第5話 バレない程度に盗め
「———侵蝕、か……」
『うん。何でも魔王の放つ邪気が空間を生命の住めない場所にするんだって。だから、そもそも邪気に耐性がある世界の人間を召喚した結果……』
「……俺達が転移させられたわけか」
何とも面倒な生命体が生まれたもんだ。
「どうすればその邪気は祓えるんだ?」
『うーん……魔王を倒したらだと思うよ?』
「なら俺には関係ないな。ルシファーの話は後で時間が空いた時に聞くとして……一先ず金を奪うぞ」
今は魔王より、ステータスを見られることの方が先だ。
ステータスを見られて面倒事に巻き込まれるくらいなら逃げ出した方がマシだ。
ルシファーがこの世界の常識を理解したとも言っていたので、あとは金さえあれば問題ない。
『あ、お金と言えば……』
俺が図書室から出ようとすると、ふと思い出したようにベルゼブブが言った。
『お金が入ってるこの城の保管庫に『ステータス偽造用魔導具』って言うのがあったよ』
……今なんて言った?
俺は思わず動きを止めて、ベルゼブブを見た。
「ベルゼブブ、今……『ステータス偽造用魔導具』って言ったか?」
『うん。ご主人様、必要なんだよね?』
「……ああ。良くやった、ベルゼブブ」
これから保管庫に行くことが決まった。
「———ふむ、どうするか……」
俺は目の前の保管庫の扉を見上げる。
扉は完全に金属製で、しかも多分鉄より堅いときた。
当然俺はこの扉の開け方など知らん。
『我の力で風化させるのはどうだ?』
「いや、お前の力は魔力を喰い過ぎる」
アスタロトの力は世界の時間を停めるのに使ってるしな。
ならば……。
「ルシファー———やれ」
『承知致しました、ご主人様』
別の者に任せるまで。
俺の指示の下、ルシファーが放った光によって分厚い金属の扉が円形にくり抜かれる。
軽く押せば……くり抜かれた部分が滑るように地面に落ち、中が見えるようになった。
「ほう……これがこの世界の金か」
中には、金の延べ棒や500円玉程度の大きさの金貨、銀貨、銅貨などが大量に納められていた。
流石国の金庫と言ったところか。
「ベルゼブブ」
『こっちだよ』
コイツは一体何処からこの金庫の中に入ったんだ……とツッコミたくなるが、既のところでやめた。
どうせ適当な返事が返って来るのがオチだからな。
俺達はベルゼブブの案内の下、保管庫を進む。
こういうのは元の世界ではやったことないし、少し盗賊団みたいでワクワクするな。
「ふっ、別の国の城に盗賊として入るのもいいな……」
『ご主人様ならばどんな場所であろうといけると思います』
『ご主人様、その時は何か『縛り』を付けようよ』
『うむ。主人がレベルというモノを上げればいけるのではないか?』
「敵を弱らせるのはお前らの役目な」
『『『!?』』』
わちゃわちゃと楽しく未来について語っていると……金貨のエリアを抜け、1つ1つの土台の上に様々な武器や魔導具と呼ばれる物が置かれている場所に辿り着く。
そのままお目当ての物に手を伸ばした。
「ん? ……よし」
一瞬何かの魔力に当たった気がしたが、特に何も起きる事なく手に入れる事が出来た。
俺の手の中には、銀色で幅1センチ程度のバッチ型の魔力を帯びた物がある。
「ルシファー、どうやって使うんだ?」
『バッチに魔力を込めながら変化させたい部分を願えば良い……と文献に書いてありました』
ふむ……なら、『魔力・「?」・職業・能力』を変化させるか。
俺はバッチに魔力を流しながら願う。
バッチの光が徐々に収束すると……完全に光が消えた。
『あとは付けるだけです』
「……これでいいのか?」
俺は念の為ステータスを確認する。
————————————
魔影透 人間 17歳 男
レベル【1】
職業【魔法使い】
体力【100】 魔力【500】
攻撃【100】 防御【100】
敏捷【100】 知力【97(固定)】
魅力【80(固定)】
能力【光魔法:1】【魔力感知:10】【翻訳】
————————————
…………よし。
『これでミッションクリアだね』
「そうだな。あとは……」
4人(人間1人、悪魔3人)で後ろの金貨の山に視線を移す。
残念ながら時間が止まっているのでキラキラとは輝いていないが……金貨であることに変わりはない。
「———バレない程度に盗むか」
『うむ、承知した』
『仰せのままに』
『それが良いと思うよ』
俺達は取り敢えず、地球から持参した『空間拡張ポーチ』に詰め込める分詰め込んだ。
後からルシファーに聞けば、ざっと10億円相当の金銀銅貨を奪っていたらしい。
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