第15話 ダンジョン①

「———ですので、今総力を上げて原因を解明しているところです。しかし、魔王に匹敵する者がいると分かった以上、皆様にはより早く強くなって頂きたいと思います」


 俺達の前でそんなことを宣うアリシア。


 どうやら、俺の突発的な行動が王国に筒抜けだったらしい。

 勿論俺が犯人だとは絶対分からないだろうが……バレたら面倒極まりなさすぎる。


『……主人よ、きっと大丈夫だ。流石に我らだと気付かれることはないだろう。ルシファーが魔力の痕跡も消したからな』

『しっかりあの成り損ないの魔力に改竄しておきました』

『そ、そうか』


 正直魔力の改竄とか言っている意味が理解出来ないが、大丈夫だと言うことだろう。

 もう考えるのはやめだ、面倒臭い。


「アリシア様、因みにより強くなって頂きたいとはどう言うことですか?」

「はい、実はですね……我が国の領土に建国以来ずっと攻略されていないダンジョンがあるのです。しかし低階層は既に攻略されているので、皆様にはそのダンジョンでレベルアップをして貰いたいと考えています」


 ダンジョン……少し面白そうだな。

 あくまで俺1人で力を隠さなくてもいい、という条件下ならば、だけども。


 正直ダンジョン自体は非常に興味がある。

 何せ、地球には無かった代物だし、ダンジョン内のモンスターは地上のモンスターよりも強力だと本に書いてあったからだ。

 いつか行ってみたいとも思っていた。


 だが……クラスメイトや騎士達と一緒となるとアイツらは召喚出来ない。

 最悪それは良いとしても、面倒な事を押し付けられないために適度に力を抜いて行わなければならないのが面倒臭い。

 

 そしてこのダンジョンで1番は気を付けないといけないのは———朝日奈に俺の力がバレないこと。

 

「安心して下さい、騎士達が皆様が危険な時は護ります。それにポーションなどの回復アイテムも支給します」


 どうやら騎士が来るのは確定か。

 きっと今の俺は苦虫を噛み潰したような表情になっていると思う。

 

「どうしたの、透君?」


 お前のせいでな、朝日奈。


「……いや、面倒臭いなと思ってな」

「あれ? 私は透君なら寧ろ喜ぶと思っていたよ」

「……確かに楽しそうだが、それ以上にリスクが大きい。碌に戦闘経験がない俺達が本当の死闘なんか出来るのか分からないからな」

「……確かにね」

 

 俺がそう言うと、顎に手を当てて少し考える素振りを見せる朝日奈。

 しかし直ぐに笑みを浮かべて言った。


「でも———私と透君なら大丈夫だと思うよ」


 ……俺はお前がいると大丈夫じゃねぇよ。


 そんな言葉を飲み込んで、そうだな……と適当に相槌を打った。












「———へぇ……ダンジョンって結構ちゃんとした洞窟なのね」

「…………どう言うことだ?」

「だってゲームだと結構壁とか床って整備されてるダンジョンが多い気がして」


 あれから俺達は準備を整えた後、直ぐにダンジョンへと向かうことになった。

 本来は後1週間程度訓練をしてからダンジョンに行こうとしていたらしいが、俺のせいで危機感を持った王国は騎士がサポートすれば良いと言うことで今日から行くことになったと言うわけだ。

 つまり、完全なる自業自得。

 自業自得過ぎてぐうの音も出ない。


 しかし、それだけならまだ良い。

 それだけならまだ良かったのだが……。


「何で俺について来るんだよ、朝日奈」

「ん? そんなの透君といるのが1番安全そうだからに決まってるわよ」


 ……コイツ、俺の力を知ってんのか?


 確かにこの中だったらぶっち切りで俺のそばにいた方が安全だろう。

 正直アイツらを召喚して適当に遊ばせてたら数百年攻略されなかったとか言うこのダンジョンも確実に攻略できる。

 

 ただ、それを勘か何かで察する朝日奈はもはや化け物だ。

 明らかに俺と同じ領域の者だ。

 力はまだまだ未熟そのものだが。


 俺は小さくため息を吐いた後、辺りに視線を巡らせる。


 現在俺達は騎士達の後ろを歩いている。

 今の俺たちに最も合った狩場まで連れて行ってくれているらしい。


 そして、俺と朝日奈はそんな騎士達の直ぐ後ろ、クラスメイト達の1番前を歩いている。

 で、俺達の後ろを歩いているのが一樹&源太と浅倉とその友達の比較的俺に近しい陽キャグループ。

 その後ろを俺とは関わりないが、俺が朝日奈の隣にいるせいで変なやっかみを受けている男子のみのもう1組の陽キャグループ。

 後の奴らは……俺に全く関係ないので心底どうでも良い。


「少しワクワクするね、透君」

「俺は憂鬱で仕方ないな」

「ふふっ、嘘ばっかり」

「嘘じゃねぇよ」


 完全なる事実なのだが、なぜかこの完璧超人は信じてくれない。


 本当に面倒な女に捕まったな……と辟易していると、頭の中でアスタロトの声が響く。


『主人よ、話しているところ悪いのだが……後10分で敵が来るぞ』

『……何体だ?』

『300。我ら1人出れば瞬殺であるが、この騎士達と同等程度の強さを持ったモンスターだ』


 ……どうやらこの世界は、俺に苦行しか与えないらしい。


 俺は内心歯噛みしながら、どうやって対処するか考え始めた。

  

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