第68話 天魔創樹闘技会(闘士紹介)

※主に身内で闘うだけなので、読み飛ばしても問題ありません。ストーリーは76話から再会します。



 ヴァルトメアが創造した闘技場。

名を付けるなら『天魔創樹円形闘技場ヴァルトメア•コロシアム』。


 特殊な魔法、主に光と闇を使用した常人には理解不可能な高次元の術式によって、闘技場内部と観客席とでは視覚的に広さが異なる。


 つまりは、観客席では小さな空間で戦っている様に見えるが、内部ではかなり広大な空間で戦っている。


 俯瞰的に観ている様な、時にはズームして観ている様な不思議な闘技場。


 イメージ的に近いのはホログラム。

それを自動でズームイン、アウトを行っている様な…という御託はどうでもよくて、やって参りました神VS神。


 闘技場の観客席にはエルフ、ダークエルフが何万人と入り、結界によって護られている。

その結界は神光属性であり、闘技場内の隅に生えている小さな護神樹によって更に強化されている。


 「はい、始まりました第一回天魔創樹闘技会。司会は皆大好きヴァルトメアが務めさせてもらうよぉ。では闘士の紹介を始めちゃうよぉ〜。」


 「まずはこいつだぁ。王国『ラルシェル』の戦兵を殺し尽くした気高き白毛の神狼

白炎王餓狼マルコキアス』。」


 会場がドッと沸く。

肌触りの良さそうな美しい白い体毛をなびかせながら、神聖さを感じさせ、堂々と闊歩する。


 「お次はこいつだよぉ。聖皇国を壊滅させた神毒の蛇神『夜天魔蛇帝サマエル』。」


 漆黒の毒霧を放つ。

煙幕の様に身に纏い、霧が晴れると巨体が現れた。血の様に紅い大蛇の鱗が見る者の目を奪う。


 「その愛くるしい見た目に騙されるな。俺くんの一推し。神化してますます綺麗な女性になったね。虚実の精霊『幻影神樹精霊ジュピター』。」


 滅紫の和装。

袖をはためかせる明媚で妖艶な見た目に男性エルフ達の目はハートマークに変わる。

可愛らしい翼は幻想的な半透明の立派な翼に進化している。


 「魂を喰らう悪魔の王。人々を堕落させ狩り尽くす。神の反逆者が神となった。悪魔の神王『大罪魔神王ルシファー』。」


 観客に一瞥すると魂を抜かれた様に気絶するエルフ。弱い心を持つ者は見られただけで失神する。



 黒紫のコートを着た白肌の偉丈夫。

身に纏う漆黒の魔力は可視化され、全身を巡っている。


 「煌めく星の様な斑点が美しい。夜空の様な蒼黒の体から生み出される強靭な糸は絡め取られたら最期。『蒼魔星夜叉蜘蛛ザ•ヘル』。」


 巨大な蜘蛛が糸を吐く。

その身を包み込み、瞬間、繭の様に絡まった糸が縦に裂ける。裂けた箇所から可愛い女の子が現れた。蒼黒のゴスロリファッション。瞳の色は薄い青色である。


 「え?ヘルくん、ヘルちゃんだったの??わーお。」


 「ん。我が主。」


 既に並んでいる幹部も驚いた顔をしている。


 「はぁービックリしたぁ。さて切り替えて参ります。いつもいつも植物に水をくれてありがとうね。全てを切り裂き、穿つ神水の使い手。水を使わせたら俺くんより上よ?災厄の権化『究極体水神霊アルティメットスライム』。」


 ポヨンポヨンと飛び跳ねる愛くるしいスライム。腕に収まる程の大きさしかないが、計り知れない魔力は無限に続く大海を感じさせる。


 「冥界より出でし騎士王は何を守護する。そして地獄の剣技は何を屠るのか。

狂神『冥界破壊騎士王アポリュオン』。」


 カシャンカシャンと金属同士がぶつかる音が聞こえる。西洋風な全身鎧は地獄の龍を素材にした白銀に輝いている。そこから溢れる神気と魔力を放つ。鎧、兜を消すと鎧で抑え込まれた闘気が迸る。

 短髪灰色の髪に強靭な筋肉で覆われた体。

破壊の化身として申し分ない存在感である。


 「大地が動いていると錯覚する程の巨大な体躯は一歩で勇者を万人殺戮した。我が国の最終兵器『滅牢奈落亀神タルタロス』。」


 出てきたのは緑のパジャマ姿の小さな男の子。眠そうな目には何も映し出してはいない。一歩踏み出す度に地鳴りが聞こえる。その小さな体躯には計り知れない質量を抱えているのかもしれない。


 「そのキュートな見た目とは裏腹に神をも屠る蹴りには俺くんも恐怖を感じる。超可愛い、超強い、超速い。

神滅の月兎『月光太陽神兎マーニ』。」

 

 モフモフの黒い尻尾とウサ耳をヒクヒクさせて登場するマーニ。

 少し恥ずかしそうにする愛くるしさに会場の男性エルフはまたもや目がハートマークになる。


 「何者かは誰にも分からない。誰にだってなれるし誰でもない。能力もコピー出来るチートな能力に敵はただ黙って蹂躙されるだけ。我が国の大事な偵察隊。

幻魔の使徒『朧月夜守護神霊フィルギャ』。」


 誰も出てこない。

会場がソワソワとし始める。


 「フィルくんはもうそこにいるよぉ。もうマーニちゃんの横に居るから。」


 いつのまにかマーニの横にいるフィルくん。

誰も彼もがその存在を知覚出来なかった。


 「さすがだねぇフィルくん。」


 ニヤッと笑うヴァルトメア。

愛しい信頼できる配下に心強さを覚えた。


 「最後はコイツだ!名だたる樹国幹部をまとめ上げ、全てを司るミスターオールマイティ。その甘いマスクには女性エルフもうっとり。

気高き神龍人『万象神羅樹龍人エーデルムート』。」


 会場のエルフ達に手を振りながら歩いてくる。黄色い声援に感謝をしながら、武人然とする身のこなしが強者のオーラを放つ。

 翠色の髪はミディアムに揃えられ、刃物の様なするどい目が特徴的である。


 「以上、出揃いました。俺くんも実に楽しみです。ちなみにルールは簡単。俺くんのオリジナル植物『身代わりの神木』を壊されたら負けです。要するに致死ダメージを受けたら負けって事だねぇ。」


 「それと彼らのステータスは全ては明かさないが会場に映し出される様になってまーす。参考にして観戦してね。ちなみにムートくんはシードなんでよろしくぅ。では一回戦始めまーす。」



 次回、神VS神。


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