第50話 マーニと戦狂い
ヴァンを吹き飛ばしたマーニ。
拳からは白煙が立ち昇っている所を見ると、物凄い威力があったのだろう。
「この程度の攻撃では死なないでありますデスね」
ヴァンは攻撃が当たる前に身体強化を発動し、その後自ら後方へ飛ぶことで攻撃を弱めた。数々のモンスターとの戦闘、対人間との戦闘で培ってきた技術と直感スキルが上手く交わり、様々な戦闘スタイルを確立していくのがヴァンの強みであった。
少し時間が経過し、エルフの二人は安堵した表情になる。マーニはまだ警戒し続けている。
「流石に倒したのではないでしょうか」
「まだでありますデス。鑑定は出来ないでありますが、あの男の纏っている空気は強者の部類に入るでありますデス」
すると、遠くから木々が倒れるのが見える。
少しずつ近づいてくる。
やはり、無傷のようだ。
「くはははは。かなり痛いのお見舞いしてくれたなぁ。動きも速かった。いやぁ、昂ぶるねぇ」
ヴァンの目つきが鋭くなる。
本気になった証拠に、纏うオーラが大きくなっていく。
「二人とも来るでありますデスよ」
「もうエルフには興味はない。お前だけが俺の狂った心を癒してくれる。くかかか」
身体強化を発動したまま、剣に魔力を相当量纏わせる。ただのロングソードが魔力で長くなっていく。
「長剣。攻撃範囲にいる限り、俺の剣技はお前を捉えるぞ」
ブンっ!!と振るうとマーニの後ろの木々が倒れる。エルフの二人は範囲外だったのか無事だった様だ。しかし間一髪だったようで、地面へとへたり込む。
「いくぜ。更に特性を加える」
光属性の魔力を纏った剣身が透明になり見えなくなる。
「この奥義を見て生き残った者は陛下のみ。本当は他の帝国の最強共と殺り合いたいんだがな。禁止されてんだ。だからお前でストレス解消させてもらうぜぇ」
透明で攻撃範囲を広げた斬撃が辺りの木々を切り裂いていく。
恐怖に潰されるエルフ。
「無理よ。こんなの…。精霊の魔法も効かなかった。後は殺されるのを待つだけなんて」
「くははは。どうだ!!手も足も出ないだろう。剣筋も見えずどう戦う獣人ッ!!」
見えない斬撃がマーニを襲う。
ガキンッという硬い物に当たった様な音が響く。
「何か当たったでありますデス」
「はっ?確かに今あいつの体に…!?」
その瞬間、マーニは地面を蹴った。
バキバキバキバキッという激しい地響きの様な音が轟く。
マーニの足元には大きなクレーターが出来上がる。刹那の時間の出来事である。
マーニの姿がかき消えた。
ヴァンが見た最期の景色はマーニの残像だった。
マーニは自慢の脚力で移動し、ヴァンの上半身に横蹴りを入れた。ただそれだけ。純粋な身体能力だけ。身体強化の類やスキルは一切使用していない。
ヴァンは下半身だけをこの世に残して、この世を去った。
「人参が食べたいので早く帰るのでありますデス。」
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