第17話 手がかり?

 

ショットガンはクリーンヒットした。


不意打ちの銃撃は、正確にクマの背中を貫いた。辺りに血が飛び散る。


『ガァァアアア!!!』


50メートルの距離を一瞬で詰める。右手に『熱線』の起点を作り、


この一撃で確実に仕留めるッ!


クマはやっと近づいていたヒビキに気が付く。


振り返った顔の前に手は向けられている。


「『熱線』!!」


オレの右手は爆発した。



「なぁ」

「……はい」

「馬鹿なのか?」


ひでェ言い様だなァ。否定できないところが特に。


「いやァ…『氷塊』は溜めると威力上がるんで、その癖がどうにも出ちゃうんですよねェ。……ずびッ」

「なら直せ」

「ごもっともでェ……」


痛すぎて……涙が止まらねェ……! あァッ! 回復回復! 体温調節ゥ!


……最初よりは痛くねェなァ。


2回目で耐性が付いた、もしくはチャージが短かったから威力が落ちたか。


どちらにせよ、クマは頭が吹っ飛んだからオーケーだ。ものすごくグロかったが。


「あの魔法、ミカミ公に注意されなかったのか?」

「されましたよ。『タイミングは見極めろ』って」

「注意…か?」


注意と書いてアドバイスと読む的なアレじゃねェの?


まァ、『回復』を人前で使ったことは怒られるかな……。


「はぁーあ、心臓止まるかと思ったんだぞ? 恩を売るどころか、ミカミ公にブチ切れられそうだ……」

「何ですか? 死にかけるよりはいィんじゃないですかァ?」

「この国でそれは死ぬようなもんなんだよ!」


…………確かに? 天皇の持ち物に傷つけたみてェなもんだもんな。


でもなァ、あんま実感湧かねェんだよなァ。


「……まだまだ世間知らず、かァ」



あれからまた幾つか朝と夜を繰り返し、2月になった。


なんだかんだでレイイチさんとは一緒に依頼をこなすことが増えた。


ランクも上がって5になった。そろそろ1人前なんだと。


「─そんなわけで、熱線はもうミスらないんで安心してくださいよ」

「それもう4回目だぞー」

「今回こそは、です」


ギルドの机で向かい合って話す。


そんな熱心に新聞読んで面白ェのか? なんかジジくさいから好きじゃねェんだよなァ。レイイチさんまだ20代だろ?


窓から外を見る。


にしても、雪が降ってくるとはツイてねェ。


中学生の頃は結構テンション上がったが、もうそんな歳でもねェしなァ。図書室の石油ストーブの前に集まって暖を取ったり、体育の授業が潰れて喜んだり。


……あとは、放課後に友達同士で雪合戦とかもすごく楽しかったな。結局寒くなって家でゲームしたけど。


そんな過去を思い出し、少しだけ気が沈む。


オレはいつになったら帰ってゲームが出来るんだ?


……ちょっと待てよ。今オレ女じゃん? こんな状態で家帰ったら、『息子を名乗る不審者』になってしまう…………! ダメ元で1回は行くが。


とにかく、帰れなかった場合は行くとこが無くなる。どうしてもゲームがしたいオレにとってそれは死活問題だ。


最近は大学受験を控えてた身で、ゲームも時間減らしてたからなァ。最終学歴は高そ…あ卒業出来ねェ!?


え、この場合ってどォなんの!? オレ中卒!? 嘘だろ!?


マジかァ……。家無し金無し戸籍無しの生活になるってのかよォ……。マジ最悪なんですけど。


「ヒビキヒビキ、お前この前『神隠し』とか『石板』とか言ってたろ?」

「ん、あァ、言いましたねェ。……書いてあんですか!?」

「これ見てみ」


レイイチさんが新聞の向きを変え、指を置いた。


そこには小さな見出しと共に、あの石板の写真が載っていた。


「マジじゃねェですか…!!」

「『海の国』で発見されたんだと。『神隠し』とは関係なさそーだけどな」

「おォ…!」


意外と早く見つかった! すまねェ、レイイチさん。新聞読んでるのジジくさいとか言って。


やっぱ新聞「そういや昔『龍の国』でも見つかってたなコレ」

「え?」


どういうことよ。複数?


記事を読む。


『この石板は2ヶ月程存在し、その後何処かに姿を消す。出現場所に法則性は無く─』


……なるほどね。


「まさかの移動式かァ……」


机に突っ伏す。


「知らなかったのかよ。まぁ無理もねーか。この新聞わざわざ『動物の国』から取り寄せてるやつだし、売れ行きも悪いからなー」

「今から海の国行くのは無理だし……」

「聞いてねーな……」


2ヶ月だけってのが本当なら、大会終わって自由になったとしても絶対に間に合わねェ。


今が2月4日で、石板が見つかったのが……11月じゃねェか! 既に別の場所だわ!


「あったのが確認出来ただけマシですけどォ……」

「探すとなると大変だろーよ。……てか、なんで探してんの?」

「それは……秘密です」

「なんかワケあり? ま、深くは聞かないようにしとくわ」

「助かりまァす」


あーあ、インターネット並の情報網があればいいのになァ。


……まァ、一歩前進ってことで! 確率的には宝くじ1等よりあるから!


にしても、2ヶ月か……。


じゃあ、オレが触った石板も今は別の場所に移動したのか? 道路直すの面倒だろうなァ。

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