第11話 龍魔神VS悪魔使い&ルシファー

『……貴様は何者だ……? 我の攻撃を跳ね返したのも貴様か?』


 突然の宣戦布告に、雲の裂け目より頭を出した龍魔神が懐疑的な鋭い眼光で俺を睨む。

 たったそれだけの動作で雷鳴が轟き、雲が揺れ動いて強い風が吹く。


 やはり『神』という名前が付くだけあって半魔のくせに相当強力な個体らしい。

 もう半分が『龍』というこの世界最強の生物種だというのも関係してそうだが。


 そんな神とも呼ばれる半魔半龍に、俺はワクワクで緩みそうになる頬をなんとか押し殺しながら口を開く。


「俺は魔影透。通りすがりの悪魔使いだ」

『悪魔使いだと……?』

「ほう……お前は悪魔使いを知っているのか?」


 この世界には居ないと思っていたが……。


『知っているのか、だと……!? 儂をこんな姿にした———あの忌々しい者達の生き残りがよもや儂の前に現れるとは……絶対に生きた帰さんぞ……ッッ!!』


 ほう……どうやらこの世界にも悪魔使いのような存在がいるようだな。

 是非とも会ってみたいもんだ。


 少し奴の話を聞いてみたい……なんて思っていたのだが、どうやらこの世界の悪魔使いがコイツに何かしたらしい。

 突然龍魔神の怒気を孕んだ声が響いたかと思えば、幾重にも重なった極大の雷が俺の下に降り注ぐ。

 ただ、再びルシファーの放った光のベールによって弾き返され、俺は無傷である。

 そんな俺達の姿を見た龍魔神が、ギロッとルシファーを睨んで吠えた。


『貴様……悪魔かッ!! 何故悪魔使いなどという下等な存在に屈する……!?』

「黙りなさい、中途半端な成り損ない。貴様程度の悪魔がご主人様に歯向かうなど本来即死刑になってもおかしくないのですが……ご主人様がわざわざ生かして差し上げているのです。感謝しなさい」

『———殺す……!!』


 ルシファーの地雷を盛大に踏み抜いた棘のある言葉にキレた龍魔神が咆哮を上げて口を大きく開ける。

 すると一気に辺りの魔力が吸い込まれるようにして龍魔神の口内に膨大な魔力が集まっていき……。


『消し飛べ———ッッ!!』

 

 1発で俺達が召喚された王城が跡形もなく消し去るであろう威力の籠った漆黒のドラゴンブレスが放たれる。

 

「おお……確かに凄い一撃だな……!」

「ちょっと! 今は喜んでいる場合じゃないでしょ!?」


 目をキラキラと輝かせる俺の頭を叩いたシルフィアが、魔力を練って魔法を発動。


「———【六芒星の黄銅鉱オリハルコン】———」


 真上に俺達を容易に包み込めるほどの巨大な六芒星の虹色の結界が顕現する。

 おそらくシルフィアの最大防御魔法なのだろうが……ドラゴンブレスに衝突すると同時に少し耐えるのが限界だったのか、呆気なく砕け散った。


「……っ、やっぱり溜めなしだと無理か。なら———むぐっ」

「まあ、待ってくれ」


 俺は新たな魔法を発動させようとするシルフィアの口を手で塞ぎ、ルシファーに命令する。



「———ルシファー」

「承知致しました———《熾天使の極光》」



 ルシファーの左半分の純白の翼から放たれた極光波がドラゴンブレスに衝突して爆発。

 耳をつんざく爆発音と共に、辺りを熱線と爆風が襲う。

 倒壊した家屋は熱戦によって一瞬にして燃え尽き、爆風が枯れた大地を抉る。

 だが、俺達はルシファーの張った光のベールによって全くの無傷だった。


 これには流石の龍魔神も驚きを禁じ得ないようで、驚愕に声を荒げる。


『ば、馬鹿な……儂の一撃を、受け止めたというのか……!?』

「驚くのはまだまだ早いんじゃないか?」

『……何?』


 笑みを浮かべて告げる俺に、龍魔神が訝しげな表情を浮かべる。

 そんな龍魔神を他所に———俺は更に嗤う。


 あぁ、久し振りに楽しくなってきた……!

 コイツならあの技を使っても直ぐに死なないよな?


「やるぞ、ルシファー」

「何なりと御命令を」


 俺の言葉で即座に跪くルシファー。

 敵の前だというのに、敵に背を向けてこの体勢が出来るのは余裕の表れか。

 随分と頼もしいことだ。


 これから俺がやろうとしていることは、悪魔使いなら誰もが知っており、誰もが成功させようと人生を賭ける———正しく悪魔使いの最高到達点と言っても過言ではない技だ。

 この能力があるからこそ、悪魔使いがどんな迫害や組織に狙われようとも決して絶滅しなかった所以と言われている。


「今回はお前で行くぞ」

「畏まりました、ご主人様。この私を何なりとお使い下さい」


 ルシファーはそう言って立ち上がると、漆黒と純白の6対の翼を広げて宙に浮く。

 そして同時に目を瞑り———。





「「———【悪魔同化リンク】———」」





 同時に目を開いて唱えた俺とルシファーを———溢れんばかりの輝きが包み込んだ。


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