第104話 絶滅カウントダウン-2

 帝国はこれで残された無事な場所は南と中心部のみとなった。南の防衛を任せられているモニカは新しく聖将となった女だ。


 二つ名は『麒麟児』。

聖将となったが、まだ成人にもなっていないが、帝都にある騎士学校を飛び級で卒業した紛れもない天才だった。性格は真面目。

赤茶色の癖っ毛にメガネをしている。

魔法、剣術共に優秀であり、歴代の主席卒業生の中でもトップクラスの成績を叩き出した。

そんなモニカは運悪く、この防衛任務が聖将となって初めての任務だった。


 「あ、あなた方は私が守りまつっ。ひゃっ。噛んじゃった」


 緊張しているのか、国民と帝国兵へ向けた言葉を噛み散らかした。


 「モニカ様、我々が必ず蛮族を倒して見せます。あなたは南の最後の砦。他の聖将の方々も蛮族なんぞ叩き潰してますよきっと」


 ニカッとモニカに向けて白い歯を見せる帝国兵の男。


 (俺ってばカッコいい!! これでモニカ様も俺の事を好きになるに決まってる。そうなれば聖将の夫として一生食いっぱぐれねぇな)


 「あ、ありがとうございます。で、ですが私も聖将の端くれ。守ってみせます!! 帝都も国民も」


 「で、でも!! あなたが死んだら国民が悲しみますよ!! だから我々がお守りします」


 (聖将とは言え、なったばかりの歳下だろ? こんな幼い子に何が出来るんだ。お前は俺の女になるんだよ)


 しょうもないやり取りをしている間に、樹国の刺客がやって来た。


 無限の魔力を放ちながら。



          ✳︎


 エンデ。

エルフ、ダークエルフの元エルフィアの国民達は分体三号によって城へ召集されていた。


 「はい、ちゅーもくぅ〜。今から帝国へ君たちの仲間を取り戻しに行きまーす。ついでに恨みを晴らしたい人はそのつもりで来てくださいね。今尚、帝国のお馬鹿さん達の慰め者になっている子達を救いにいくよ」


 全員が頷き、決意がこもった眼差しで分体を見つめる。


 分かっている。

今も仲間がしたくもない事を強制されている事実を暴力でしか解決出来ない虚しさを。


 分かっている。

耐えられない日常に仲間の心が壊れていることも。


 分かっている。

これは過去に助けられなかった自分達の自己満足だということも。


 でも助けたい。

せめて自分達の手で。


 「じゃあ行くよ。集団転移」


          ✳︎


 帝都の南門の前へと転移した。

かなりの数の帝国兵が守っている。


 「主人様、の分体様。我々が奴等を討ち滅ぼします。主人様とユフィ様は帝都内へと転移してください」


 「ん。分かったよ。彼等の中にはエルフを奴隷にしている者もいるだろうねぇ。やっちゃえニッサ、じゃなくてやっちゃえエルフちゃん」


 突然思い出した記憶を消し飛ばし、帝都内へと転移する。


 「行くわよみんな!! 仲間の仇を討つわよ!!」


 「おぉー!!」×数千人


 帝国兵へと弓を放つ。

矢には精霊の力を込め、それぞれの属性に応じた強化を施した。


 次々と魔導スーツごと射抜かれる帝国兵。

雑魚兵はなす術もなくやられる。


 しかし隊長格は自身の剣へ魔力を纏い、飛んでくる矢を払い打ち落とす。


 「へぇ。エルフの女がこんなにも。綺麗なお顔ばかり。是非奴隷になって貰わないとな」


 「へへへ。今夜は素敵な夜になりそうだ。何人相手にしてやろうか。順番に気持ちよくしてあげまちゅからねぇ〜」


 「これこれ油断は大敵ですよ。でも確かに自ら奴隷にここまで遥々やって来たんですから。丁重に扱わないといけないですねぇ」


 下心万歳。

ニヤニヤと下品な顔をした隊長達が剣を片手にもう捕らえた後の事を考えている。


 「汚い目で見ないでくれる? 私達は仲間を助けに来たの。あんた達の相手をしている暇はないわ」


 汚物を見るかの様な目で隊長たちを見るエルフ達。


 「強気なエルフが少しずつ従順になっていくのが最高なんだよなぁ。あいつらみたいになぁ!!」


 その言葉でエルフがキレた。


 「殺るわよみんな。あの地獄の日々を思い出して。ムート様の戦闘の教えを」


 魔力を高め、精霊と同化する。

下級精霊といえど、自然の力の一部。

超常的な存在と己をミックスし、限界を超える。


 その後の展開は凄絶なものだった。

己よりも格下のはずのエルフに。

数も自分達の方が十倍ほど多い。

やられるはずがない。

今回も奴隷にするはずだったのに。


 「わ、悪かった。ぼうやめてぐれ。だのぶがらっ!」


 「過去は消えない。記憶も残っている。お前たちが犯した罪の数々を思い出し、永劫の苦しみを味わうといい」


 その言葉と共に手のひらの上には植物の種子が置かれていた。


 「これは死んで尚、お前たちを苦しませる為の花だ。最期の手向けにこの花を贈ろう」


 分体から予め渡されていた種子。

地面に撒くとみるみると成長し、艶やかな黒色のユリが咲き乱れる。


 黒い百合の花言葉は復讐と呪い。

恨みの数だけ強力な呪いの花が咲く。


 オリジナル植物

呪花魂喰じゅかたましいくらう黒百合』

・小さな小さな黒い百合は恨みと復讐心を糧に大きくなり数を増やす。復讐の対象者の魂に己の種子を植え付ける。死後、魂は現世に囚われ、永劫の時を激痛と渇きで苦しませる。


 魂となった帝国兵達。

魂が見える精霊達の目には映し出されているかもしれない。


 悲痛な顔で叫んでいる帝国兵達が。


 「さぁ行くわよ。仲間を取り戻しに!!」


          ✳︎


 帝国首都南。


 「わお。北も東西も凄いことになってるねユフィちゃん」


 「ですね旦那様。エルフとダークエルフの仲間達が巻き込まれて居なければ良いのですが」


 「大丈夫だよ。あのお馬鹿さん達には厳しく言いつけてあるからねぇ。エルフたちには神力で結界を張るようにね。かなり力も抑えた様だし、何より俺くんの気配感知が無事だと言ってるからね」


 念の為に幹部達には人間を含む奴隷達は守る様に言ってあり、皆んな言いつけを守ったようだ。


 「またやらかしてたら重罰だったけどね。けどあらまぁ、植物ちゃん達が…罰だねぇ」


 マルコとサマエルの未来が可哀想になった瞬間だった。


 「さて、最後の帝国十二聖将。楽しみだね」


 「旦那様、私がやりますね」


 武器である棍を取り出し、いよいよ最後の帝国十二聖将と死合う。



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どうも作者のバサラです。

長くなってしまってる感はどうも否めない。

そして前話で体調気をつけてくださいと言った自身がコロナかもしれないという。


パワプロやろうとしたのに、体調崩すとは

くっ!!ダイジョーブ博士が居れば。












そしたら魔改造してもらってプロ野球選手になれたかもしれないのにっ!!


体調にはくれぐれもお気をつけください。

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