第48話 大帝国の剣聖

 剣聖ヴァンは、愛剣を片手に持ち、発動される精霊魔法による罠の尽くを斬り捨てる。


 人間では世界屈指の身体能力であり、スキルの豊富さは流石と言える。


 「おいジジィ。怠けてんじゃねーよ。罠がそこら中で作動してんじゃねぇか」


 「ヴァン、お前こそ先に行くでない!!ワシが罠を解除してからにしろ」


 お互いに文句を言ってはいるが、その雰囲気は悪いものではない。


 「ったく……これだから。ジジィは動くのが遅ぇんだよ。先に行くぞ。罠はもう慣れた」

 

 直感スキルに従い、罠が発動する前に作動を感じ、避け、時には破壊した。


 ヴァンは剣に魔力を纏い、特性を反魔力の作用へと施し、精霊魔法による罠を確実に潰していった。


 「かなり広いが、それだけ狩りの時間が楽しめるってもんだ」


 それからしばらくすると、エルフの居住区へとたどり着く。

木の上や地面で一斉に弓を引くエルフ。


 ニヤニヤとしながら、余裕そうに剣で肩をポンポンと叩くヴァン。


 身体強化を施し、目にも止まらない速さでエルフの背後へとまわると剣を振るう。


 振るった風圧で吹き飛ぶエルフの戦士達。


 「当てるつもりはないが、事故は仕方ねぇな。ジジィにバレたら鬱陶しいが」


 それでも立つエルフの戦士は精霊魔法と弓を駆使し剣聖と戦う。


 「精霊魔法か。ぶった斬ってやる。かかって来い!!」


 視線から威圧感が放たれる。


 精霊魔法による、風属性の魔法。

下級精霊による風による大気の大槌【ウィンドハンマー】を剣を振るうのみで無力化していく。


 「な、なんだと!?」


 驚くエルフの戦士を峰打ち。

 

というべきか否か。魔力を纏い刃を潰してぶっ叩き気絶させていく。全ての戦士が気絶し、特級魔法師アブイによる奴隷の楔を刻む。


 その後も侵略していき、同じ事を続けていくヴァン。帝国への大量のお土産は、騎士団によって続々と送られていく。恋人同士、夫婦も居ただろう。それでも平等に奴隷の楔を刻まれ、移送されていく。


 「大量、大量。これで千人は超えたな」


 「では転移魔法で大帝国へとエルフ共を送っておくぞ」


 「おう。ジジィ頼んだ。あとは女王を捕まえるのみだな。ハイエルフ、どんな魔法を使うのか、戦闘が楽しみだなぁ」


 狂気の笑顔で森を見つめるヴァン。

その戦闘狂は次の獲物を狙い定める。


           ✳︎


 「女王様、ここは私にお任せしてお逃げ下さい。あなた様さえ生きてくださればエルフィアは無事なのです。どうか……早くお逃げ下さい」


 「そんなわけにはいきません。リリデルあなただけに怖い思いはさせません」


 「女王様……」


 「大丈夫ですわリリー。何だか昔に戻ったみたいね……いくわよ」


 ニコッと強がりの笑顔を見せる女王のニンフィ。


 少しの兵を連れ、二人は戦場に向かう。

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