第21話 調査依頼?

 

3月ってさァ、春っていう割には寒いよなァ……。


なんて小学生並みの感想を述べながら、今日も依頼という名の害獣駆除に勤しむ。


というか、日本じゃねェからそら寒いよなァ。多分日本よりも緯度が高い……いや、低い? どっちだっけ? とにかくこの国は北の方にあるから寒い。


この前世界地図を見たんだが、元いた地球とそこまで変わったようには見えなかった。


大陸の形はかなり違うが、海と陸の割合が7:3なのは同じだった。それに、北極と南極も存在する。


日本に限りなく近い島国も確認できた。


公転周期は365日だし、自転周期は24時間。


マジで平行世界、パラレルワールドって感じするぜ。


まァ、時代的には19世紀なんだが。


…っと。ギルドに着いたな。この道もとっくに慣れた。


扉を開け、中に入る。周りからチラチラ見られているが、いちいち気にするのも面倒になった。てかむしろ、そうやって見られるほど自信が持てるようになった。


いつものテーブル席まで歩いていく。


「よう、ヒビキ。今日も朝から大変だな」

「おはようございまァす。いやァ、美人は辛いですねェ!」

「謙虚さの欠片も無い」

「自信に満ちている、って言ってほしいです」


新聞を読むレイイチさんの反対側の席に座る。つまり正面。


「さて、依頼更新まで待つとしましょうかァ」

「そうだな」


9時まで暫くの時間がある。……ヒマだ。


「……レイイチさァん」

「どした?」

「石板の情報無いですかァ?」

「んー、無いな」

「……」

「睨んでも情報は増えねーぞ?」

「分かってますよ……」


分かってるが、納得いかねェ。


資料室で頑張って集めようとしても、石板について書かれている事があまりにも少ないんだよなァ。


加えて、石板に触ったやつがどっか飛ばされたとかは一つも無し! ふざけんな! って感じ。


「そんなに石板に執着する理由は……」

「前にも言いましたけど、それは秘密ってことで」

「そういやそうだった。完全に忘れてたわ」

「気をつけてくださいね」



「……ん?」


『ボーリン採掘場に現れた新種の生物の調査』……?


「なんか珍しいのがあるな」

「オレは初めて見ましたよ。調査、なんてあんですねェ……」

「……受けるか?」

「どォ、しましょうか……」


色々やってみたい気持ちはあるんだがなァ……ランク8の依頼だし、リスク高くねェ? 今オレのランク6だし。


「調査の依頼って結構楽だぞー?」

「え、そうなんですか?」

「あぁ。だって遠くから観察して姿形を記録すればいいだけだしな」


そうなのか。


「……いやでも、それなら何でランク8になってんですか?」

「んー、多分場所だろうな」

「場所? 『ボーリン採掘場』って、西の方にあるやつでしたっけ」


なんか崖に造っためっちゃデカイ採掘場だった気がする。写真があったからよく覚えてる。


「って、あァ、そういうことですか」

「そう。まともに戦うのは難しいし、武器も制限される場所だからランク8の依頼ってわけ。あと、最近原因不明の崩壊が相次いでいる」


原因不明……って言ってるけど─


「十中八九その生物のせいですよねェ」

「だろうなー」

「……まァ、なんとかなりそォな気がします」


『飛刀・鎖』は短刀として使えるし、落下にさえ気ィ付けてりゃァなんとかなるだろ。


てか正面切って戦闘する訳じゃねェし、むしろメモ帳とかカメラの方が必要だよなァ。



一時間掛けてやってきましたは『ボーリン採掘場』!


なんてテンションを上げてはみたものの、目の前にそびえ立つ崖に圧倒されちまうな……。


「見た感じ、『新種の生物』とやらが外壁にくっ付いていたりは無いですねェ」

「だったら楽だったんだが。やっぱ洞窟内だよなー」

「あのー、調査依頼を受けていただいた冒険者の方でしょうか?」


作業服に身を包んだ男性が話しかけてきた。


「そうです」

「やはりそうでしたか! 申し訳ないのですが、こちらの採掘場にはいくつか決まりごとがございまして──」


色々説明されたが、つまりは─


『足場は破壊しない』

『爆弾は使わない』

『看板とかを壊さない』

『火気厳禁』

『鉱石の持ち出し禁止』

『崩落に注意すること』

『壊したら報告』


「─こんな感じでいいんですよねェ?」

「概ねそうです」


ルールは守らねェとな。自分の身を危険に晒す趣味はねェし。


「懐中電灯とカメラは使っても問題ないよな?」

「ありません。……あ、忘れておりました! 作業用ヘルメットをお持ちしますので、少々お待ちください」


近くの事務所的な場所へ走っていった。


そっかァ、ヘルメットかァ。着けてねェと危ねェわな。落石に注意するならヘルメットが必要か。まァ、崩落には効果が薄いだろうが。


てかこの時代ってヘルメットあんだね。


……いや、鎧として昔からあるか。


「お待たせ致しました! こちらをご使用下さい」


完全に工事現場のやつだ。安全第一とは書かれてないが、作りも結構まんまだ。すげェな。


「おう、ありがとさん」

「ありがとうございまァす」


被って、首の下で顎紐止めて……よし。


「うわ、レイイチさん全然似合ってないですねェ」

「うるせぇ。そういうヒビキも似合わな過ぎるわ」


まァ、ヘルメットなんてそんなもんだよなァ。


「これで準備オーケー?」

「安全第一でお願いします」

「了解でェす」

「そんじゃ、行きますか!」

「行きましょォ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る