第29話 大会!
「ここに眷属育成大会の開催を宣言する!」
─ワアァァァァァ!!!
なんだかすげェところに来ちまったんだなァ……。
コロッセオみたいな闘技場の中央付近で、周りの雰囲気に圧倒されながらそう思うオレ。
この大会、規模がバカデカイ。ゲームの中に入った気分だわ。気分だけな。
◆
さて、ここは何処かというと……まァ、町の中にあるものすごく大きい闘技場だ。
雰囲気がさァ、マジで中世ヨーロッパなんだよなァ……。石の硬さを肌で感じるわ。あ、コレ比喩表現な。
オレとマサムネさんは控え室に移動した。
「さて、これからトーナメント第一回戦だ。ヒビキ、緊張しているか?」
「そこそこしてますねェ。でもちょっとワクワクもしてます」
こういう空気感初めてだからなァ。
オリンピックとかで前出て試合する人ってこんな気持ちなんだろうか。
「ルールは覚えているな?」
「相手を戦闘不能か気絶させればいいんですよね」
「ああ。だが、注意しておく事が一つ」
「ワンパターン化は避けること、ですよねェ?」
「ああそうだ。あくまで大会、ショーだ。臨機応変に美しく、な」
めちゃくちゃ難しくねェかそれ?
まァ、やるしかないんだけどな。体育館並に広いから……氷塊スケートは有効活用出来そうだ。
「相手の情報とかあればよかったんですけどねェ……」
「仕方ないさ。今回はそういうレギュレーションだ」
はァー、ヤダヤダ。
流石に即死攻撃が飛んでくるこたァねェだろォが、それに準ずる攻撃の可能性は大いにあるんだよなァ。防御と回復でのゴリ押しは評価低くなりそうだから、躱すしかねェか……。
「さて、時間だ。ヒビキ、殺さない程度に頑張ってこい」
「はい!」
マサムネさんの面子にも関わってくるし、何より世話になった分もあるから勝たねェとな。
◆
大歓声、という程でもないそこそこの歓声。まァ一般公開されてるわけじゃねェしなァ。
そんな緊張感漂う会場で、オレは対戦相手と向き合っていた。
「……」
「どうもよろしくでェす」
「……女だからと容赦はできない」
「いいですよ、こっちも殺さない程度でやりますし」
顔が怖ェのなんの。あと、スキンヘッドに大剣は絶対強いじゃん。ゲームの中ボス感パネェ。近距離戦はなるべく避けるかァ。
『さぁさぁ! 今大会イチオシのカード! 北側はミカミ・マサムネ公爵眷属のヒビキ選手!』
手でも振っとく? ども〜。このご尊顔を目に焼き付けろよォ〜。
『対する南側はイカリ・ゴンドウ伯爵眷属のアンプ選手!』
公爵と伯爵だと伯爵……いや、公爵の方が上か。『こう こう はく し だん』だからな。漢字分かんねェけど。
てかマジでリアクション薄いなコイツ。
『果たしてどちらがより美しい戦いを出来るのか!? 間もなく開始です!』
歓声が引いていき、静寂がステージを包む。
いよいよだなァ。
『両者構え!』
オレも相手も、お互いの武器に手を掛ける。
まァ、オレは開幕から氷塊でパァーっとやるつもりだから、フリだな。
『開始!』
「氷塊ッ!」
有無を言わさず先手必勝!
前に踏み込んだオレの足元から相手の脚まで、一直線に凍らせる。命中。
「っ」
氷が大剣で砕かれる。流石に早いな。まァでも─
生じる一瞬の隙で刀のなぎ払いを腕に当てる。
「─相性が悪かったなァ」
「クソっ…」
カンペキに流れを掴んだ。氷塊での足止めと飛刀の中距離攻撃がマジで相性良すぎる。
体を回しながら鎖を操作する。
2、3、4、5……4発目だけは大剣でガードされたか。
─ワァァァ…!
いいねェ、会場が湧いてるぜ。
まだまだいくぞ、って突っ込んでくるのかァ!? すげェなコイツ!
氷塊見て突っ込んで来るってことは、なんか策でもあんのか? それとも単純に焦って…焦るかァ? 魔力はめちゃくちゃ余ってるし、とりあえず撃ってみるか。
「氷塊」
「ふんっ」
足元を伝う氷を横に回避される。
結構凍らせる速度は上げたんだが、それ以上の速度で躱されちまったなァ。なるほど、確かにこれ以上ない対策ではある。
大剣を振りかぶって突撃してくる。
「くらえぇ!」
─バァン!
振り下ろした衝撃で地面が大きく揺れる。……コレ当たったら即死では?
回避自体は余裕だったが、氷でのガードは見込めなさそうだなァ……。
振り下ろしたところにすかさず氷塊。今度は腕を凍らせ、背後へ移動。
─ピシピシピシィィッ!
「ぐぅ…だがまだ動「くつもりか? 隙だらけだぞ? オレは別に構わねェけど」……ッ」
背後から首に突きつけた刀が、ポタポタと血を垂らしながら鈍く太陽光を反射する。
「……降参だ」
『決着!』
─ワァァァァァ!!
会場に大歓声が響く。
よっしゃァッ! 一回戦突破! 気分がいいなァ!
「っと、溶かすからちょい待ち。熱線」
「そんな魔法まで……。最初から勝ち目など…」
「でもやってただろ? 大会ってそういうもんだし」
「そう、だな」
◆
「やりましたよご主人様! 一回戦突破です!」
「ふふっ。よくやった、ヒビキ」
頭を撫でられる。
なんか……こう……嫌じゃねェ…のがなァ……。元男としてのプライドがァ……。
「えェっとォ、そのですねェ……」
「よしよし。可愛いなヒビキは」
あっあっあっ。
「この調子で次も頼むぞ」
「あゥ、はい…!」
やべェ、おかしくなりそう。……すでになってるって? そんなことねェ…だろ。多分。
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