第25話 掃射開始?
はてさて、一体アイツは何に分類出来るんだろうな? オレは『突然変異したネズミ説』でいこうと思う。
「……あ」
「どうした?」
「いや、アイツめっちゃ叫んでたなァ…って思いまして」
「叫ぶ? オオカミのような遠吠えか?」
「えェっとォ……説明が難しいなァ……アレです、ものすごく人間の声みたいでした」
「……なるほど。発声器官はある、と」
「はい、なんか『らりらアアー』的な感じでした」
あれどっから声出してたんだ? 冷静になると疑問が大量に浮かんでくるなァ……。
………………よく考えたら、あんなのが自然界に何体もいる可能性あんのか。え、怖。やっぱ考えんのやめよ。
てか背中スースーして寒いわ。今思えば、背中から熱線を撃つのは間違いだったなァ。左手後ろに向けて熱線使っときゃよかったぜ。
絶対なんか言われるなァ、コレは。
「ただいまー…って、え……え?」
「ほう、君がレイイチ君か。いつもウチのヒビキが世話になっている」
「あ、はい! その…こちらこそいつもお世話になっております!」
レイイチさんテンパりすぎてて草。
◆
「え、俺たちまたアイツと戦わなきゃいけないんですか……?」
「いや、ヒビキが確定参加なだけだ。君は別に参加しなくてもいい」
「オレは確定参加なんですねェ……」
場所はギルドの2階。いるのは、オレとマサムネさんとレイイチさん。それに加えて、何人かのめっちゃ武装した軍人? っぽい人達。
作戦会議……とはちょっと違ェか。ただの情報共有だし。
さて、結論から言うとアイツは殺すことになった。
飼い殺しにして生態調査でもした方がいいんじゃなかろうか。
まァ、専門家とかお偉いさんがそういうなら従うけど。
「1つ質問あるんですけど、いいですか?」
「どうした、ヒビキ」
「殺した後、あの触手の生物ってどうすんですか?」
「それはもちろん、焼き払う」
焼き払うの!?
「えェ…?」
「どんな病原菌を持っているかも分からないからな」
オレその触手に右肩貫かれ掛けたんですが? てか刺されたんですが? いや理論上は浄化と回復でなんとかなるらしいけども。
「でも殺すなら食べないとですよね?」
「……え、お前アレ食べようしてんの? 正気か?」
「ヒビキ、さすがにそれは……」
2人がすごい目でこちらを見ている。なんなら周りの人達もオレを見ている。
「いや、だって……この先アレを食べる機会なんてなさそうですしィ……触手の1本でも……」
「いや、だからって食おうとは思わないだろ普通!?」
「オレ普通じゃねェですから!」
「満面の笑みで言うことではないぞ? だが、そうだな……病原菌、寄生虫、その他の人体への害になるものを排除出来るなら食べてもいいぞ?」
なるほどね。
血抜きして、内臓を処理。触手の部分を切り分け、凍結。暫く放置した後、熱線で解凍アンド加熱。
食べるまでの工程を指折り数える。
うん、これで大体なんとかなるなァ。
「塩の用意をしないとですねェ!」
「塩をなんだと思ってんの?」
「仕方ない、帰ったら調理器具と……医者を用意するように伝えておこう」
完☆全☆勝☆利
◆
というわけで、再びボーリン採掘場。結局レイイチさんも付いてきた。
銃器の使用許可を取るのに少し時間が掛かっていたが、無事に許可が降りた。
えェー、それでだ。既に復活したアイツは、崖にへばりついていて……大変キモイです。はい。現在進行形で。
「それで、ご主人様?」
「どうした?」
「なんか前にいる機関銃部隊からすごい圧が伝わってくるんですが」
「ああ、皆
確実に殺す気じゃんね☆
いや、ガチでヤバくね? 機関銃だよ? ゲームでしか見た事ねェよ? これで蜂の巣にされるアイツが気の毒になるレベルだぜ……。
そんな僅かな同情心をアイツに向けていると、マサムネさんが軍人さん達と話している事に気づいた。
「どうだ? 準備出来たか?」
「はっ! 準備万端であります!」
おォ…すっげェ。映画で見るようなやり取りだ。
「な、なぁ、ヒビキ」
「?」
「……これ俺だけなんか場違いじゃね?」
「別にそんなことねェと思いますけど……」
見た目だけならレイイチさんもやり手の軍人感あるし。服装的には『ハードボイルドな探偵』、もしくは『トレンチコート着てるベテラン刑事』だけど。
「ヒビキ、準備出来たぞ」
「あ、分かりましたァ」
「よし、やれ」
「総員構え!」
─ザザッ
「撃てっ!」
─ダダダダダダッ!!
……わァ、戦時中の記録を残したビデオでしか聞かねェような音してる。
「しかと目に焼き付けろ! コレが『銃の力』だ!」
『らららあぁぁりりるろええろあ!!!』
銃弾の嵐が触手の生物の体を壊していく。
「止めっ!」
時間にして約5秒。大量の血を撒き散らしながら崖から落ちてきた。
……ちょっと、思ってたより酷いなこれは。まァ、人殺すための武器が弱いわけねェから当然といえば当然の結果なんだが……。
てか可食部残るか? コレ。流石のオレでも砂利と鉛と血でドロドロになったのはなァ……。
「よし、ヒビキ」
「なんですか? ご主人様」
「アレの死亡確認をこれから行う。付いてこい」
「え」
それはどういうこと、って体が勝手に動くゥ〜。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます