第31話 聖皇国軍VS蛇王配下

 蛇王配下、一匹当たりの戦闘力は二万から三万程。そうA級時代のまさとくんと同レベルか少し弱い程度である。


 中でもリーダー格であるサマエルの子は突出し、S級魔物であり、戦闘力は五万超え。


 蛇王サマエルは戦闘力15万を優に超え、聖皇国討伐軍一人あたりの戦闘力は平均5000程度と隔絶した差がある。


 いくら数の有利があったとしても、それは同レベルの者同士の話だった。


 蹂躙せよ。

その号令と同時に万を超える邪悪な毒蛇が聖皇国討伐軍へと襲いかかる。


 その毒牙にかかりジューッという体が溶ける音が聞こえる。瞬時に噛まれた部位からは骨が見えて、その骨すら溶けていく。


 その間1秒。その後の1秒で体へと広まり、白魔法による解毒は間に合わなかった。

 これほどの毒だとは預言には無く、想定外の事態であった。

 

 討伐軍も傍観しているだけではない。

必死な形相で近接攻撃隊が蛇へと斬りかかり、魔法師団も魔法にて応戦する。


 しかし、強固な鱗が攻撃を弾き、すぐさまその毒牙で溶かされる。


 地獄の様な光景に、流石の歴戦の戦士も逃げ惑う。敵うはずもないと。


 50万も居た討伐軍の戦士が急速に数を減らしていく。


 哀れな中将3人の戦闘力二万ほど。


 毒属性魔法第八位階『出血毒・赤霧』。

半径5キロに血の様に赤い霧を発生させる。

その毒は体内へと入り込むと、血管を破壊し、腐らせる。全身から出血し、死に至るまでの猶予は少ない。タイムリミットは5秒ほど。


 この凶悪な毒魔法を数発、蛇王の子数体で放つ。赤き霧が聖皇国討伐軍を飲み込む。

血の池地獄のような凄惨な風景と苦しみもがく聖皇国討伐軍の姿。


 中将もその魔法により、死を迎えた。

第三皇女も穴という穴から血が滴り、干からびその可憐な命の灯火を失った。


 偉大なる大魔法師も必死に白魔法で無毒化しようとするも扱っている位階は八に対して七と対抗できるはずもない。


 ただの居合野郎であるムサシは言わずもがな。刀を振り回す事もなく全身から出血が止まらず死んだ。


 大将クラウスは毒の無毒化に成功した。

圧倒的な体の強さは金剛石の様である。

その毒の抗体もまた体は即対応し作り出す。


 大将クラウスの戦闘力は12万。

人間ではトップクラスの実力を持ち、超越者であり、聖皇国最強である。


  人族は進化の概念が無い。

その為、魔物を倒すと経験値として取得し、己の戦闘力を個体設定値限界まで上げることが出来る。その限界値はクラウスでレベル1000。

 現在のレベルは782。


 そして戦闘力が10万を超えた者を人は超越者と呼んだ。過去の勇者も同じである。


 戦闘力が12万であるクラウスに対抗出来るとしたら蛇王のみ。

 他の蛇くんは大人しく雑魚狩りへと勤しむ。

樹海内で様子を見て居た蛇王サマエル。


 子らの危機を感じ取り、その姿を現した。


 「シュルルル。我が子らよ。撤退せよ」


 号令と共に樹海へと撤退する蛇くん達。

その時、大地が轟々鳴る。


 大地が大剣によって裂け、その衝撃は蛇くん達を狩る。


 「がっはっは。蛇狩りとはまた弱い者を虐めている様で気が引けるなぁ。姫様の命を奪ったお前達が悪い」


 「シュルルル。よくも我が子を。妻に怒られるではないか」


 「魔物の癖に言葉を話せるのか……」


 クラウスは驚くも、蛇王サマエルの体へと斬りかかる。右手に大剣を持ち、渾身の武技を放つ。


 「大剣武技『裂斬光れつざんこう!!』」


 五つの斬撃が光となって蛇王を斬り裂こうとする。王国の最強戦士を先日の戦にて討ち取った武技である。


 蛇王サマエルの巨鱗が斬撃を弾く。


 「がっはっは。強い強い。いやはや、こんな楽しい戦いが出来るなんて来た甲斐があるってもんだ」


 クラウスは言葉を発した後、激しい痛みを感じる。左手がない事にやっと気づいた。


 「お、俺の腕が……っ!!」


 バクッグシャグシャという咀嚼音が聞こえる。


 「シュルルル。あまりに遅い斬撃だ。これが人の限界である」


 蛇の身体は全身が強靭な筋肉で出来ている。身体能力で人間が敵う訳もなく、戦闘力も蛇王サマエルの方が格上だ。


 「よくも俺の腕を。許さん。とっておきの技でお前を殺す」

 

 覇王の様な圧力を放つ。


 「大剣武技『覇道大波斬はどうだいはざん』!!」


 極光。神秘的な斬光が極大な斬撃となって巨大なる蛇王へと襲いかかる。


 「シュルルル。笑止。王毒技『死界しかい』」


 死毒なる劇毒を作り出す。

その毒により力という概念すら変性し、歪な力へと変わる。対抗できるのは同列または、上位者のみ。


 結果、戦闘力において下位の者には抗う術は全て失われる。


 「シュルルル。死せよ」


 死界により、死毒がクラウスの全身を変性し、体を維持する力も壊される。


 グシャグシャに溶け、液体と化したクラウスはこの瞬間、この世から姿を消した。


 死界の余波と蛇くん達の赤霧により、聖皇国討伐軍は須く消滅し、樹海入り口の植物は枯れた。


          ✳︎


 ニコニコとするまさとくん。


 「あ?蛇くん達も?やっちゃったねぇ。いつ学ぶのかな?」


 (主様の背中からゴゴゴゴという音が聞こえる。顔は笑ってるけどや、や、やばい。)

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