第83話 贖罪と復讐の羊
竜の国の人口は決して多くはない。
繁殖を武器とする人族からして見ればだが。
長寿種族にとっては少数は珍しくない。
逆に、地球に住む哺乳類もまた本来であればもっと長く生きる事が出来たが、恐竜に殺されて食われるならば長寿になっても意味はなく、短命で繁殖する事に特化したという。
彼らは繁殖ではなく、長寿で種族繁栄する事を選んだ訳だった。
それが悪手であるとこの時理解する事になるが。
「殺せ!!」「生かして返すな!」「もっと強い魔法を使え!!」「アナンタ様に贄を捧げるのだ!!」「俺の一撃で殺してやる!」「早くやっつけてよ男達!」「野蛮人を痛めつけてよ!」
竜人達は老若男女がアナンタ、竜王により洗脳されている。だが、竜人達もまたそれを良しとし、思考にモヤをかけた。
「救えぬゴミクズども。」
龍王であるエーデルムートはとっておきの魔法を放つ。
「ゴミにはお似合いの魔法を贈ろう。神の贄となれ。」
複合魔法、魔法名、贖罪と復讐の羊
幻想魔法と冥闇魔法の複合魔法。
効果は、最も大切な人を自分が殺し、死霊となったその人に殺される夢現を死に絶えるまで強制的に延々と体験させられる。
その苦痛や恐怖、後悔や無情を何十倍に濃縮する魔法。精神は擦り切れ、脳は焼き切れる。
超広範囲に展開される魔法に、竜人達は絶句した。こんな巨大で強大で複雑な魔法陣は見た事がない。
ブルブルと体が震える。
圧倒的な魔力、魔法陣から発せられる魔力圧に本能が警鐘を鳴らす。
尻餅をつく竜と人の半端者達。
「あの龍人がやりやがったのか。だから龍人なんぞ…。」
先ほど腕を吹き飛ばされた竜人の男が言葉を発した。
その言葉を最後に、悪夢という夢現の世界へと旅立った。これから彼らは体感時間が無限に感じるほどの苦痛を味わうだろう。
「ゲームを始めよう。貴様らの崇拝する竜王とその付属品が俺を殺せたならこの魔法は解除される。そんな上手くは行かないがな。せいぜい少ない余生を正しく生きろ。」
死へのカウントダウンが宣言された。
絶望感漂う。残された道は守護龍様が龍人を討伐してくれることを祈るのみ。
「守護龍様どうか!」「お願いします守護龍様!」「俺だけでも助けてください!」「いや私とこの子だけでも助けて!!」「守護龍様お願いだ!奴を殺してくれ!」
ただ一つの希望に縋りつこうとする。
だが彼らには信じられない光景が目に映る。
そこには見た事もない巨大な樹に寄生された守護龍アナンタの姿があった。
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「ムートくん楽しんでたからつい我慢出来なくてね。本当はやりたくなかったんだけど、様子見がてら…やっちゃった。」
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