第85話 VSアナンタ-1
私の名前は『アナンタ』という。
生まれた時は小さな小さな蛇だった。
いつの間にかこの世界に《《転生》していた。
前世の事は殆ど覚えていない。
前世とは異なる理で動いているこの世界。
魔法やスキルが当たり前に使えて、神なんて超常的な存在もいる。
小さな蛇だった私が何故、『蛇神』なんて存在になったのか。
まだこの世界が暗い暗い渾沌の海だった時代。魔法を使用する為の魔力、そのもっと小さなエネルギー『マナ』が生まれたばかりだった時、私は『マナ』の特異集合体として生を受けた。
生まれた時に見えた黒い光。
今思えば、アレがあの方だったのだろう。
純粋な黒。
その黒き光がパァーッと拡がっていった。
それが宇宙の始まり。
宇宙が始まった後、小さな小さな蛇の形となった私は、宇宙に存在するマナを少しずつ吸収し、進化をしていった。
宇宙を漂っていた私は、一つの星を見つけた。それがこの星『フラワーデリア』。
この頃にはもう多種多様な生物が存在していた。植物が生い茂り、溢れんばかりの生命力を感じさせるこの美しき星に定住しようと考えた。
魔物。
宇宙の始まりから存在する私よりも強き者達。
まるで神々がこの星を特別に扱っている様に思える程に、魔物は強かった。
魔物の世界は弱肉強食が掟であり、強き者は弱き者を食べ、どんどん強くなっていった。
強き者の強さは次第に加速していくように強くなっていく。
私はこの星の掟に則り、自身を強化していった。魔物も人間も喰らい、進化を果たし、龍となり、神となった。私ほどの特別な存在はいない。
本能の赴くまま破壊者となっても、誰も私を止められない。日々魔物を壊し、人を壊した。
世界を壊そうと思った時、黒き光が再び私の前にやって来た。
その光を見つめた私はなんだが眠くなってしまい、永き眠りについてしまった。
永い永い眠り、どれだけ時が経過したのか分からない程の眠りから漸く目覚めたが、世界は変わっていた。
世界を支配しているのは相変わらず魔物だったが、人間が『国』という集合体を形成し、魔物の力に抗っていた。
何と儚くて美しいのだろう。
弱き存在が強き存在へ生存競争に勝つ為に頑張っている。
平凡な破壊に飽きてしまった私はこれを護り、ゆくゆくは自分の手で壊そうと思った。
弱き存在が希望を持ち明日を生きていく。
それが味方である筈の私に壊される。
なんて最高の絶望だろう。
私はその目的の為に、竜人を洗脳し、人族の国で次々と罪を犯させ、迫害に遭う様にけしかけた。
人族から迫害にあった竜人達は、私の予想通りに人族に対し憎しみを持ち、対抗する様に自分達の国を作った。
そしてその中から最も愚かで邪悪な者を竜王とした。
ある時、今代の竜王が他国へ侵略しようと私の同胞である暴龍達を解放した。彼らは確かに強いが、私の計画には邪魔である。私は彼らを始末する為に、樹国を利用しようと思った。
三柱に樹国へ攻めさせ、同士討ちを狙っている。
全て上手く行く。
そう思っていた自分が最も愚かであった。
暴龍に指示を出し、住処に戻ろうとした時、絶望が不気味な笑顔でこちらを見ていた。
「いるのは分かっていますよ。早く出てきなさい。」
「ははは。まぁ得意気になっている所悪いけどワザとだからね。もう隠れる必要もなくなっちゃったし。」
「あなたはどなたですか?」
「俺?俺くんは君らの敵だよ。って言っても本体じゃないけどね。君らには本体は勿体ない訳。格下だからね。」
本体?
何を言っているのでしょう。とりあえずこの男を殺しますか。
宇宙属性魔法を使って、核融合を起こす。超超超高温であり被爆すればどんな生物も死に至る。
それを限定的な範囲に留め、対象のみを消滅させる。魔法だからなせる技。
「宇宙属性第十九位階魔法
『
奴の体が消滅するのが決定づけられた。
と思った。
「そんなもの俺くんには効かないよ。核反応ってつまり最終的にはエネルギーでしょ?だったら俺くんの魔法で無に帰せばいい。」
何を言っているのか分からなかった。
少しの間、ほんの少し、瞬き程の時間で私の魔法は消えてしまった。
「どう?俺くんの魔法。すごいでしょ?得意なんだよね、冥闇属性。」
私は今の現象が信じられず、もう一度魔法を放ったが…。
「何度やっても無駄だよぉ。君と俺くんとではそもそも闘いにもならないのよ。君もさっきの蛇二匹もこの国の連中もみーんな俺くんが有効活用してあげるからね♪安心して死ぬと良いよ。」
すぐさまエネルギーが消失した。
冥闇属性魔法…この魔法がこうも厄介だとは。
私の次元を超えた
私を生み出したあの方と同じくらいか、いやそれ以上。
「いえまだまだ。神をも殺す毒を味わってください。神毒属性第十八位階魔法『久遠八苦の神毒』。」
あらゆる苦しみを味わわせる。
それは神といえど耐えられるものではない。
過去に私を退治しようとした神はこの毒に耐えきれず体が変色し、あまりの苦痛に命を断つことを選んだ。
「可哀想だからわざと喰らってあげようか。どんな魔法か楽しみだね。」
魔法が分体に効果を及ぼす。
あらゆる苦しみが分体を襲う。死にたくなる程の痛みは勿論、幻覚、病魔、憎しみや恨みといった負の感情が揺り動かされ、気がおかしくなる。
ふふっ。愚かな者だ。私と闘うからこうなるのだ。惨めに狂って死んでください。
「ははは。これは心地いいね。今後のオリジナル植物の参考になりそうだ。」
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