第24話 依頼達成?
─ガッシャアァァン!!
崖に造られた足場が崩れていく。
『るらああアアれられられらられ!!!』
落下と大量の金属が落ちてくる衝撃で、異形の生物はぐちゃぐちゃになった。血を撒き散らしながら、触手が垂れ下がる。
あんだけ盛大にいってもなァ……死んで無さそうなんだよなァ。現実の生物として考えてもそうだし、ゲーム的なら尚更。潰れたタコみてェでウケる。
って、さっさと離れねェと。
「アイツ、動きが止まったぞ」
「あんだけ血が出てたらそりゃァ、気絶でもしてるんじゃないですかねェ? ……いや気絶っていう現象があの生物にあるのかは分かんねェですけど。…よっと」
氷の道から降り立つ。
残ってる魔力は6割くらいか。これなら町までダッシュしても余裕だな。
「……あ、写真!」
「うおっ、どうした急に」
「レイイチさん! シャッターチャンスですよ! シャッターチャンス! とりあえず、依頼は達成できます!」
「……そうじゃねーか! えーっと、こうか」
─パシャ!
勝ったな、銃買ってくる。
……あ、ヘルメットはもういいか。外しとこ。
◆
「てかよく考えたら、別にアレってオレたちで対処する必要ねェですよね?」
「……ねーな」
「ですよねェ……」
「「…………」」
段々と速度が下がり、やがて走るのを止め歩き始めた。
「正直、出会う前から『逃げ』を選んでた時点でオレたちがアレと正面切って戦うのなんて無理ですよね?」
「無理だな。ショットガンがあってもアレは駄目だ。あと単純に気持ち悪い」
それな。激しく同意するぜ。あんなんこの世に存在してていい生物じゃねェ。バイオ系統に出てくるクリーチャーだろ。深海生物ですらあんなキモくねェぞ? なんで全身肌色なんだよ。あんなん子どもが見たらトラウマもんだぞ?
「一応、ギルドに報告しとけばいーか」
「ギルド以外はいいんですか?」
「あー、国の守衛的なやつにはギルドから報告されるようになってんだ。だから、俺たちが直接言いに行く必要はないんだよな」
「ヘェー」
アレか……って言って上手い例えが思いつかねェわ。交番に行くより通報する、とかそんなとこか? いやでも実際にギルドに足運ぶわけだしなァ……。
まァ何でもいいか!
「ま、何にせよ急いだ方がいいな。アイツが復活して移動し始めたら面倒だ」
「もし町に来られたら、大変な事態になるのは想像に難くないですからねェ」
クマが出没したー、とかそんなレベルじゃねェだろうし。
「……というか、レイイチさんはアレ見た事あるんですか?」
「ねーな。完全に初めてだ。まさかこの国にあんな生き物がいるなんて思いもしなかったぜ」
「やっぱレイイチさんも初めてだったんですかァ……」
本にはなかったが、マサムネさんなら知ってっかな?
……お腹すいた。
「レイイチさん、この後どっかお昼行きません?」
「え゛、アレ見た後だと食欲湧かないんだけど……」
「えェー?」
しゃあねェ、1人で食うか。
◆
レイイチさんがギルドで異形の生物についての報告をしている間、オレはむしゃむしゃと1人でお昼ご飯を食べていた。
やっぱ動いた後に食う肉ってのは、なんでこんなに美味ェんだろうな? …はいそこ、『流れた塩分がどうのこうの』とか言ってるヤツ、モテねェぞ。こういうのは気分の問題だから。わかるー、とか言っときゃいィんだよ。
「……食ってるし」
レイイチさんが報告を終え戻ってきた。
「レイイチさんも買ってきたらどうです? このハンバーガー美味いですよ」
「……そんな美味い?」
「はい」
「買ってくるわ」
「行ってらっしゃーい」
すぐに視線を戻し、食べ続ける。
……マジ美味ェ。あとこの紅茶も美味い。
「ごちそうさまでした」
「いい食べっぷりだったぞ、ヒビキ」
「ッ!?」
うおッ!? ビックリしたァ……。
「脅かさないでくださいよォ、ご主人様」
「ふふっ、悪かったな」
オレの正面の椅子にマサムネさんが座る。
いや、そこ、レイイチさんの……まァいいか。
「それで、アレですよね。異形の生物について聞きに来たんですよねェ?」
「ああ、今日は早めに仕事を切り上げてきた。……だがまずは、無事で良かった」
「…っ、その、心配掛けて…ごめんなさい」
「ああ、心配した」
向けられる優しい表情に目を合わせられない。
「しかし、よく生きて戻ってきた。俺は嬉しいぞ。そうだな、次は肩に怪我を負わないように」
バレてーら。……浄化で血痕は消せても、穴は残るからか。
「すみません。次は全部刀で弾きます」
「その心意気やよし。いい経験になったみたいだな」
良い…のか? まァ滅多にない経験ではあるだろうが。
「さて。話は変わるが、先程この写真を見させてもらった」
なんか深刻そうな表情。そんなやべェ…わ、うん。見た目がアレだもんなァ。
「俺もこんな生物は初めて見た。はっきり言って、ものすごく驚いている」
驚いてるようには見えねェんですけど……? まァいいや。
「じゃあ、『新種の生物』ってホントに新種の生物なんですねェ……」
「ああ、恐らくな。しかし……コレは、どの分類の生物だ……?」
「分類? 哺乳類とか爬虫類とかそォいうのですか?」
「そうだ」
「なるほど」
確かにそう言われると気になるなァ。どう考えても哺乳類じゃねェだろ? 鱗がないから爬虫類でもねェし。
……イソギンチャクって考えたら……軟体動物?
分かんねェわ。
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