第47話 精霊国への襲撃者

 大帝国の騎士団数名と騎士団長、特級魔法師は奴隷化したエルフを連れ、精霊国の所在地の噂がある北方へ進行した。


 大帝国北方の山林。


 大帝国最強が1人。

剣聖『ヴァン•バトラー』。齢30歳であり、剣士としては経験豊富になり、最も脂が乗った時期である。


 帝国御前試合という一年に一回、最強の名を求めて強者が集う皇帝の前で死合うイベントがある。


 過去の優勝者は皇帝に仕え、その強さを以って帝国を支えている。


 全員が例に漏れず、魔物を狩りレベル上げを趣味とし、その強さの根源を作っている。

魔物=経験値としか考えていない強者である事は間違いないことであった。


 「本当に居るんだろうな。エルフなんてよぉ。間違えましたなんて言ったら全員半殺しだからな」


  「団長ぉ〜勘弁して下さいよ。俺らがそんなの知る訳ないじゃないですか」


 「それもそうだな。ガハハ。じゃあ捕らえたエルフを連れてこい。先頭を歩かせてお仲間を誘き出す。現れたエルフに奴隷の楔をするのを忘れんなよー!」


 そこからエルフ族の女に先頭を歩かせ、たまに苦痛を与え、叫ばせる事1時間が経過した。


 「ヴァンよ。気配感知には引っかからんか?ワシの魔力感知に不審な気配がするのぉ。恐らくお仲間のエルフって所じゃろうな」


 少し警戒した様子の特級魔法師『アブイ•カイナス』。


 「やっとか……。随分と北の方に隠れてんだな。奴らの精霊魔法は本当に厄介だな。見ただけじゃ分からん。直感スキルを使ってようやく少し感知出来るほどだ」

 

 「ワシに任せろ。隠蔽看破は魔力の波長を乱すことが基本。ほれ、現れたわい」


 何も無かった筈の場所から女性エルフが現れた。驚いたエルフはすぐさま精霊魔法で攻撃を行う。一般的にはものすごい威力であり、避けるには魔法の範囲が広すぎる。


 風属性精霊魔法【シルフィードランス】。

風の中級精霊シルフが魔力を糧に高威力な風の槍を作り出し放つ。


 「ワシがやろう」

 

 そう言い先頭に躍り出る。

ニタニタと笑いながら、魔法対決を楽しもうとするアブイ。


 「第五位階、風属性魔法【暴風の牙槍】」

 

 魔法の中でも難易度が高いとされる第五位階の風属性魔法であり、小手調べに出す様なレベルの魔法ではない。流石は特級魔法師と言った所だ。


 精霊が使う魔法は人間が使う魔法より総じて威力が高く、それは魔力への適合率に起因する。その精霊魔法に対して、アブイが放った魔法が衝突し、相殺された。


 「ふむ。こんな物か?であれば小娘に勝てる見込みはないぞぉ?」


 「な、なんで…。し、シルフちゃんお願い」


 その後も精霊魔法を駆使し攻撃を続けるも尽くを相殺される。当たり前の事だが、精霊に与えられる魔力には限りがある。


 特級魔法師の魔力量には敵わないのは仕方のないことかもしれない。

 

 戦闘不能になったエルフの女性は奴隷の楔を刻まれ、奴隷となった。


 「小娘、故郷の場所を教えろ。あとはジジィが何とかする」


 「はい」


 そこから、一同はエルフの案内に従って精霊国エルフィアの場所を特定する。


 一見、何もない場所だが、アブイの隠蔽看破によりその姿を現した。


 「ワシにかかればこんなもんじゃ。では行くかの」


 「流石はジジィ。よっしゃ、暴れ甲斐が有りそうだな。俺がエルフ共をぶっ倒すからジジィは奴隷の楔を使ってくれ。帝国の為だ。頼むぜ?」


 「ほっほ。楔はワシに任せて早くエルフを狩ってこんか」


 その後、エルフの国は1人の男に蹂躙される。


 その時、タイミング悪く、元老院による樹海の侵略という名目で若い男のエルフは半分が動員されていた。


 国の守りは残りの男エルフと女エルフと隠蔽魔法、罠に任せてしまっていたのが理由となる。


 不幸中の幸いは、体を傷つけない様に捕らえられた事だ。


 元老院の老エルフは自慢の精霊魔法を駆使し、足早に故郷から逃げ出すと、樹海へと向かった。


 そして、エルフィアに一体の化け物がヴァルトメアの指示により、樹国から潜伏しているのがエルフィアにとっての唯一の幸運かもしれない。

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