第7話 訓練開始

「———昨日はよくお眠りになられたでしょうか?」


 まだまだ朝も早い時間帯(やっと日の出に差し掛かったくらい)に、俺達は既に王城の中庭の一部に集められていた。

 めっちゃ眠たい。


 何でもこの世界、どうやら基本的に日が沈んでから1、2時間程で就寝するらしい。

 1日は地球と同じ24時間で、現在の(夏)日が沈むのが約6時前後であるから……基本的に皆んな8時には寝るんだとか。

 その代わり朝の3時くらいに起きるのが普通らしいが……はっきり言って早寝早起き過ぎて付いて行けん。


「ね、ねむすぎ〜あと数時間寝たい……」

「そうか? 俺は普段からこれくらいには走り込みしてるぞ!」

「お前ヤバすぎ〜」


 一樹は俺と同様に眠たそうに欠伸をし、源太は相変わらずの元気さだった。

 ただ当たり前だが源太が特殊で、朝日奈と源太を除けば皆が眠たそうにしている。


「……本当にこれで勇者が務まるのかよ」

「それは俺も同意だ。こんな体たらくだとゴブリンにも殺されるだろ」

「頼りないな……」


 そんな俺達の姿を見た騎士達は露骨に顔を顰めて不信感を募らせ、アリシアは随分と戸惑っていた。


「えっと……皆様は……」

「すみません、アリシア様。私達の国ではこれほど早く起きるのことが殆どないので、皆んな慣れてないんです」


 ナイスだ朝日奈。

 お前ならいってくれると思っていたぞ。


「そ、そうなんですか……。あの……眠気を取る魔法を使いましょうか……?」

「「「「「「「「「是非とも宜しくお願いします」」」」」」」」」


 多分ほぼ全員が声を揃えて言ったと思う。










「———透! これは革命だ……! これさえあればどれだけ徹夜しても眠たくならないなんて最高じゃないか……!」

「黙れ。耳元で話すな、鬱陶しい」


 普段の間延びした口調は何処に行ったのかと、思わずツッコミたくなるほどに興奮した一樹の顔を手で押し除ける。

 

『主人よ、どうするのだ?』

『……何が?』


 突然頭の中で話し掛けてくるアスタロトに問い返す。

 イマイチ理解していない俺に、アスタロトが遠慮がちに答えた。

 

『……ルシファーの力は些か強過ぎるのだ』


 ……完全に盲点だった。

 

 俺は思わず頭を抱える。


 今俺のステータスには【光魔法:1】と書いてあるはずだ。

 それなのにルシファーの超高威力な光魔法を見せれば……もう面倒な予感しかせん。


 ただ手加減しようにも……レベル1がどれ程か見当も付かないので、指定もし辛い。


『……ルシファー、手加減出来るか……?』

 

 俺の問いに対し、ルシファーが豪語する。


『勿論です、ご主人様。この王都を一瞬で消す魔法から、あの花すら破壊出来ない魔法まで使えます』

『流石ルシファー、愛してる』

『€¥#°%$!?!? わ、わわわ私も、あ、あああああ———』

『止まれ、ルシファー。そして主人も迂闊にそんな言葉を言うでない』


 何故か叱責を食らったんだが。

 別に家族以外で1番長く過ごしてんだからそれぐらい……。


『ダメだ主人よ。ルシファーが暴走する』

『分かった、気を付ける』

『…………ア・ス・タ・ロ・ト?』

『ふんっ、貴様が———』


 何か喧嘩が始まったので、会話を遮断して皆の注目している方を見れば———騎士達を圧倒する朝日奈の姿があった。


「おいおいやべぇ〜〜って! やっぱり香織ちゃんは完璧美少———」

「アンタ、殴られたいわけ?」

「はい、申し訳ありません」


 ここでも喧嘩を始まったか。

 また騎士達の視線が厳しくなったし、友達と思われたくないし逃げるか。


 俺は適当に辺りを見渡し、1人の杖を持った少女の前に集まった魔法組に混ざってみる。

 丁度いい、どの程度の威力なのか偵察に行くとしよう。


『ご主人様……』


 頭の中にルシファーの悲しそうな声が響くが……悪いな、やっぱり見ておきたいんだ。


「シルフィアさーん、俺達が魔法を使うにはどうすればいいんですか?」

「そうね……貴方達は今直ぐにでも使えるようになると思うけど、実戦で使用出来るレベルにするなら……まずは魔力の使い方からね」


 クラスメイトの1人が少女———シルフィアと言うらしい———に問い掛けると、シルフィアは少し顎に手を当てて考えた後ですぐに結論付けた。

 勿論俺も同意見だ。

 

『いい先生そうだな』

『……そうですね、まあ私の方が圧倒的に良い先生ですけど』

『そうだな。俺の先生だもんな』


 そう、俺はルシファーに魔力の使い方を習った。

 勿論俺には魔法の才が無いので、結局大したものは使えなかったが……身体を強化する【身体強化】や弱い魔法ならば一応使える。

 能力には入らなかった様だが。

 

 ……自分で使えばいいんじゃないか?


 何て考えていると、シルフィアが生徒達に指示を飛ばしていた。


「それじゃあまずは全身に魔力を纏わせることからね。魔法使いにとって【身体強化】は必須中の必須要素よ。幾ら魔法が使えても相手の動きが速くて当てられない、直ぐに接近を許す……なんて絶対にダメ。魔法使いの1番の強みは遠距離からの高火力、アシストよ。だから速さに付いて行けるように、機敏な動きで相手との距離が取れるようになって貰うわ」


 そう言ってその後にも魔力を全身に流すコツなどを教えていたが……まあ俺には出来るので特に聞く必要もないか。

 ただ、魔法使いとしての最適解を言っているので……その他は聞く価値は十分にありそうだ。


 俺がそんなことを考えながら適当に魔力で遊んでいると……バッチリ目が合った。


 誰とかって?

 シルフィアと、だ。


「あ、貴方……名前は?」

「魔影ですけど……」


 物凄く嫌な予感に冷や汗をかく俺に———シルフィアがキラキラと瞳を輝かせながら告げた。



「マカゲ……貴方の魔力の扱いは既にマスター級よ! それも一瞬で……! こんな天才、今まで見たことないわ! マカゲ、私の正式な弟子にならないかしら!?」



————————————————————————

 遂にやらかす。

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