第4話 新たな情報
「へぇ……やっぱ広いな」
部屋を出ると、横幅10メートルはありそうな廊下が現れる。
そして廊下側の扉の前にも数人の騎士が待機していた。
「余程俺達のことを警戒してるらしいな」
ま、そもそも勇者が魔王を倒すために呼ばれたわけだからな。
勇者が最初からこの世界の人間より強いかもしれないってことを考えないといけないと思えば妥当か。
だが……この数を相手にするのは流石に面倒極まりない。
鉢合わせないためにも感覚的に後1日、2日位ならこのままでも魔力は持つので、それまでに色々と調べるか……。
そんなことを考えていると、アスタロトが口を開く。
『主人よ、1つ提案があるのだが……』
「何だ? 言ってみろ」
『ベルゼブブの力を使ったらどうだ?』
ふむ……確かに。
アイツならこう言う場面で役立つな。
「ナイスだ、アスタロト。それと……ベルゼブブ」
『何だい、ご主人様?』
アスタロトが座る方とは反対の肩に、ポンッとミニサイズの真っ黒な少年のような見た目の生命体が現れる。
コイツには角や翼は生えていない。
「ベルゼブブ、この城の中を隈無く探索してくれ。食堂的なのがあれば、食っていい」
『やったね。じゃあ早速行って来るよ』
ベルゼブブは嬉々としてそう言うと、身体が一気に分解されるように無数の蝿に分かれた。
ただ、その見た目は意外と気持ち悪く無くて、お目目くりくりのイラストみたいな見た目をしている。
ま、俺がそうさせたのだが。
『ベルゼブブ、しっかりやるのだ』
『分かってるって。相変わらず五月蝿いね、アスタロトは』
『なっ!?』
ベルゼブブはそんな捨て台詞を吐いて、逃げるように辺りに散らばって行った。
『あの小僧……』
「落ち着け、アスタロト……って、拗ねるなよルシファー」
『……ご主人様はドSです』
俺の頭の上にポンッと現れた小さな幼女のような見た目をした黒い生命体———ルシファーがただでさえぷにぷにのほっぺを膨らませて現れた。
どうやら俺に唯一呼ばれなくて嫉妬していたらしい。
「ま、ルシファーもその内出そうとしてたわけだし……そんな落ち込むな」
『……お恥ずかしいところをお見せ致しました。今後とも精一杯精進して参ります』
相変わらず堅いなぁ……とため息を吐いた俺は、廊下で出会った執事らしき人が持っていた短剣を奪い、クルクルと手で遊ばせながら進む。
ただ道は勿論分からないので、己の勘に任せて適当に進んでいると……。
「ここは……図書館的な所か?」
『そうであろうな』
巨大な本棚に大量の本が納められた部屋へと辿り着いた。
丁度いい、ここでこの世界の常識を学ぶとしよう。
もしかしたら面白い情報とかもあるかもしれないしな……!
「お前の出番だぞ、ルシファー。俺も手伝うから、お前も色々と見てくれ」
『お任せ下さい。ご主人様の欲しい情報を必ずや手に入れて見せます』
『…………何故、2人してテンションがこうも高いのだ……』
アスタロトのため息を聞きながら、この世界にはどんな面白いモノがあるのかと興奮に胸を馳せて、本を物色し始めた。
『———ご主人様、この世界の大方の情報は得られました』
『ご主人様、僕も良い情報を持ってきたよ』
体感的に、恐らく1日程度が過ぎた頃。
数万冊にも及ぶ大量の本を1冊10秒程で読んでいたルシファーが言う。
それとほぼ同タイミングで探索に行っていたベルゼブブが帰ってきた。
「よし、まずはベルゼブブから教えろ」
俺がアスタロトと共に読んでいた『神話』というタイトルの伝記を閉じると、ベルゼブブが何てことない風に言った。
『僕はね……この城に隠されたお金とご主人様達を呼んだ理由についてかな』
「ほう……よく分かったな」
お金は兎も角、俺達の召喚理由まで把握するとは……。
少し驚いて目を見張ると、ベルゼブブが胸を張る。
『そりゃあなんたって僕はこの3人の中で1番有能だからね!』
『ぶち殺して差し上げます』
『よく生意気な口をほざいたな。殺すぞ』
「お前ら喧嘩するな」
一応地獄の悪魔のくせに、3人で小さな手や足を使ってポコポコと世にも可愛らしい殴り合いをする。
しかしその殺気はホンモノで、この城にいるどの人間でも耐えられないだろう。
この程度でガチるな。
『こい、お前の時間を一瞬で数億年前に戻して消滅させてやる』
『ご主人様、私はこの2人より優れています』
『僕が1番だよね』
「…………めんどくせぇ。取り敢えず2人は黙ってろ」
『『っ!?』』
『やっぱり僕が1番———』
「ベルゼブブも早く教えろ」
『……はい』
俺がそう言うと、直ぐに調子を取り戻したベルゼブブがちっこい手と腕を仰々しく広げて告げた。
『お金は後にして……ご主人様達が召喚されたのは———この世界、空間ごと魔王によって侵蝕されているから、らしいよ』
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