第18話 反射神経?
「今日は新しい魔力の使い方を教える」
「? はい」
新しい魔力の使い方か。なんだろ?
いつものようにトレーニングをするのかと思ったら、こんなことを言われた。
「魔力強化で身体能力の底上げが如何に重要か実感出来たことだろう。そこでだ! 今日は脳を強化してもらう!」
「脳? ……あ、そういう事ですか」
よくあるやつか。思考速度が速くなるー、的なアレ。
「ふふふ、察しがいいな。流石はヒビキだ…!」
「ありがとうございます」
なるほど、魔力強化ってそういう事も出来るのか。一体どういう原理なんだろォな? 世界の脳科学者達が飛びつきそうだなァ。
……余計にモルモットコースに警戒しないとじゃねェかよォ。こっちは医学と科学がそこまで発展……してねェわけじゃねェが、ほぼ全員が魔素を持ってるからなァ。
地球に帰ってからも大変そうだぜ……。
「とは言っても、脳は体と違って繊細だからな。一朝一夕での成就は不可能と言ってもいい程だ」
「そんなに難しいんですねェ……」
脳細胞も回復出来るが、慎重になるに越したことはないかァ。
「ああ。一週間でマスターしろ」
「今日が2月17日だから24日までには、ですかァ……」
無茶苦茶を言いよるなァ。
やるけど。
◆
マサムネさんがオレに向かって木の棒を振るう。DIYで使う角材だ。
「ッ…!」
そしてそれを躱しながら、オレはそこに書かれている数式を読む。
5-2か!
「3!」
「正解だ。少し簡単すぎたか。こっちはどうだ?」
くるん、とバトンを回すように180°回転。今度は別の数式だ。
……オレは今、ものすごく独特なトレーニングをしている気がする。
角材の突きを首を傾けて回避、流し目に数式を見る。
9+4×3……
─バシッ!
「─あだッ!」
「解くのに集中し過ぎだ。もう少し余裕を持った回避にすべきだな」
「うっ…わかりました!」
◆
─ゴンッ! カン!
角材がぶつかり合う鈍い音が夕暮れの練習場に響く。
ヒビキはマサムネに一撃を入れる為、フェイントを利用しながら隙を突こうとする。
だがマサムネはその悉くを巧みに躱し、本命の攻撃を防いでいる。
「はァ……ッ!」
「ほう、今のは良かったぞ」
「ガードしながら言われて、もッ!」
思考速度の強化と、身体能力の強化を同時に行ってもマサムネさんには全然届かねェ……! あっちはなんの強化もしてねェのに……!
─ブンッ!
「ッ!?」
「よく避けた。やはりセンスがあるな」
いきなり攻撃は止めてくれねェかなァ!? しかも打撲じゃ済まなそォなヤツ! 角材で風を切る音出さないでくれませんかねェ!?
クソッ! そろそろキツくなってきた……! 魔力が切れそうだぜ……。
しっかしよォ……マサムネさん強すぎねェ?
こっちが隙突いて背中から攻撃してもノールックで防がれるし、脚狙ってもヒョイッだぞヒョイッ。
これ一撃入れるのが目標なんだが……24日までに出来る気がしねェ……。
「ハァ……ハァ……!」
…あっ、魔力切れた。
「よし、今日のトレーニングはもう終わりだ」
「…魔力、切れたの、分かるん、です、か…?」
「ああ、分かるさ。待っていろ、水を持ってくる」
「ありがとう、ございます……」
あァー、キッツ。
……でも、アレだな。なんか新しい技を覚えて強くなる、ってのは成長してる実感が出来ていいな。
とはいっても、ゲームみてェに数時間でポンポンとはいかねェ。まァ当たり前だがな。
マサムネさんが水の入ったボトルを持ってきてくれた。
「ゆっくり飲めよ?」
「はい……」
─コクコク…
うおォ…! キンッキンに冷えてやがる…! 悪魔的だァ…!
そういやマサムネさん悪魔だったな。だからなんだって話だが。
◆
2月20日。
これといって記念日というわけでもないが、嬉しい発見があった今日だ。
いつものように資料室で漁っていたら、あの石板についての情報が書かれている本を見つけた。
といっても、分厚い地質学の本に僅か数ページ書かれているだけなんだが。ホント偶然の出来事ってビックリするわ。
でだ。それを要約すると、『地面を掘ってたらなんかすごく硬い石にぶち当たった』らしい。
付近には珍しい金属とか、地下遺跡群なんかも見つかったらしい。それぞれが古代の遺物とか書かれてるけど、よく分かんねェ。
『地層の年代とそぐわない出土品』、ねェ……ん? それは『オーパーツ』というやつでは?
そういや
……まァいいか。
これその後の石板がどうなったかとか全く書いてねェんだよなァ……。2ヶ月でどっか行くなら、それくらいは書いてありそうなものなんだが……うん、無ェわ。
一旦石板の事は置いとくか。今はこの星の事についてもっと知らねェと。
特に国なんかはな。
……その前に常識を知っとけって話なんだが、それはレイイチさんと話してればちょっとずつ良くなるだろう。多分。
さて、と。世界地図でもあればいいんだが。地球儀でもいいぞ。その場合は某芸人みたいなことをするがなァ。
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