第19話 新武器?

 

「『熱線』!」


不可視のレーザーが巨大なカラスを溶断する。


空中で2つに分かれた体は、激しい炎に包まれながら岩へと墜落した。


「キャンプファイヤーだ! キャンプファイヤーですよ!」

「殺意もテンションも高過ぎる」

「ショットガン持ってる人に言われたくはねェんですけど?!」

「ショットガンよりも酷い状態の死骸になるとかやべーからな? 分かってる?」

「……確かに」


冷静に考えたら、下手なスプラッター映画よりも酷い状態なのは確かだ。こりゃァ、モザイク必要だ。


「まァでも? 怪我なく高ランク依頼達成出来ましたし、いいじゃないですか」

「危ない場面はあったが…確かに俺一人じゃこうはいかなかったか」

「オレ一人でもそうですよ。やっぱショットガン強ェ」


剣振ったり、蹴ったり殴ったりが馬鹿らしくなるレベルには武器としての格が違うわ。


火薬を発明した人……というより、今の形状の銃を考えた人は間違いなく天才。褒めて遣わす。


「とりあえず、消火してきまァす」



無事にカラスを駆除したオレたちは、ギルドに戻って報酬を受け取った。


2人で6万エル、つまり1人3万。カラス1匹への対価としてはいささか貰いすぎな気もする。


遠慮なく貰うがな。


近くのテーブル席へ移動する。


「もう2月も終わりそうだな」

「今日23日ですもんねェ。3月に何かあんですか?」

「あるぞ。俺の行きつけの居酒屋で新メニューが出るらしくてな、今から楽しみなんだよなー」

「そうなんですねェ……」


居酒屋かァ……。行ったことねェからあんま想像出来ん。たまにドラマで見るくらいか。居酒屋が出てくるようなゲームもやらなかったしなァ。仕事終わりのサラリーマンが行く場所、っていう認識になっちまってるぜ。


「新メニューといえば」

「?」

「ここから少し西の方に武器屋があるんだけど、そこでも新しい銃を仕入れるとかなんとか」

「ヘェー」

「露骨に興味無くしやがった」

「どうせ剣しか使わないですし」

「にしたって拳銃の一丁や二丁は持っとくべきだぜ? 子どもじゃねーんだからよ」

「えェ? そういうもんですかねェ?」

「逆にミカミ公になんも言われなかったの?」


マサムネさんは銃については何も言ってなかったしなァ……。大会は銃禁止なんだろうか?


「てか、そういうの聞ける友だちは……いや、悪い」

「オレの立場的にそうなんのは仕方ねェですけど、言い方下手過ぎません?」

「悪かったって」

「オレだってこうじゃなかったら同年代の友だちくらい簡単に出来ますよ」


自身の首輪をトントン、と人差し指で軽く叩きながら言う。


立場が悪いわ。立場が。


「それ関係なしに、美人だから却って難しそうなんだけど」


…………そんなこと…ある、のか?


「……まァいいです。とりあえずは、帰ったら聞いてみることにしましょうかねェ」

「その方がいい」


とはいえだ。今まで剣しか使ってこなかったから、今更銃を使うとか無理な気がする。


でもスナイパーライフルはカッコイイから使ってみてェ。


……いや待て。電気系の魔法を使ってレールガン、ってのもアリだなァ。一度は憧れるアレ、オレもやりたい。


夢が広がるぜ。



「おはようございまァす、って……」


なんかマサムネさん、凄い勢いで鎖振り回してんですけど。ウケる。


……いや、何あれ? なんで鎖? てかどういう状況?


「─ん? ああ、ヒビキ。おはよう」

「おはようございまァすご主人様」

「この鎖が気になるか?」

「はい」


気にならんヤツいないと思う。鎖というか行動が。


「これは先日、とある武器商人から買った物でな。試しに使っているんだが……見ての通り、癖の強さが難点だな」


明らかに人が使う武器ではないよね。カンフー映画でも出てこねェぞ?


アレだ、ロボットアニメに出てくる微妙な兵器のカテゴリーで括られるヤツだろ。先端に短刀も付けてあるし。


「そうだ、試しにヒビキ。使ってみろ」

「えっ、あっ、はい」


鎖を受け取る。


いや長くね? 何メートルあんの? てか、そりゃ扱いづらいだろ!


一応、刃が付いてない方に持ち手……というか手首に着けるリストバンドみたいなのあるけど、それでどうにかなる問題かァ……?


左の手首に腕時計のようにリストバンドを着け、右手で短刀を持つ。


「あの、これ長すぎてめちゃくちゃ鎖余るんですけどォ……」

「ああ、それなら短く出来るぞ。使用者の思考でコントロール出来る」


わァ、ハイテクなこって。


短くなれ、と試しに念じてみる。


─ジャラジャラ!


手首のバンドに鎖が吸い込まれていった。まるで掃除機のコードを収納するときみてェだ。明らかにスペースがないのにどうやって仕舞っているのかは甚だ疑問だが。多分『収納』の応用かなんかだろう。


「ホントだ、すごいですねコレェ」

「武器ではあるが、魔道具でもあると言っていたからな。買い手が付かなかったのか、相当値引きされていたが」

「武器として以外の使い道で買う人いそうですけどねェ」

「確かに何処までも伸びるからな」


『何処までも』とな? さては射程距離無限……? いやそれはないか。


「しかし、どうしても武器として売りたかったらしい」


まァ武器商人だもんなァ。プライドってヤツかねェ?


「とりあえず、ちょっと振ってみてくれないか?」

「分かりました」


振る……どうせなら鎖を振り回してダイナミックに、そい!


─ブンッ! ヒュンヒュン!


「よし、ヒビキは今日からその武器『飛刀・鎖』を使え。大会もそれでいこう」

「え?」

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