出場が広報された。
一位、アポリュオン
男性、戦闘力『計測不可』
一位、タルタロス
男性、戦闘力『計測不可』
一位、マーニ
女性、戦闘力『計測不可』
四位、ナナ・グラント
女性、戦闘力『61,250』
・
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魔導モニターを見ていた地元民、観光客、闘技者達は目玉が飛び出る程に驚愕する。
過去に一度だけ見たことがある。
『計測不可』の文字。
今代の武王ヤハウのみが出した史上初の結果。
最強のみが許される計測結果のはず。
それが三人もいる。
この現実に脳の処理が追いつかず、目が開き、口が開きフリーズする。
およそ人がして良い顔ではない。
「な、なぁ」
「…………」
「計測不可ってなんだっけ。てか計測ってなんだっけ」
「おま、そりゃ計測するってことよ。不可って可能じゃねぇってことよ」
「あ、あほか。何言ってんのか自分でも分かってねぇだろ! そういうことじゃねぇ。これって武王様の、あの圧倒的にお強い武王様と同じじゃねぇか!!!」
「おい…周りを見てみろ」
言われて周りを確認する獣人の男。
「みんな面食らってやがる。気持ちは同じだ。俺は絶対に観にくる。仕事なんてしねぇ!! 今回の大会は過去最高になるのは間違いねぇ!!」
「ちげぇねえ!! 俺もだっ!!」
現実に戻ってきた周囲の人々も目には興奮の色が表れ、熱狂的な人は叫び、狂った。
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次回から本戦、というか新手の侵略を開始です。
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