第33話 解放の儀?
今、なんて?
『眷属解放の儀を行う』って言った……よな? 言ったよな? あれ、聞き間違い?
隣のマサムネさんに小声で問う。
「ちょ、ご主人様。今『眷属解放の儀』って……」
「ああ、その言葉の通りの意味だ」
「な、なん─」
「ミカミ・マサムネ公爵眷属ヒビキ、前へ」
オレが言葉を続けるよりも早く、主催者によってその儀式が始まった。
「行け、ヒビキ。……最後の命令というのは、やはり感慨深い」
「……な、あ」
トロフィーをマサムネさんに預け、一人で前に進む。
「今この場におられるのは、代々続く伝統ある眷属育成大会を最後まで
理解が追いつかない。
「その美しさと技術を認め、我々悪魔は多大なる敬意を払う。そして魅せてもらった
なん…いや、え? ど、どういう……?
─パキンッ
拍手と歓声の中、首輪から何かが割れる音だけが頭に響く。
「ヒビキ」
「ちょっとマサムネさん、これはどう…い……う」
……まさか。
「優勝おめでとう」
…………こういうのは、先に説明しといてもらわんと困んだがなァ……。
まァ、でも─
「マサムネさんのおかげです。ありがとうございます」
◆
その後の話をしよう。
なんかよく分からないままオレは奴隷から解放され、自由の身となった。
とはいえ、いきなり家から追い出されるとかではなかった。
簡単にいうなら……一人前になった、ってところかな。
今までも割と待遇は良かったが、さらに良くなった……気がする。
「はァ……」
ぼふんっ、と音を立ててベッドに背中から倒れ込む。窓から差し込む月明かりが、戦い終えた体に心地良い。
今日は満月だな。……あ、だから今日だったのか。やっぱ満月はイベント起こりがちだわ。
モゾモゾと動いて掛け布団を自分に掛ける。
……てか久しぶりだな、一人で寝るのも。何ヶ月ぶりだ? 少なくとも半年は経つと思うが。
にしても、今日はめっちゃ疲れたなァ。魔力がほっとんど残ってねェわ。すっからかんもいいとこよ。
…まだ手が震えてやがる。ウケるわ。そんだけ強烈な印象を残してったってことか。まァでもそうだよなァ。
「……はぁ」
一段落、って感じだな。
しっかし……奴隷から解放されたのは思わぬ収穫、棚から牡丹餅だよマジで。
これからあの石板を探すことに専念出来ればいいのだが……アレ、ランダムに転移するらしいじゃん?
だから、もしかしたら『日本に帰る方法』を見つけてから探す方がいいかもしれねェな。
……その『日本に帰る方法』は石板に接触しないと判明しない、っていう可能性があるのはジレンマだなァ。
こっちに来たのが10月の20……22? いや、23か? 多分23日…だと思うから、今日で……大体半年は経ってるのか。
なんかもう帰れさえすれば御の字だが、欲を出すなら7年……いや、6年以内に帰りてェ。予想だが本人を証明するアレコレが面倒くさくて、時間掛かりそうだからなァ。
幸い、学生証とかカバンの類は全部『収納』にあるしなんとかなりそうな気はする。
とにかく、そのためなら石板の情報を必死こいてかき集めでもしないといけねェのは確定か。
どこだったかな、『動物の国』だったか? 石板についての情報が載ってる新聞を出してるとこって。
まずはそこに行って、過去の記事からデータを集めて情報にするとしようか。
今日はもう寝る。
おやすみ!
◆
「おはようございまァすレイイチさん。なんかオススメの銃ってあります? 初心者にも扱いやすいような」
「いや開口一番それ? てか、なんとか大会はどうなったよ?」
「もちろん勝ちましたよ! 優勝ですねェ! で、オススメの銃教えてください」
「あー、うん。色々聞きたい事あるけどとりあえず、優勝おめでとさん。んで、銃は俺より直接店で聞いた方がいいと思う」
いつものようにレイイチさんとギルドで話す。
今日は6月3日。この時期になると、気温も高くなってきたのでお互いにコートは着ていない。とはいえ、まだ長袖長ズボンの格好が丁度いいが。
それで。
この前は探す事がどうのこうの考えたが、直近の問題として銃の未所持が挙げられる。
これから各地を回って情報を集める身としては、やはり自衛手段の手数は増やしておきたい。あと単純に遠距離攻撃手段も欲しい。『氷塊』『熱線』『飛刀・鎖』だけじゃキツイ。
なのでこうして普段からショットガンを肩に掛けているレイイチさんに聞いているわけだ。
「てか、その首輪……」
「あ、気付きました? これマサムネさんから貰ったチョーカーなんですよ。似合ってるでしょう?」
濃い緑色の宝石があしらわれた落ち着いた雰囲気のある、大人っぽいチョーカーだ。
この前までの首輪からレベルアップした感じがするので、かなり気に入った。
「似合ってはいる……が、いいのか? それで……」
「問題なしでェす」
装飾の有無で人の印象で結構変わるもんなんだな、とつくづく思う。
鏡に映る自分はクール系美女だったからなァ。とはいえ、相変わらずの目つきでキツめの印象はあったが。
「ちなみにこの宝石、『蛇眼石』って言うらしいです」
「……初めて聞いたけど、それ絶対高いやつだよなぁ」
「まァそうでしょうねェ」
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