第79話 植物って分裂できるんだ

 さてさて、俺くんです。

まずね、竜の国の大ボスくんと武王国の大ボスくんを同時に相手にしないといけないんだ。


 どうすればいいか。

それはね、コピーを作ればいいのさ。

植物ってのは分裂組織ってのがあるのよ。

まぁ高度な植物のみにあるらしいんだけどさ。


 俺くんほどになると髪の毛一本からコピーを作り出す事が出来るのさ。

勿論、スキルあってのクオリティだけどね。


 プツンと髪を一本抜くと、神気を込める。


 『万物創生』、『創作の大神』の二つのスキルを発動する。


『万物創生』

・自身の力が及ぶ範囲の物なら何でも作れ、生命すら作り出せる神の力。

欠点は、大幅に神気を消費すること。

それは自身という存在から遠い程、消費量は大きくなる。


『創作の大神』

・創作物における質を最高まで高めてくれる。

創作の神を超え、全ての芸術の神のプライドをへし折るほど。


 髪の毛はみるみるうちにヴァルトメア本人と全く同じ容姿に変わっていく。


 「うんうん。上出来だね。俺くんの力も共有して使えるみたいだから戦闘も完璧にこなしてくれるでしょう。……解除。」


 解除と唱えるとコピーくんは崩れて土になった。植物の行き着く先が土だからだろう。


 「この土で野菜育てたらめっちゃ美味いんじゃね?栄養たっぷりでしょ。…じゃなかった。これで攻め込む準備は万全だね。俺くんの世界にとって無用な国を潰しに行きますか。」


 


           ✳︎



 場面変わり少し時間が遡る。


 竜の国『アナンタ』。


 竜王である『ヴァースキ』は、不思議な形をした杖を持って、国の重要区域のとある場所に来ていた。


 龍の魂と体が封印されている神殿。

『龍ノ魂蔵』と呼ばれる。


 「眠っておられる荒ぶる龍の神を解放する時が来た。アナンタ様には解放せぬ様にと言われていたが仕方ない。これも我々の覇道を歩む為だ。」


 「竜王様、我々の悲願である世界泰平の為です。そして、亜人種を全ての国が受け入れる。それ程の大義の為なら、暴力による支配も守護龍様はきっとお赦しくださいます。」


 「我々亜人種がどれだけ差別され迫害されたかはアナンタ様も深く理解して下さるだろう。この『封印神の杖』を使い、暴龍様達を解き放つ。」


 暴龍。

それは、この世界に混沌を齎さんと各地で暴れ回っていた。討伐の為、天界より降りてきた下級神を喰い殺し、自身が神となった荒ぶる龍。

 上級神である『封印神』によって、神杖に封印された三柱の龍。


 「ではやるぞ。『暴龍封印解除儀式』。

我が呼び声に応えよ。竜王ヴァースキの名の下に解放せよ。」


 神殿内部から目を開けるのが不可能な程の輝きが放たれる。

龍の魂蔵と封印の杖、そして竜王。

この三つの存在が封印解除の必須条件である。

魂は魂蔵に、体は杖に封印し、鍵は竜王の受け継がれる血であった。


 輝きがおさまると三体の人型の龍人が立っていた。


 「お前達が我らを解放したのか。」


 「その通りでございます。『ヒュドラ』様、『ダハーカ』様、『ヨルムンガンド』様。」


 「我が名はヒュドラ。そして、それは忌々しい封印神の力を持つ杖ね。こんな古臭い杖と神殿に永い間、我らを封印するなんて失礼しちゃうわね。次に会ったら毒殺必至ね。」


 「ヒュドラ、その汚ねぇ毒をこっちに飛ばすな。…俺の名はダハーカ。暴れる事なら任せろ。解放してくれた恩に一度だけ願いを叶えてやろう。願いはなんだ?」


 ヴァースキへと鋭い眼光で睨みつける。


 「ダハーカ様、我らはこの世界を支配、いや、統一し天下泰平を叶えたいのです。」


 「んなもん簡単だろうが。俺達に任せろ。人なんぞ絶滅させるか、奴隷にしてやるよ。」


 「人…が障害ではないのです。同じ亜人種である武王国の獣人、そして、樹国なる新興国の奴らが最大の障害なのです。」


 「ふぇっふぇっ。このワッチがその様な下等な存在なんぞ締め殺してやるわい。このヨルムンガンドがな。」


 「なんと頼もしい。」


 「そういえばアナンタの馬鹿はどこにいる?アイツも一緒なら直ぐにでも世界を滅ぼせるだろうが。」


 「アナンタ様は我が国にて守護龍となっていただいております。」


 「アイツが守護龍?ガラじゃねぇな。一番、人を殺してんじゃねぇか?何か目的があるのか?わからねーな。」


 「なんでも良いじゃないの。アナンタを連れて、まずは樹国を滅ぼしに行くわよ。」


 「くはは。樹国とやらが可哀想だな。立ち上げたばかりの国が直ぐに滅ぼされる羽目になるなんてな。精々苦しめて殺してやろう。」


 「ふぇっふぇ。ワッチがまずは行こう。お前達はアナンタを連れて後から来い。」


 「まぁ良い。貸し一つだぞ。先に楽しむか後からじっくり楽しむかの違いだからな。少しは残しておけよ。」


 「ふぇっふぇ。さっさとアナンタを連れて早く来るんだな。」


 その後、ヨルムンガンドは龍となり空を駆け樹国へと向かい、残り二柱はアナンタの下へ向かった。


 そして武闘会を終え、其々に与えられた役目を全うせんとする破滅の神々とヨルムンガンドが相対した。


 二柱はアナンタを連れて、樹国へと向かうのはこの翌日。
















 不死であるはずのヨルムンガンドが腐り果て、その巨体がバラバラにされているとは龍神達はまだ知らない。


 その横には、宿怨の龍人が太刀を持ち、怒りの形相で立っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る