第91話 巨岩地帯!
遠いなァ、『ヴィーナー巨岩地帯』って。普通に考えて歩きの距離じゃねェよなァ。スケートだから歩いてねェけど。
朝の6時から出発してもう1時間と20分くらいになる。
景色は全く変わらない……というこたァなく、途中から遠くにバカみたいにデカイ岩が現れたんだよなァ。
『ヴィーナー巨岩地帯』って絶対アレじゃんって一目でわかった。なんだっけ、エアーズロック? アレがあんのはオーストラリアじゃねェ? まァなんでもいいけど。
昨日聞いた怪物ってのは気になるが、とりあえず行ってみねェことには判断できんわ。
◆
かなり近づいてきてわかったんだが、地面の感じが岩多めになってきている。なんなら突き出てる岩もたまにある。
つゥかデカイ岩のせいでここら辺全部影なんだけど。まだ3時だぜ? ちょっと寒いわ。
……そろそろ歩きで行くかなァ。ゆっくり慎重に行かないと危ねェ気がする。
よっ、と。
─タタッ……
これアレか。砂岩、ってやつ? マイ○ラは正しかったんだなァ。
─カサッ……!
ん?
変なトカゲ……トカゲ? トカゲなのか? 多分トカゲか? トカゲっぽい何かが枯れ草みたいな植物の近くにいた。
めっちゃトゲトゲしてる。触ったら刺さりそうだぜ。
カッコイイ。けど、ちょっと可愛い。
っと、こんなことしてる場合じゃねェわ。早く石板探さねェと。
◆
1番大きな岩の下にやってきた。
こりゃァもう麓の方が合ってるレベルだわ。全然上が見えねェ。
んでもって意外な事実というか、ただのデカイ岩じゃなくて内側に空間があった。
地下に続いてるのか色んな方向から光が差し込んでいる。
穴の中へ入っていき、ひょいひょいと岩から岩へ跳び移って大穴を覗ける位置まで移動する。
……ん?
『りりるあ、らら……』
『れレレれれれ』
『ら、る、ろろれろ、ああおりリりりり』
大穴の底から聞こえてくる唸り声と共に砂の中からおびただしい程の数の触手が、まるでイソギンチャクのようにうねうねと突き出ている。
キモッ! うわキモッ! 何体いんだよ!? 最悪だろあんなん!
なるほどなァ、確かに怪物ってなるわ。
まァでも体の大半は砂の中に埋まってて身動き取れねェはずだ。
……もしかして、この前のヤツもここから移動してきたのか? だとしたらお疲れさんだぜ。
そこそこ美味かったぞ。
それはともかく石板は……あ!?
触手に紛れていて分かりづらいが、グレーの分厚い板状の物体が見える。
あった! あっ、た……あったけど! どうやってあそこまで行くよォ……?
『りりるろろおいお!』
『ろぉぉぉおあアオレレおおお……!』
マジで多いじゃん。こんなん戦ったら死ぬわ。
しかし、石板は目の前にある。なら、戦うしかねェよなァ! ……その前にちょっとトイレ。トイレ無ェけど。
◆
刀よし、服よし、魔力よし。髪飾り……これ大丈夫かなァ? …………まァ、大丈夫か。靴の中に砂が入らないように足首から氷で覆って……。
すー……はー……。
よし。
─タタタッ、ザサッ!
大穴の端にある中へ流れる砂に乗って飛び込んだ。
バサバサと服が風を受けて靡く。
……いや怖ェ! マ○オもよくこんなん出来るなァ!?
そのまま落下するより怖……いやそれはねェけど。
─ズサァー!
ペッペッ……! 口に砂入っちまった。でも10メートルくらいだったから怪我は無し。
『れれり、ららららラララ!!』
『ぉぉおオオあえレ!』
立ち上がって眼前の岩へ飛び移り、『浄化』で体の砂を落とす。
さァーて、やろうか。
『飛刀・鎖』を構え、触手の異形が集まっている中央をグルっと回るように走っていく。
『ららららぁぁいいリリ!!』
『うぉぉリルるれろられレラぁぁあ!!』
一斉に攻撃が始まる。
次々とやってくる触手は鎖を振り回して斬り捨てていき、飛んでくる岩の破片はジャンプや側転で躱していく。
あァ……! 全力で動くのは久しぶりだなァ……! 最っ高に楽しい!
─ジャラッ! ジャラッ! ヒュンッ!
最早軌跡すら目視出来ない速度に到達している刀が触手を次々と斬り落としていく。
アハハハハッ!! 遅い遅いッ!
『りり、ララりりぃえぅォ……!』
「隙ありィ! オラァッ!」
─パァン!! ブシャッ!
音速の壁を超えた高速の飛び蹴りが触手の異形を貫通した。
そのまま壁を蹴って次の触手の異形へ向かっていく。
もう最後だッ! 全部使っちまおうかァ!
左手だけで鎖を振り、作った氷塊の上を滑りながら取り出した『スターローズ』を連射する。
─バン! バン! バン! バン!
『ららりおおうイイりりロろ、らろ……』
『れれれエえレうあああァァぃいりりり…………』
『あおおううイイイイ!!』
『ルルオいい! るぅ!』
「なんだまだ生きてんなァ! じゃァ死ねェ!」
─ザンッ! バシュッ! ビシャッ!
アハハハハハハハハッ!!
もうゴールは目の前なんだッ! 邪魔をするってんならオマエら全部殺すまで!
地面に落ちた触手ごと凍らせて走りやすい足場を踏み砕いては作り、また踏み砕いては作る。
『ららリオううりり!』
『イイオルロアエオラロオららりいおあ!』
「うるせェ!」
◆
そうやって触手の異形を殺し続けて何分が経っただろう。
「はァ……はァ……! ……ゲホッ、はァ」
……終わった。
全部殺した。
すごく……疲れたぜ……。
氷の破片と触手が散らばる砂の上に大の字で倒れる。
こんなに疲れたのは本っ当に初めてだ……! 明日は全身筋肉痛を覚悟しとかねェとなァ……!
もうそろそろ日が沈む。
さてさて……。
起き上がって石板の方向へゆっくりと歩き出す。
どォも、久しぶりィ。
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