第70話 Battle of Gods(2)

 二試合目はタルたんVSアルくん。

超重量級対決を制すのはどちらか!?


 パジャマ姿のタルたんが眠そうに目を擦りながら歩いてきた。右手には錆びたハルバートを持ち、ズルズルと引き摺りながらやって来た。


 「あいあい。眠いけどがんばるっすー。」


 次に逆サイドからアルくんが人化して登場。

水色の髪がサラサラと靡いている。紺色と青色のレインコートの少年のようだ。


 「タルたん。初めて闘う。でも本気は出さないよ。怒られるから。怒られるから。」


 少年姿同志、超重量級同士の闘い。

地属性VS水属性の闘い。奇遇にも何と面白そうな闘いか。


 「じゃあ2人とも準備はいいね?ファイトー!」


 まず動いたのはアルくん。

水属性の上位属性、水聖属性を巧みに操り、タルたんが持っているハルバートに似せて作った氷の巨大ハルバートを創造する。


 それを幾つも創造し、空中に浮遊させる。

アルくんが右手を振り下ろすとタルたんに襲いかかる。硬度は氷とはいえ、かなりのもの。

アダマンタイト級の硬さを誇る。


 迫り来る氷のハルバート。

タルたんは眠そうに欠伸をしていた。

何を思ったのか完全に無防備となっている。


 誰もが体中を引き裂かれる未来を想像した。

だがしかし、氷のハルバートはタルたんの体に当たると粉々に砕け散る。


 「ふぁあああ〜。ん?何かしたっすか?」


 欠伸をしながら、あたかも何事も無かったかのような態度に驚くアルくん。


 「くっくははは。流石タルたん。恐れ入った。恐れ入った。」


 腹を抱えて笑うアルくんに、キョトン顔のタルたん。


 「じゃあどんどん行くよタルたん。少しずつ本気。本気。」


 左手を上に向ける。

空には超巨大な水の塊が生成され、それが竜の形に形成される。


 「水聖属性第十二位階魔法『竜水漠衝りゅうすいばくしょう』。」


 凄まじい量の水が圧縮され大海を思わせる圧力を感じる。それは感覚的にも物理的にも。


 「どんなに硬い岩でも穿つのが水の凄い所。喰らいなよ。喰らいなよ。」


 更に十体の竜を生み出したアルくん。

水聖属性魔法、十二位階の魔法である。

竜一体につき、物理的に人間二万人を殺戮出来るほどの魔法がタルたんに襲いかかる。


 「ふぁあ。スキル『守護の掟』っす。」

 

 欠伸をしながら、錆びたハルバートを振るう。するとタルたんの周囲を覆うように透明なバリアが張られる。


 次々とアルくんの魔法がバリアに衝突するが、ビクともしない。


 「くっくっく。またまた流石。もっと本気を出しても良いみたい。良いみたい。」


 その後も魔法を繰り出すが尽くを無傷で防ぐ。時間ばかりが過ぎていく。


 いよいよ少しずつ力を解放する。

アルくんの体から天空へと立ち昇る魔力。

ヴァルトメアと同じように無限の魔力を感じる。下位の神では珍しい。


 「行くよタルたん。これを防げたなら君の勝ち。君の勝ち。」


 天に昇る魔力を圧縮、圧縮、更に圧縮。

圧縮した膨大な魔力と神気で神聖な水を作り出す。


 その水を圧縮、圧縮、更に圧縮。突如としてパキパキと凍りついていく。圧縮された水が解き放たれた様に超巨大な拳へと変わる。


 「行くよ。水聖属性第十五位階魔法『霜氷狂拳ヨトゥン』。」


 空を見上げると宇宙にまで届くかと見紛うほどの巨大な人の拳が浮いている。


 「流石だねぇアルくん。俺くんビックリだよぉー。」


 その超質量を武器に巨人の拳をタルたんへと振るう。コロシアムには収まり切らないほどの大きさだが、ヴァルトメアの結界が観客席への被害を完全に防ぐ。結界により押し潰された超質量の氷拳が武闘場に激突する。


 神級スキル『万海の狂月』。

・万の海を統べる者に相応しいスキル。

水への適応が限界を超え、その行き着く先は生命を生み出す大いなる海と同義。

水、水聖属性魔法の適正に究極の補正がかかる。

 

 神級スキルを発動し、自身の魔法に最大限に威力を上げる。結界がガタガタと凄い音を立てて震える。


 「ったくアルくんも中々ヤンチャだねぇ。」


 困り顔のヴァルトメア。


 













 小さな声でタルたんが言葉を発する。













 「神級スキル『不動無欠の掟』。」















 武闘場が凍りつき、コロシアムの周囲も白銀の世界となっている。


 タルたんの氷像が武闘場に立っている。

誰もがタルたんの負けを確信した。


 がしかし、地面が割れ、溶岩が吹き出し氷を溶かす。


 烈火よりも遥かに高温の火炎と溶岩が大地より噴き出る。白銀だった世界が焦げついた漆黒の世界へと変貌を遂げた。


 「神級スキル『奈落陽マントルの解放』。」


 「ははっ。降参だよタルたん。っもうそんなに眠そうにしてるのに本当に強いんだから。あー。負けた。負けた。」


 自ら身代わりの神木を割るアルくん。

その瞬間、タルたんの勝ちが確定した。


 相変わらず気怠けなタルたんは静かに欠伸をしながら武闘場から降りて行った。


 勝因は、神級スキル『不動無欠の掟』。

動かずじっとしている場合に、自身のDEF数値の10倍までの攻撃を物理、魔法問わずに無効化する防御のスキル。


 だが、このスキルによりダメージは防いだが、氷状態を解除するのに、同じ神スキルの火力が必要であった。それが神スキル『奈落陽の解放』である。


 これを自身に向けて放ち、不動無欠の掟によりダメージは無効化する。


 温厚で優しいタルたんの守りの闘い。

究極の守りがこの闘いを制したのだった。



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「うんうん。良い闘いだった。結構派手めにコロシアム外の植物も蒸発しちゃったけど。ね?タルたん、アルくん。」


 またもやニコニコ顔のヴァルトメアが居たという。

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