第71話 お見合い?
「彼氏……その雰囲気……なるほど、お見合いの場を中々設けてもらえなかったわけです」
多分だけど想像と違うと思うぜ?
ほら、マキも『なんですかコイツ……』ってすごい嫌そうな顔してる。
……マキさん!? さすがに失礼過ぎるのでは!? 絶対わざとじゃん!?
アカンこれじゃ空気が死ぬゥ!
「あァっと……オレが言うのもおかしな話なのですが、場を潰すような真似をしてしまい申し訳ございません」
「いえいえ! 顔を上げてください。こちらとしても親の都合ですから、むしろこちらが謝罪します。すみませんでした」
……めっちゃいい子じゃん!!
「ほらマキ、失礼だぞ?」
「…………すみませんでした」
すごい渋ったなァ? もうちょっと取り繕ってほしかった。
フロッグ君がいい子でよかったぜ。
「とりあえず、座ってアイスティーでもどうでしょう?」
やべェ、なんて返せばいいのか分かんねェ。
「えェっと、じゃ「いえ、結構です」マキ!?」
ダメだろそれはァ!?
「ヒビキ、帰りますよ」
「いやいやいやいや……!」
「こちらの有名店のチョコもいかがですか?」
「と、思いましたが気が変わりました。ティータイムにしましょうか」
「!?」
欲望に忠実! そんなにチョコ好きなの!? いや確かに超高そうな箱してるけど!
「ヒビキ?」
「あ、あァ悪い」
オレたち3人は椅子に座る。
あっ、この椅子すげェ座り心地いいわ。
……なんかもうお見合いじゃねェじゃん。ただのティータイムだよこれじゃァ。
まァ、最初っからそうするために来てんだけど。
◆
「ヘェ! フロッグ君医者の家系なのかァ!」
「えぇ、僕の代で丁度10代目になります」
マジ? 徳川家じゃん!
話してみたら意外とすぐに仲良くなった。
─もぐもぐ
「10代目、ってなんと……初代から数えて何年経つの?」
「今年で121年が経ちますよ」
「100年前から医者やってんの!? すげェなァ」
「運良く続いているだけですよ」
「謙虚だァ……!」
普通なら自慢するような事なのに、しっかりしてんなァ。
─もぐもぐ
カップからアイスティーを飲む。……うん、最高。
「オレもこんくらい美味い紅茶を作れりゃァなァ」
「ありがとうございます」
さてさて、次のチョコはどれ、に──
「なァ、マキ」
「……んぐっ、なんですか?」
「チョコ、そんなに美味しかった?」
「? はい、美味しかったですよ。…………あっ」
マキの顔が赤くなっていく。
16個あったチョコがもう0個だよ……。
オレ1個しか食べてないし……欲しい形のやつあったんだけどなァ……。
「あははっ、美味しいですから仕方ありませんよ」
「まァそれは確かに」
「その……ごめんなさい」
年相応な一面だ。
「……ところで、ヒビキさんはイトマキさんのどのようなところが好きなのですか?」
「「えっ?」」
急にぶっ込んでくるじゃん。
「そうだなァ、色々あるぜ? 顔、スタイル、声、性格、戦ってる時の姿、とかなァ」
「ひ、ヒビキさん……!?」
「なるほどなるほど」
「でも、たまに見せるクシャッとした笑顔が1番好きだ! 超カワイイぜ?」
「ひ、ひひヒビキさん! か、かか可愛いだなんてそんな……!」
うん、かわいい!
◆
「こうやって歳の近い人と話すのは楽しいです」
「はい、私もそう思います」
「オレもだ。アイスティーも美味かったし最高の一言だ「あら〜?」…?」
宴もたけなわといったところで、思わぬ乱入者が来た。
「あらあら〜? 奇遇ですわね、お姉様」
マキより幼い顔をしたマキによく似た少女が、メイドさんを引き連れ屋敷の方から歩いてきた。
つ、ツインドリルお嬢様だ! リアルにいるんだ! てかもう悪役令嬢じゃん!
「……」
いや怖ッ!? 目付きがオレより悪くなるとか、相当嫌いなんだなァ……。
「貴女は……ウズマキさん、ですね?」
「えぇそうですわ! 貴方は『ウッドベース家』のフロッグ様ですわね? 覚えていてくださったなんて光栄ですわ!」
グンっと距離を詰めてきてフロッグ君の手を両手で握るウズマキちゃん。
「あ、あはは……」
フロッグ君、グイグイ系苦手なのか? お淑やか系がタイプか?
「ウズ、何をしに来たの?」
「ひっ……お顔が怖いですわ、お姉様」
そう言ってフロッグ君の後ろに隠れた。
……いや、なんで? てか今の多分演技よなァ?
「……」
「ま、マキ……?」
「……………………帰ります」
振り返るとすぐに歩き出した。
「あァー……じゃァオレも「お待ちください!」……あ、オレ?」
「はいですわ」
『はいですわ』!? マジでそれ言うやついるんだ!?
「ヒビキ、待たなくていいですよ」
マキがオレの左手を掴む。
「いえ、お話だけでも!」
ウズマキちゃんがオレの右手を両手で掴む。
あ、おっとォ?
「ウズ、人の彼氏に軽々しく触れないで」
「かっ、彼氏ですの? ……いえ、ウソですわそんなの。お姉様のことですから、お金で雇った…………今日ってお見合いではありませんこと?」
気づいてしまったか。
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