第27話 駅?

 

3月も終わりに差し掛かった今日この頃、地球の皆様はいかがお過ごしでしょうか。入学式の準備は進んでいるのでしょうか? オレはまだまだ寒いこの町で靴を買いに来たところです。


本来ならオレも入学式の準備とかでバタバタしていたのかもしれないが、そうはならなかった。悲しいなァ。


普通に高校を卒業して大学行きたかった。切実にそう思うぜ。


大学でそこそこ楽しみながらゲームして、いい感じの会社に入って稼ぎを家に入れたかった。


オレを引き取って学校に通わせてくれた両親に、ちゃんと恩返ししたかったんだがなァ……。


……いや、『恩返しする』だな。


石板の存在をまだ直接この目で確かめたわけではないが……オレは確定だと思う。


アレに触って来たんだから、帰る方法も触ればいいはずだ。……流石に希望的観測が過ぎるか。


とにかく、石板の情報を集めて地球に帰ってゲームと親孝行をする! コレがオレの最終目標。


今の目標は、眷属なんちゃら大会で優勝することだけどなァ。


だから……絶対に関係があるであろうこのカードキーも、今は収納し仕舞っておく。



靴……どれがいいんだ?


店内のどこを見ても靴がある。種類は様々、どれもが高級素材で出来ている。


この中から新しいのを選ぶのか……。多すぎてどうしたらいいか、全くわっかんねェ。店員に聞いてみるか? 店員……あれ、どこいった? いねェぞ。


……ならいいや、情報なしに自分で選ぶのもアリだ。


今履いてる運動靴に近いのがいいなァ。と、なるとォ……ブーツは無しだろ? んで、スクールローファーみてェなのも無し。


……ここら辺、か?


うーむ、全部めっちゃ高ェ。10万超えてるやつあるし。


靴なんてこだわりとかねェから、いっつも安いやつしか選ばなかったんだよなァ。精々、式用の革靴くらいか?


……お、これいいじゃん。今履いてるやつのデザインに似てる。


でも4万かァ……。これ買うならゲーム買うよなァ……。


まァこっちにはゲームが無ェから、その分のお金はこういうのに使うけど。


……試着したほうが良いか。



「〜〜♪ 〜〜〜♬」


いい買い物出来たなァ。


小さく歌いながらニコニコ顔で帰り道を歩く。


4万超えの靴を買ったのなんて初めてだが、自分の稼いだ金で買い物をするのは気分がいい。


─ガガガガ!


ふと、音の方向を見る。


工事中の建物がある。確か……駅を造っているんだったか。マサムネさんが言っていた。


駅。そう、駅だ。


最近気がついたんだが、この世界鉄道あんだよな。


といってもまだこの町には無いんだが。


あるのは『砂漠の国』『海の国』『鉄鋼の国』とかで、蒸気機関の長距離列車らしい。時代だねェ。


そういや、この前行った採掘場で採れる鉱石がレールの一部になってるとかも言ってたな。適当に聞き流してたからどこにどう使われてるとか覚えてないわ。


駅が完成したら、他の国へ行きやすくなるから嬉しいな。石板を追えるかもだし、各地のニュースも入りやすくなるでしょ。


……まァ大会が終わったら奴隷でなくなり自由の身、とはならなさそうだが。



「お昼ご飯なんかいいのあります?」

「……無かったら?」

「この巨大カラスで焼き鳥作って食います」

「相変わらずのようで」


野生のカラスはニワトリと違ってあんま美味しくねェから、普通に店でなんか食った方がいい。


依頼終わりに全身凍結済みカラスの脚を持ち、地面に引きずりながらオレはレイイチさんと歩く。手が冷てェ。


「あ、そういやこの前の触手のアイツ。アレ結局食ったの?」

「触手1本分ですけど、完食しましたよ。めっちゃ不味かったですけどねェ」

「マジか……」

「んな引かなくてもいいじゃねェですか。アレのおかげで魔素増えたんですよォ?」

「へぇ、魔素が。……マジで!? アレで!? あんなのが!?」


それな。


「意味分かんないですよねェ。レイイチさんはそういうの聞いた事とかありますか?」

「いやいや無い無い、そんなの初めて聞いたわ」


やっぱアイツ、なんかおかしい。食わない方がよかったか? でもなァ……殺したヤツは食うだろ?


「ミカミ公、何にも言ってなかったのか?」

「特には。健康被害も今のところないですし、こうやって自由に外出させてもらってますからねェ」

「それは確かに。ミカミ公は奴隷に対して結構大切に扱うからなぁ……」

「あァー、そういえばオレより前にいた奴隷の人の話、噂程度ですけど聞いた事あります」


なんだったかなァ、オレンジ髪でなんかの獣耳っ娘だったんだっけか? 写真も絵も無ェからなァ。


「俺も子どもの頃に見たことあるんだけど、めっちゃ美人だった」


さてはレイイチさん、子どもの頃からまるで成長してねェのでは?


「少なくとも、子どもながらに『美人』が印象に残るレベルだったってことですかァ。……さては初恋?」

「………………いや別に?」


わっかりやすッ!?


「まァ、いいや。結局、その人どうなったんですか?」

「ミカミ公の奴隷じゃなくなった後に、『砂漠の国に行く』とは言われたが……」


砂漠の国かァ。


「……てか言われた、って……直接ですか?」

「おん、直接」

「なんで砂漠の国に行かないんですか!? 初恋を追いかけましょうよそこはァ!」

「いや当時10歳だぞ俺!」

「10歳なら行けるでしょう!?」

「無茶言うな!」

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