第96話 使徒襲来!!

 私は土下座をした。

これも全ては野望の為、仕方なくだ。

永遠の命、それが神様になる為の唯一の手段。


 『死生樹アダムの実』。

その果実を食べると誰でも健康な体が手に入り、永遠の命を身に宿すという。


 それがこの樹海に存在するというのは耳にした事があった。是非ともその果実を食したい。

この方に媚びへつらい、神となるのよ。


 神となればこんな厄介な存在とはおさらば。

あとは神様らしく悠々自適に世界を旅するのよ。


 そんな思惑を知ってか知らずか、目の前の男はニヤッと笑った。


 「使徒ねぇ。でももう君、使徒じゃないの。それも俺くんの気に入らない神の」


 「確かに私はこの世界に転移した時に謎の光に加護やスキルを与えられました。使徒になった覚えはありませんが。ですから、私を貴方様の使徒にしてください。お願いします」


 「死生樹アダムの実。知っているかい?」


 不味い。まさか考えが読まれている!?

知らない事にしなければ。


 「いえ、存じ上げてはおりません」


 またもやニヤッとする男。

神様とはいえこちらの考えが読めるものなの?


 「そっかぁ。俺くんの配下には全員食べさせているんだよね。それに神気を獲得する為の果実も存在している。うちの幹部連中は最強の魔物だった。それが今や神さ。神気を獲得し、進化の行き着く所、それが神って訳。俺くんはちょい訳ありで神気を獲得していたんだけどね。その話はまぁいいや。で、そっちの男は?使徒になりたい?」


 さとる。

答えはイエスよ!こんなチャンス絶対見逃してはいけない。絶対にぜーったいに!


 「ふん。この俺がキサマなんぞの使徒になる訳がないだろう。この悪逆非道の魔王め!!」


 はいでた。空気読めさとるぅううう!!

お前が頑固なのは昔から知ってるけど、今はちょっと空気読めや!!

てか神様になれるかもしれないチャンスをどうしてわからないんだこの脳みそツルツル男っ!!


 「さとるくんもなりたいよね??なりたいって言ってたよね?なりたいって言いなさい?」


 これだけ圧をかけたら流石に分かるわよね?

どんな馬鹿でも分かるわよね?


 「何を言っているんだネオン。魔王の手先になんてなれないだろう。我が主君は皇帝のみ。君こそ気がおかしいのではないか?」


 空気読め。

お前ごときが主君を語るな。

あんな皇帝なんてただの人間だろうが。

目の前にいるのは魔王でもあり、神でもあるんだぞ。お前もわかるだろうが力の差が。


 「そっかぁ。なら二人とも消すしかないね」


 やばいやばいやばいやばい。


 「私だけでも使徒にさせては貰えないでしょうか?」


 「だって君、他の神の使徒になってるじゃないの。無理だもん。使徒を辞めるの」


 えぇええええ。

無理なの?強制契約なのに?

解約できない系の契約?

ヤクザも今時やらないでしょっ!!


 「何とかならないのでしょうか」


 「まぁ一つだけ方法はあるよ」


 ゴクンっと唾が喉を通り抜ける。

なんだってするわ。神になれるなら。


 「それは死ぬこと。死んだ後に蘇らせることかな。俺くんになら出来るよ」


 「で、ではお願いします。死なんて恐れてなんていません!」


 「ただし、それには条件がある」


 「何でもやります!!条件とはなんでしょうか??」


 「俺くんの使徒に勝つこと。そうすれば君は俺くんの使徒にしてあげるよ」


 「そんなことで。言っておきますが、私は強いですよ。貴方様のお相手には到底なれないほど弱いとは思いますが、人間の中では最強クラスと自負しております」


 人間相手なら余裕ね。

これで神へのステップアップも希望が見えてくるわ。


 「くっくくっ。最強ね。確かにそこの男よりは君の方が強いねぇ」


 さとるくんと比べられるなんて心外ね。

でも神様からしたら私達なんて大差ないのかもしれないわね。


 「なんだと!?俺も帝国十二聖将の一人だ!!ネオンなんかには負けない!!それに貴様も我がスキルの錆となれ!!」


 はっ?

さとるのくせに生意気ね。

風の太刀で切るだけの無能が。


 「ちょっと君いい加減にうるさいね。もう君いいや。死んでくれるかい?」


 空気が一瞬で禍々しいものに変貌した。

重く、苦しい、生きていたくないと思えるほどの圧力を感じた。


 さとるの足元から植物が生えてくる。

それは体を伝い、雁字搦めにすると同時に体の中へと入っていく。

さとるの体には無数のブツブツができ、止めどなく血液が溢れてくる。


 「ぐっががっく!や、べ、ろ、やべ、で、ぐだざび、じ、じ、ぬぬ、死にだくだい」


 「くっふふ。哀れだねぇ。さっきからうるさかったし自業自得?俺くん神様だからね。仏様じゃないから。我慢なんてしないからさ。死ぬのもまた一興よ。」


 戦慄。

馬鹿で空気も読めないとはいえ、帝国最強クラスの一人よ?

こんな簡単に殺せるものなの?

指ひとつすら動かしていないのに。


 「よし。じゃあ使徒VS使徒といきますか。おいで、ユフィちゃん」


 時空が歪むと、ダークエルフの女がやって来た。


 「会話は念話で聞いていたね?じゃあユフィちゃんよろしくね」


 「どうも、愛しの我が主人様の使徒、ユーフィアです。どうせ今日貴女は死ぬから覚えなくてもいいですよ?」


 かっちーん。

帝国十二聖将の力を軽んじてるわねこの小娘。

ころーす。絶対殺す。


 「よ、よろしくねユーフィアちゃん。私も貴方と同じ神様の使徒になるわ。長い付き合いになると思うけど仲良くしてくれたら嬉しいわ」


 こ、ここは大人の対応をするわ。

私だって淑女なの。これくらい出来るわね。


 「えー?なる訳ないじゃない。今日始末するから。愛しのヴァル様の女は私よ。正妻は私なの。私しかいないのよ。ねー?ヴァルさま?」


 ユーフィアの目がドス黒くなっていく。

完全なる圧倒的メンヘラ感。


 「そ、そうだね。ユフィちゃんは可愛いから俺くんの奥さんにしてあげる。さ、さぁ戦って戦って!」


 やるしかない。

たかがダークエルフの女一人。

苦戦もせずに勝てるだろう。













そう思っていた。


















 ボロボロにされ、植物によって宙に吊るされているネオンの姿があった。顔の形が変わるほどの鉄棍の跡。


 使徒の力を最大限に発揮したヴァルトメアの使徒は静かに微笑み、トロンとした目で愛する主人を見ていたという。




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どうも作者です。

皆様、いつも読んでくださりありがとうございます♪

ユーフィアは結構好きなキャラで、武器は金属の棍です。

ムートくんが認めるほどの天才であり、使徒ゆえにヴァルトメアの植物の権能を少しだけ使用することが出来ます。

神以外ならかなり強い部類に入りますね。


 少しずつこういった設定も小出しにします。

これからもよろしくお願いします!



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